創世神のクソプロット、赤字のバッテンで没にして差し上げますわ
「――ふう。
今日のダージリンも、実にいい香りがいたしますわね」
メロリアスは、世界各地の理不尽なフラグを片っ端から赤字で叩き直した。
優雅に旅を続ける道中の草原で、いつもの特製ティーテーブルの椅子に腰掛けていた。
従者のレオンが手際よく魔法水筒からお代わりを注いでいる。
「はい。
標高の異なるエリアを回っておりますが、お湯の温度管理は完璧でございます」
二人が束の間のティータイムを愉しんでいた刹那――。
ゴゴゴゴゴ……ッと、世界を覆う青空がガラスのようにメリメリとひび割れた。
「なっ……!?」
空間を引き裂き、天空の彼方から現れたのは、ありえないほど巨大で荘厳な「光の眼」。
全宇宙の秩序を司り、すべての人間を「文字の駒」として管理する最高存在――『創世神(世界の執筆者)』の降臨である。
『――よくも、我が書き下ろした神聖なる世界台本を勝手に改変してくれたな、校閲聖女風情が』
頭に直接響き渡る、絶対的な神の声。
天空から降り注ぐプレッシャーだけで、周囲の草木が凍りつき、大地が悲鳴を上げる。
『人間どもは、私が描く壮大な悲劇のドラマに酔いしれ、絶望の中で散っていくからこそ美しい。
それを貴様はすべて台無しにしてくれた!
世界の書き換えを強制ロックし、元のバッドエンドへと初期化する!』
創世神が怒りのままに眼光を鋭く光らせると、世界を縛る巨大な文字の鎖が宙に現れ、人々の自由を奪おうと動き出した。
圧倒的な神の暴力。
だが、当のメロリアスは、手元の原本から視線を外さず、カップをソーサーにそっと置くと、ふんっと冷ややかな鼻息を漏らしただけだった。
「……たかが数万文字のプロットで、よくもここまで尊大な口を叩けたものですわ」
「メロリアス様、お仕事の時間ですね」
レオンが涼しい顔で、スッと万年筆を差し出す。
メロリアスは万年筆を指先で一回転させ、不敵な笑みを浮かべた。
「ええ。あまりにお粗末な構成、杜撰な伏線回収、そして何より読者の気持ちを全く考えていない自己満足の胸三寸……。
誤字脱字だらけの神話なんて、小説投稿サイトに投稿したら、レビューが大炎上して連載打ち切りになりますわよ!」
『なっ……戯言を……!』
「お黙りなさい、三流の執筆者さん。
あなたが空中に浮かべている神の原稿用紙、今すぐ全部『没』にして差し上げますわ!」
メロリアスが立ち上がり、天に浮かぶ神原稿に向かって、愛用の万年筆を思いきり振り抜いた。
瞬間――!
万年筆の先端から放たれた鮮烈な赤インクの奔流が、神の威光を真正面から切り裂き、神原稿の全ページに巨大な「赤のバッテン」を叩き込んだ。
「ば、馬鹿な……!?
私の執筆権が、赤字で弾かれていく……っ!?」
第8話をお読みいただき、ありがとうございます!
ついにすべての黒幕である「創世神」が降臨しましたが、校閲聖女メロリアス様の前では、神の威光も「炎上必至の三流原稿」扱いで赤字の餌食となってしまいました!
どんなに格上の相手だろうと、ブレずに優雅にティータイムを挟みつつ、ボツを叩きつけるメロリアス様とレオン君のコンビ!
「続きが気になる!」「神様の原稿を真っ赤に染めろ!」と思っていただけましたら、ぜひ【ブックマーク】や【評価(☆☆☆☆☆)】で応援していただけると、万年筆のインクが無限に湧き出ます! 次回もお楽しみに!




