25話 反省会
静寂の闇に支配されたフラリスの街にあるパーティー集会所で、反省会が始まろうとしていた。
「これでよしっと」
テーブルの上にカードから取り出したお茶とクッキーを小皿に分けて盛り付けて皆に配る。
ルージュ村では皆が同じ宿だったが、ここフラリスでは同じ宿に泊まることができなかった。そのため、反省会は宿の食堂からパーティー集会所に変更になった。
「まずグノンから考えようか」
いつの間にか好きになったようで、仁井くんはコーヒーに口を付け会議の口火を切った。
「あいつら盾の練習には丁度いいな」
「大剣の練習にもいいぞ」
今まで人形のモンスターと戦ったことはなく、ラパンなどのモンスターは動きも単調だった。しかし、今回戦ったグノンは投石にひっかきなど、多彩な攻撃をしてきた。
また、近接だと動きも早く攻撃を避けたりしたようだ。
「木の上におるんは、カモやったね。裏に回られると手が出せんかったけど」
「投石だけ注意すればいいもんねぇ」
朱莉の発言に「そうやね」と日菜乃が返事をする。どうやら日菜乃だけではなく、朱莉にとってもグノンはカモのようだ。
「で、でも隠れる相手に攻撃するのはい、いい練習になるよ」
「もう少し動き欲しかよ。うちはどっちかってっと、プーレの方が練習にはなっとよ」
「あぁ……た、確かにそっちの方が、練習になるね」
プーレは通常のニワトリの5倍くらいの大きさがあり、朱莉やナルミくんなら楽々背中に乗れそうだった。
またジャンプ力が強く、飛び上がると3メートル級の木々を軽々越えていた。
遠くからだと投石しかしてこないグノンよりかは、上下にも左右にも動き回るプーレの方が中衛陣の練習にはいいようだ。
それに確定ドロップの『プーレ肉』は、馴染みのあるニワトリの鶏肉と全く変わらず美味しい。
「グノンの確定ドロップは毛皮だったよね? いくらで売れたの?」
交易所の近くに宿を取っている仁井くんは、集会所に来る前に換金することになっていた。
確定ドロップの値段が変わらないなら、美味しく食べれるプーレの方を狩りたい。
「毛皮1枚で100リンだったよ」
「え?」
想定外の高さに沈黙が訪れる。
みんなが難しい顔をして計算しているのが分かる。陣内くんに至っては指を折り計算している。
「えっとさ……今日うちらグノン16匹倒したやん。確定ドロップはパーティーの人数分貰えたとよね?」
「そうだね。今回は『グノンの毛皮』のカードは128枚だよ」
日菜乃は目が点になりぽかーんとしている。
「1枚100リンなら1万2800リンも貰えたの今回?」
「そうだね」
仁井くんが静かに頷く。
1万リンならばこれまでもフラリスで稼ぐことはできた。しかし、今回はこれまでとは少々違う部分がある。
今日は午前中に3匹のグノンを見つけ、その後仲間を呼ばれて8匹のグノンを倒した。そして、午後も同じだった。
「グノンって仲間呼びよったやん。仲間呼ぶ条件さえ分かれば、うちらめっちゃ稼げるやん」
「そうだね。お金を考えるなら効率はいいよ」
日菜乃の意見に同意する。仲間を呼ぶ条件さえ分かれば1日に10万リンは稼げそうだ。
「な、仲間を呼ぶ条件は予想はできるけどね」
「あぁ……確かに何となく分かるな」
仁井くんの分析力もさることながら、ゲーム大好きな山口くんも仲間を呼ぶ条件に予想かできたようだ。
「それで、条件って何なの?」
私の疑問に仁井くんが指を3本立てる。
「大まかに分けて3パターンあるかな。1つ目が人数、2つ目がHP、そして最後に条件無しだね」
「条件なし?」
首を傾げて聞き返す。
「まぁー順に説明するよ。1回目は3匹いてすぐに仲間を呼んで、その後は投石したり突っ込んできたりしたじゃん」
仁井くんの投石と言う言葉に石が当たった部分を押さえる。
「2匹倒して残り3匹になったら、また仲間を呼び始めたから、こちらの人数の半数を下回ったら仲間を呼ぶが1つ目の可能性だね」
確かに1回目は木の上に3匹居て、撃ち落としたあとはすぐに攻撃しないで木の裏に隠れて仲間を呼んでいた。
増援の5匹も2匹倒して残り3匹になってから仲間を呼び始めた。
午後も同じで最初3匹いたグノンを2匹倒したところで仲間を呼ばれた。
「ふむ……。確かにそれが正解かもしれないね」
私は首を大きく縦に振り仁井くんの意見に賛同する。
「HPの可能性もあるよ」
山口くんがHP説を話始めた。
「の、残りHPが半分を切るとか、3割になるとかが条件で仲間を呼ぶかもしれないからね。1回目も2回目も攻撃を当てた後に仲間を呼び始めたから」
確かにそうだ。グノンと戦った2回とも攻撃をした後に仲間を呼ばれている。
「つまりどっちが正しいの?」
仁井くんの説も山口くんの説も共に正しく聞こえてしまう。
「どっちも正しいし間違ってるってら可能性もあるだろう? 俺は条件なしだと思ってるし」
二人の意見を聞いてた陣内くんが口を開く。
「条件なしってどういうことなの?」
「そりゃースキルだよゆきっち。モンスターの中には火を吐いたり魔法を使うやつもいるからな。仲間を呼ぶスキルをランダムで使ってるって俺は思ってるぜ」
「なるほど……」
今まで動物型のモンスターしか見てこなかったが、この世界にはドラゴンがいる。火を吐いたり魔法を使うモンスターもいてもおかしくはない、と陣内くんの意見にも同意する。
「まぁースキルの発動条件が昴や三太の可能性もあるけどな」
新たな言葉に困惑する。
「スキルの発動条件って?」
「んーっとな……。簡単に言うなら人数が少なくなったら強制で発動する特性なのか、もしくは確率で発動するスキルかってことだな」
陣内くん始め男性陣はこの不親切な説明で理解できているようだが、私はますます分からなくなってきた。
見かねた仁井くんが黒板に板書してくれた。
つまり、グノンが仲間を呼ぶのは特性なのかスキルなのか。
スキルならMP切れがあるから無限には呼べないが、特性なら無限に呼べる可能性がある。
そして、発動タイミングは『仲間がパーティーメンバーの半数よりも下回った場合』『グノン単体の残りHPで判断』『そもそも条件なしスキルかもしれない』ことを話し合ってたようだ。
「ひなの……あかり……理解できてた?」
「全く分かんないよぉ」
「うちもわからんかった。男の子ってこんなんゲーム好きそうやもんね」
全く理解できてなかった私たちの隣でナルミくんが「ははは……僕もです」と力なく同意していた。
「結論! 次はグノンに攻撃しないで仲間を呼ぶかを観察しよう。後は狩りをどうするかだね」
混乱している女性陣とナルミくんがこれ以上考えないでいいように、仁井くんがグノン考察を強引に打ち切る。
「グノンかプーレだよね? 同じ日に二種類狩るのは移動が大変だからさ、日を分けたらよくないかな?」
先程の話は理解できなかったが、これなら大丈夫だ。
「僕も水田さんの意見に賛成だね。ついでにグノン、プーレ、休み、グノン、プーレ、休み、休みでいかないか?」
ゲームが始まった当初は規則正しく休みを設けてはいなかったが、ある程度落ち着いてからは週に2日は休むようにしている。
「休み1日増やすのか?」
「試験対策をしないとまずくないか?」
「あぁー……」
天井を見上げた陣内くんが声にならない声を発する。
レベルが上がるにつれて、試験の難易度も上昇している。日菜乃や朱莉はまだ余力を感じているようだが、他のメンバーは陣内くんと同じくぎりぎりレベル10の試験に合格していた。
「中日の休みは授業を受けてもいいし、街の近くでラパン狩りをしてもいいしさ。各々足らないことを勉強する時間にしよう」
ここに来てまで勉強なのかと、力無く皆が頷く。
本当はもう少し長く前後にしていましたが、かなり削って1話に変更しました。
削った部分はもしかしたら短編集でも作って載せるかもしれません。
1話構成になりましたが、本日も18時代にもう一度投稿します。




