14話 拾ってきました
「大漁、大漁」
日菜乃が上機嫌に歌っているが、それもそのはずだ。私たちは午前だけでラパンを18匹も狩ったからだ。
昨日はさほど実感はなかったが、『狩人』は狩りをするならかなり便利だ。
村の周辺は牧草地になっていて、多少離れていてもラパンを見つけやすいが、他のプレイヤーと取り合いになる。
牧草地から少し海岸へ進むと膝丈まで草が伸びたエリアになり、さらに海岸へ向けて進むと腰まで草が伸びたエリアがある。
そこには大漁のラパンがいた。
目視で発見はしずらいが、日菜乃の『狩人』のおかげで半径50メートルにいるラパンがすぐに見つかるのだ。
「ひなののそれは魔力必要ないのよね?」
「そうやね。どんどん見つけるけん沢山狩ろう」
「午後からはもう少し草が短い場所で狩ろうよぉ」
朱莉が疲れきった声を出す。腰まである草むらの中を歩き回るだけでも疲れるのに、モンスター扱いにはならない虫までいるから精神的疲労も強く出る。
「誰よ虫なんか作ったやつぅ」
「えぇー可愛いかやん」
「ひなちゃんとは一生分かり合えないよぉ」
「うちはあかりのこと好いとうとよ」
私たちがじゃれあってる傍ら、男性陣は何やら難しい顔をして話し合っていた。
「ちょっといいかな」
仁井くんが声をかけてくる。
「午後からだけどグループ分けて行動しようと思うけどいいかな?」
「グループ? 何で?」
「山口の提案なんだけどさ。100メートル以内だとパーティーの恩恵を受けるってさ」
「それってドロップも?」
「そうだね。地図を100メートル表示にしてマーカーで起点を作って、三方向で狩りをすればより多く狩れると思うんだ」
地図にそんな機能があるとは知らなかった。世界地図と現在地周辺の地図しか使ってこなかった。
さっそく、地図を開きピンチすると地図が拡大した。
「おー大きくなった」
「そ、それと1度でも利用したお店なら、その情報が分かる機能もあるよ」
山口くんの情報を聞いて、さっそくルージュ村まで地図をスクロールして拡大する。
私たちの常宿スリーカーメラをタップすると、空室ありの文字と店内のメニューが出てきた。
「これ面白いねぇ!」
「フィッシャにいったらさ、全てのお店を制覇しようよ」
「いいかな話続けて?」
新しいおもちゃを手にいれて遊んでた私たちに再び声をかける。
「それで男性陣で話し合ったけどね、現状女性陣に頼りっぱなしでプレイヤースキルが磨かれないんだよ」
確かに午前中のラパン狩りは日菜乃が見つけて、遠方から私や日菜乃、朱莉が仕留めていた。
「レベルを上げるにはテストを受けないといけないしさ、それに職業によっては実技もあるじゃん。だから午後はグループで狩りをしようと思うけどいいかな?」
「いいけど、グループはどうわけるの?」
「とりあえず今日は僕と晋作、山口と杉村、あとは女性陣で分けてやろうと思う」
「いいよ。私たちが一番多く倒しちゃうけどね」
その日はトータルでラパンを50匹狩って終わりにした。
ドロップも『ラパンの肉500グラム』が266枚と『ラパンの肉1000グラム』が84枚、ラパンの毛皮が18枚、そしてラパンの骨が10本ドロップした。
ラパンの肉は100グラム10リンで取り引きされているから、今日1日だけで21,700リンの稼ぎになった。
「これはお小遣い期待してもいいのかなぁ?」
「いやいや、レベル上げるのに大量のリンを使うからダメだよ」
「少しくらいダメぇ?」
朱莉が上目遣いで仁井くんにおねだりを要求する。
「う……。はぁー……。なら1人2000リンでいい? 明日は1日休んで買い物にしようか」
この勝負は朱莉が勝利したようで「やったぁー」と歓喜の声が響く。
お小遣いを貰った私たちは馬車でフィッシャへと出かけた。男性陣はルージュ村で事足りるらしく、今回は女性陣だけの旅だ。
パーティーを組んでいる間だけ、パーティーメンバーの地図は共有される。
その機能を使い、目についたお店に入り一人だけ安い料理を1品注文する。
武器や防具のお店なら店内に入るだけでいいが、飲食店だと最低1品は注文しないと利用したことにならないからだ。
今回探索して気がついたが、ここフィッシャでは剣の専門店や槍の専門店など系統ごとにお店が建っていた。
また、衣類もアバター衣類店なるお店があった。そこには装備しても防御力に変化がない完全にファッション用の洋服が売ってあった。
「これよこれ! このお店探してたの」
港に行った時は気がつかなかったが、アバター系のお店は南側に多く点在しているようだ。
私たちは目につくお店全てを回っていく。予算が限られているから気に入った商品全てを買うわけにはいかないからだ。
1店舗目はオールインワンやジャンパースカートなどワンピース系が多く揃えられたお店だ。
「身長気にしないでいいからさいこーだよ」
日菜乃と朱莉が同じ言葉を発する。平均的な私には個性的な身長が羨ましく写るときもあるのに。
2店舗目はストッキングや厚手の靴下などが売られていた。木造の階段を昇ると、2階はランジェリー売り場になっていた。種類も豊富でカラーバリエージョンも好きに選べる。
「あぁ、このままずっと居たいかもぉ」
大きめの朱莉にとって可愛い下着とは中々出会えないらしく、ゲームに来て一番のテンションで物色する。
太陽が傾き始めたのをきっかけに1度お昼にすることにした。
「午後より午前の方が長くなか?」
「夜やることなくて早く寝るもんね。その分日の出と共に起きてるし」
「変な習慣が身に付いたよねぇ。まだ1週間ちょっとだよ」
小さな黒板にカラフルな文字で「本日のオススメ! オムライス」と書かれたお店に入る。
「あれ? 一昨日もここきたよねうちら」
適当に選んだお店はどうやらリヴァエルさんと一緒に入ったお店だった。
「どうしよっか? 出る?」
「んーオムライス食べたかったからぁ、ここでいいよぉ?」
空いてる席がないか見渡す。
「あれ? あの人リヴァエルさんじゃない?」
「また誰か騙しとうね」
「どうするぅ? 助けよっかぁ?」
中学生くらいの赤みががったセミロングの髪に、初期装備の服、そして隈のすごい目をした少女がリヴァエルさんと話をしていた。
「ログアウトできるなら何でもします! 全く寝てなくて眠いです!」
入口まで聞こえる大きさで少女が叫ぶ。
「お辛そうですね。分かりました、直ちにログアウトを致しましょう」
「待ってください。その子はこちらで保護します」
朱莉が少女の隣に座り、少女から話を聞く。
私と日菜乃はリヴァエルさんの相手だ。
「おや? 貴女たちは確か?」
「一昨日はお世話になりました。ただ、リヴァエルさんのことを知人に聞いたら悪い噂が聞こえてきましたよ? 何でも強制ログアウトさせて装備品を盗んでいるらしいじゃないですか?」
リヴァエルさんは「チッ」と舌打ちをして、それ以外は何も言わずにお店から出ていった。
「あかり、何だって?」
「えっとねぇ、友達と一緒に遊んでたけど狼にみんなやられたんだって」
「ルージュ村に来たの?」
「はい。スロットが貰えると聞いて行きました。それで、宿が見つからなかったから、夜だったけどフィッシャに戻ろうとして……」
「その帰りに襲われたのね」
弱々しく少女が頷く。
「街に戻っても借りてた宿が埋まってて……。それで、他の宿が見つからなくって噴水前で寝てたら、さっきの人に声をかけられました」
「私たちルージュ村を拠点に活動してるけど一緒にくる? 部屋空いてる宿知ってるよ?」
相談もなく勝手に少女を保護する方向で話を進めてしまった。
「お世話になってもいいですか?」
私が独断専行をしたことに少女は気がついたのだろう。日菜乃と朱莉を少し見て小声で訪ねてくる。
「いいよ気にしないで! お姉さんに頼りなさい」
二人が軽く頷いたのを確認して改めて許可を出す。
「ありがとうございます。僕はナルミっていいます」
「ボク?」
「はい、僕ですよ?」
少女かと思ったその子は少年だった。午後の予定を全て取り止めて、私たちはルージュ村へ戻ることにした。
宿の問題は他のプレイヤーにも影響があったようです。
皆様ももし旅行する際は、宿の確保を最優先してください。




