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24話 フラリスでの狩り(前編)


 レベルを上げて装備を整えるまでに1ヶ月を費やした。ファンタジーワールドが始まって約5ヶ月になろうとしている。


 辺りを見回す。


「ここよさそうだね」


 フラリスの北門から外に出るとすぐに、プティ山の入り口がある。山道を30分ほど歩くと、腰くらいまでの草木が生えた開けた場所に出た。


「それじゃ予定通りやりますか! ひなのお願い」

 日菜乃の両脇に私とナルミくんが立ち、円を描く様に他のメンバーが辺りを警戒する。


 目を瞑り大きく深呼吸をしたあと日菜乃が獰猛な猛禽類の様に、ある一点を睨み付ける。


「見っけ」


 報告が先なのか射たのが先なのか。視線の先のモンスターを私が見つけるより早く、マーカー付きの矢を日菜乃は射ていた。


 マーカー付きの攻撃がモンスターに当たると、パーティーメンバーにもモンスターが赤く光って居場所が分かる。


「うっげぇ……最悪だぁ。よりによってこの子が相手なのぉ?」

「気持ち悪いよね。フィッシャ帰る?」

「それよかねゆき。うちも帰りたか」


 全長1メートルはある『巨大芋虫シュニーユ』が、のそのそとゆっくりとこちらに向かってくる姿を見て、私たちは帰りたい気持ちになった。


「ナルミ!」

「任せてください!」

 仁井くんの指示にしたがい、ナルミくんが阻害魔法を放つ。


 放たれた魔法は物理防御を軽減させる魔法のようで、草でよく見えないが地面から真っ黒な水が噴水のように飛び、シュニーユにかかる。



「こっち来やがれ芋虫野郎が!」

 陣内くんが声を上げてモンスターのターゲットを自分に向ける。


 パッンと乾いた音が響く。山口くんが短銃を撃ったのだろうか、それを合図に2本の矢がシュニーユに突き刺さる。


 シュニーユはダメージ量が多い人に敵対心が向かう傾向があるらしく、ターゲットを陣内くんから日菜乃に変えてもぞもぞとゆっくりと動く。


「遅い遅い! おりゃぁぁぁあ!」


 身の丈より長い大剣を杉村くんが大きく振り下ろす。ぐっちゃっと何かが潰れる音と共にシュニーユが消え去っていった。


「あー……種落としたぞ」

 どうやらシュニーユの確定ドロップは『緑色の種』のようだ。

 

「かなり余裕だったよね」

 フラリスで初めて戦うモンスターは、全力戦闘をすることを決めていた。


「ひなちゃんの攻撃力が高すぎなんだよぉ」

 少ない胸を張り「ふふん」と眼鏡を触りながら微笑む様は、先程の獰猛な目付きとはうってかわって知的に見える。


「マーカーを付ける攻撃はダメージ入らないから外すとして、阻害魔法とひなの込みで4回の攻撃で倒せたのはよかったよね」

「また戦いたいかって聞かれたら、絶対に嫌だって言うよぉ」

 朱莉はどうやらもう戦いたくないようだ。隣で日菜乃が「絶対に夢に出てくっけん」と呟いている。


「なら次はシュニーユに阻害魔法を使わないで戦ってみようか」

 仁井くんの死刑宣告に「絶対に嫌だ」と女性陣から抗議の声が出た。


「いや、何パターンか試さないといけないじゃないか?」

「試さなくていいよ! ここで戦わなければいいだけじゃない!」

「そうだよぉ! 美味しく食べれるやつにしようよぉ」

「うちもややけんね」


 仁井くんは女性陣から抗議に折れたようで、「ならどうしようか」と腕組みをして考え込んでいる。


「南門にあるボスケの森にしますか?」

 ナルミくんの提案に「ボスケの森かぁ……」と悩む仁井くんに向けて無言の重圧で迫る。


 プティ山は昆虫系モンスターや動物系モンスターなど、フラリス周辺に生息する全てのモンスターが出没する。それに対して、ボスケの森は動物系モンスターのみが出没するエリアだ。


 自分達が戦いやすいモンスターを見つけるためにプティ山に来たのだが、いくら戦いやすかろうと虫は嫌なものだ。

 実物を見るまでは「ちょっと大きいだけでしょ?」と思っていたが、今となっては即刻この場所を離れたい気持ちで一杯だ。


「分かったよ、そっちにするよ……」

 無言の重圧に負けたようで、ボスケの森で狩りをすることになった。


「いいのか?」

「この辺でもう少し試したい気持ちはあったけど、晋作も移動したいだろ?」

「芋虫相手だと盾いらねーもんな」


 陣内くんが盾を背中に背負ったのを合図に私たちは移動の準備を始めた。


 ボスケの森での狩りだけは順調だった。出てくるモンスターもラパンを筆頭に『リス型モンスターのエキュルイユ』、『ニワトリ型モンスターのプーレ』などサイズこそかなり大きいが、シュニーユと違って生理的嫌悪感が全く無い。


「余裕で倒せるけどさ、金銭面では美味しくないよな」

 両手剣を地面に突き刺して、ドロップした食用カードを杉村くんが拾う。


「ラパンとお値段変わらないもんねぇ……」

「もう少し奥までいけば中型モンスターおるよ? そっちいく?」

 眼鏡の奥の瞳には、森の奥にいる中型モンスターが写っているようだ。


「んー………三太と水田さんはどう思う?」


「私は行きたいな。フラリスで狩りをしても1日1万リンも稼げないのよ? そこから宿代や食事代を引くと全然足らないよ。レベルを1つ上げるのに10レベルだから1万リンも必要だしさ、このままだと1ヵ月狩りをしてやっとレベルが上がる程度だよ」


 ボスケの森はまず移動に時間がかかる。

 私たちの宿は北側に取っているから、フィールドに出るまで1時間はフラリスの街を歩く必要がある。さらにボスケの森まで街道を1時間は歩かないといけない。

 移動時間だけでも1日4時間も費やしていることになる。


 次の問題点が索敵だ。

 

 最初は私たちもモンスターを探していたが、ルージュ村周辺のラパン狩りの時とは違い、簡単には見つけることができなかった。


 フォーメーションを崩して皆で探すよりかは、日菜乃と朱莉がモンスターを見つけるまで待った方が効率はよく、安全でもあった。

 そのため1回の戦闘終了後から10~15分は『索敵待ち』の時間ができてしまった。


 落ちる素材はラパンより高額だが、確定ドロップの肉カードの値段は変わらない。さらに移動時間や待機時間で、かなり時間を消費することになっている。


「お、俺はその……もう少しここで狩りをしたいな」


「理由は?」

 山口くんがびくっとした。

 怒っているつもりは全くなかったのだが、金銭面の悩みを考えていると、声のトーンが自分でも分かるくらい低くなってしまった。


「も、ももも、もう少しだけ森での狩りの……その……フォーメーションを確認したいんだ」

「確かにこの先のモンスターは強いらしいからね」

 仁井くんが山口くんに同意する。


「別に強くてもいいじゃん。このままだとじり貧だよ? それなら玉砕覚悟で突っ込んでもいいと思うけどな」


「あ………その……うん」

 私の発言に山口くんはなんとも言えない表情をする。


「ふぅ……そうだね。行ってみようか」

 すっうと一呼吸置いて仁井くんが賛同した。


「昴がいいなら……俺もいいよ」


 フラリスに到着して1週間。私たちはボスケの森の奥に進むことにした。



 シュニーユはゲーム開始直後の4話で朱莉が食べていた唐揚げですね。

 本人はその事をすっかり忘れています。


 前後で投稿することをお伝えするのを忘れていました。

 18時代に後編を投稿いたします。

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