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12話 1輪のゼラニウム


 何度かコールが続いき、山口くんが出た。


『も、ももももしもし』



「山口くん? 水田です。ちょっと聞きたい事があるからスピーカーで話してもいいかな?」

『いいよ』


 通話をスピーカーモードに設定する。


「山口か? 僕だ仁井だ」

『な、何で仁井がいるんだ?』


 山口くんは仁井くんを知っているようだ。



「水田さん、橘さん、新田さんと僕と晋作で一緒にパーティーを組んでいるところだ。ところで君はフィッシャの街にいるのか?」


『いるけど』

「なら話が早い。強制ログアウトの噂は聞いたことあるか?」


『あぁ、あいつらか』


 皆が顔を見合わせる。仁井くんに話の先を促す。


「え、知ってるのか?」

『えっとだな……。プレイヤーが死ぬとその場に装備やリンの一部が落ちたままになるんだ。それであいつらはログアウトできますって言って連れ出して、その場に残った装備を拾ってるやつらだよ』

「やっぱりそうか、ありがとう助かったよ」

『騙されないでよかったね』




 騙されずにすんだと私たちは安堵する。


「だから私たちがログアウトの話を聞いたときに、みんな避けてたのね」

「そうっぽいね。ルージュ村におったけん、全く知らんかったね」


 

「それで山口、君はログアウトの方法は知らないか?」

『知らないよ、むしろ僕も知りたいね』

「そうか。それとさ、一人でいるのか?」

『いいや、谷と杉村の3人だ』


 仁井くんが「どうする?」とこちらを向くが、『谷』も『杉村』も共に私には思い当たる節がない。多分男性だろうと予想ができるくらいだ。


 日菜乃と朱莉も特に拒絶していないから、一緒に遊んでも大丈夫と仁井くんに伝える。


「こっちと合流しないか?」

『その、ぼくだけじゃ判断できないからみんなに話はしてみるよ』

「分かった、それとフィッシャの街に宿空いてるかな?」

『それは分からないな。君たちはどこで寝泊まりしてたんだい?』


 僅かばかり期待したが、山口くんは知らないようだ。


「西門から街道に沿って真っ直ぐ歩くとルージュ村に着くんだよ。そこで宿取ってるよ」

『なるほど』


「最後になるけど、スロットの取り方が二つ分かったんだ。パーティー組むとスロットが1つ貰えて、ルージュ村につくとさらに1つ貰えるよ」

『本当か? それならいい返事ができるよ』



 すぐに山口くんから連絡がきた。


『ぼくたちは全員いいってさ』

「拠点はルージュ村でいいか?」

『いいよ』


 連絡は私へされたが、受け答えは仁井くんに任せてある。


「馬車を使えば1時間半で着くらしいけど、それでクリアになるか分からないんだ。だから徒歩で移動したいけど今から出発できるか?」


『い、今から移動するのか?』

「こっちは宿がないからな」


 山口くんからの返事を待つ間に、昼前までに出発できるなら歩いてルージュ村に向かう事が決まった。

 単純に宿が無いことと、これ以上ルージュ村の宿を空けていると、他のプレイヤーに使われるかもしれないからだ。


 画面の向こうで色々と話し合いをしているのだろう。しばらく沈黙したあと『分かった。どこいけばいい』と山口くんから返事がきた。



「西門付近に教会があるからそこまできてくれ。あと水田さんとグループを組むとポイントがつくからそれを見てもいいよ」


 朝食には遅いが、昼食には少し早い時間にご飯を食べながら待っていると、ちょうどデザートを頼むタイミングで山口くんたちがやってきた。


 谷くんは太り気味の体型で坊主頭なためか、全体的に丸い印象を持つ。

 杉村くんは小柄な朱莉よりかはさすがに大きいけど、私とそこまで変わらない身長をしている。長い前髪が目を隠しているけど、見覚えがある顔だ。

 たしか去年隣のクラスにいた、陸上部の人だ。



 お互いステータスを確認する。

 新しい職業はなく、最初に貰える『前衛』などの基本職のレベルを上げる方針のようだ。

 山口くんが『中衛 3』、谷くんは『後衛 3』で最後に杉村くんは『前衛 3』と、前中後のバランスがきちんと取れている。


 

「やっぱり変かな? おれが前衛だとさ」


 ステータスを見ていると杉村くんから声をかけられた。

 どうやら、「小柄な杉村くんが前衛なんて意外だな。体格的に内藤くんか山口くんの方が前衛に向いているのに」と思っていたことが顔に出ていたようだ。


「変じゃないけど、意外と思っただけだよ」

「体が小さいからさ……。ゲームの中だけでも大きな体にしてたのに、アバター壊れただろ? まじで最悪だったよ」


 日菜乃は高い身長とスレンダーな体型を気にして、ゲームの中では朱莉に寄せた体型だった。朱莉は逆に低い身長と豊満な体つきを嫌って日菜乃に寄せたアバターにしていた。

 杉村くんもアバターが壊れる前はきっと、筋肉隆々の背の高いアバターだったのかもしれない。


 私は少し大人な自分をイメージしてアバターを作成したけど、理想的な自分の体型でアバターを作成するのもよかったかもしれないと考える。


「それじゃーカード化していくねぇ」


 朱莉が、水と大量の菓子パンとクッキーをカード化していく。

 

 準備が一段落すると、空を見上げる。前回と同じくらいの時間帯だ。これなら夕方までには到着するだろう。



 18時投稿の予定が遅れてすみませんでした。

 タイトルとどこで話を区切るかの作業が中々思うようにいかず、時間がかかってしまいました。


 今回はかなり短いお話でしたけど、繋がり的に今回の分量になりました。


 本当ならば読みやすいとされる3000文字で投稿すべきだとは思っています。

 ただ、既に完成している作品を切り取って投稿すると1話の流れが変になっていると思いました。

 非常に恐縮ですが今後の方針としまして、1話辺りの文字数は気にしない方向でいきたいと思います。



 本日は投稿が遅れて申し訳ございません。明日は必ず18時代に投稿いたしますので、よろしくお願いいたします。



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