↓ ↑ページトップへ
表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

6/11

絶対に攻略不可能な死のダンジョン、巨大アスレチック&超特大パフェの聖地に改訂いたしますわ

「――さあ、参りましょうか、レオン」


 メロリアスが優雅に手袋をはめ直し、見上げるのは、禍々(まがまが)しい紫色の瘴気(しょうき)が立ち込める巨大な岩山だった。


 王国が誇る最凶の難所――『絶望の回廊・死のダンジョン』である。


 「足を踏み入れた者が、二度と生きて帰ることはない」と言われ、数々の猛者たちが骨肉を晒(さら)してきた魔の迷宮。


 神託のプロットにおいても、「主人公たちが血を流し、絶望の淵で精神をすり減らすための残酷なステージ」として厳かに記されているはずだった。


「おや、メロリアス様。

入り口の看板に何か書かれておりますよ」


 レオンが片手に魔法水筒を携えたまま、真新しい立て札を指さす。


 そこには、トゲトゲしいフォントで『生きて帰りたければ、血と涙を捧げよ』と恐ろしい脅(おど)し文句が刻まれていた。


「ふん、相変わらず悪趣味な書き出しですこと。

これだから三流のファンタジーは困りますのよ」


 メロリアスは鼻で笑うと、愛用の万年筆を取り出し、スッと指先で一回転させた。


 そして、空中に浮かび上がる『マスタープロット』のダンジョン該当ページを、指先でぴっと引っ張り出す。


「――『第一章、冷酷な魔獣たちが牙を剥(む)き、挑戦者の肉体をズタズタに引き裂く。血塗られた迷宮の最深部で、人間は自身の無力さに泣き叫ぶ』……と。

まあ、なんて安直で品のない暴力描写でしょう」


 メロリアスはあきれ果てたようにため息をつくと、万年筆の鮮やかな赤インクで、容赦(ようしゃ)なくその一文にバッテンを叩きつけた。


「――赤字訂正。

魔獣の殺戮(さつりく)ショーは全面中止。

代わりに、迷宮全体のトラップはすべて『巨大アスレチック』および『全長十メートルの超特大フルーツパフェが常設されたファミリー向けアミューズメントパーク』へと強制改修する。

挑戦者たちは死闘の代わりに、童心に帰って生クリームの海を泳ぎ、スポンジケーキの山を登頂しなければならないものとする」


「……相変わらず、斜め上を行く素晴らしい改訂案ですね」


 レオンがクスリと笑みをこぼしたその瞬間。


ズズズズズ……ッ! と大地が大きく揺れ動き、死のダンジョンを包んでいた禍々しい瘴気が、パァァッと、甘いバニラと焼き菓子の香りに塗り替えられていった。


「な、なんだ……!? 一体何が起きた!?」


 ちょうどその頃、血相を変えてダンジョン攻略にやってきていたS級冒険者パーティの面々が、武器を構えたまま立ちすくむ。


 屈強な戦士や冷徹な魔法使いたちが、目の前に突如出現した「巨大なピンク色の滑り台」と、天高くそびえ立つ「超特大プリンアラモードの城壁」を目の当たりにして、完全にフリーズしていた。


「――さあ、突っ立っていないで、早くアスレチックをクリアしなさい!

ゴールには特大パフェが待っていますわよ!」


 メロリアスが声を張り上げると、なぜか戦士たちは武器を放り投げ、「うおおおお! 生クリームの海だぁぁぁ!」「スポンジの山を登るぞおおお!」と大はしゃぎで飛び込んでいく。


 命がけの死闘の場であったはずのダンジョンは、最高にハッピーなテーマパークへと成り果てたのだった。


「ふふ、見事な編集完了ですわね。

さて、レオン。私たちの分のパフェも確保しておいてちょうだい」


「かしこまりました。

一番上のイチゴは私が死守いたします」




 二人は笑顔を浮かべ、甘い香りに包まれた世界を後にし、次なる理不尽なフラグを赤字で叩き直すため、軽やかな足取りで先へと進むのだった。

 第6話をお読みいただき、ありがとうございます!


 今回は、王国最凶の難所であるはずの「死のダンジョン」を、メロリアス様が「巨大アスレチック&超特大パフェのアミューズメントパーク」に強制改修してしまう回をお届けしました。


 命がけの死闘を繰り広げるはずだった屈強な冒険者たちが、生クリームの海に大はしゃぎで飛び込んでいく姿は、見ているだけでもお腹いっぱいになりますね!


 一番上のイチゴを死守するレオン君の忠義(?)も、すっかり安定してまいりました。


 さて、奇想天外な大暴走はまだまだ続きます。


 次なる目的地で、どんな理不尽な神託が赤字で叩き直されるのか……!?


 「続きが気になる!」「パフェ食べたい!」と思っていただけましたら、ぜひ【ブックマーク】や【評価(☆☆☆☆☆)】で応援していただけると、メロリアス様の万年筆のインクが甘いシロップに変わる……ことはありませんが、執筆の最高のエネルギーになります!

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。