神の台本を失った王都のバカども、見事に自滅の道を爆進中ですわ
王都の豪華絢爛な宮殿の一室――。
世界を救うはずの栄光の主役たちが、冷や汗をダラダラと流していた。
「――どういうことだ、これは!」
王太子であるルカウストが、血走った目を剥き出しにした。
目の前には、王国運営の根幹をなす『マスタープロット』の原本が置かれている……はずだった。
だが、そこに広がっていたのは、「真っ白な分厚い紙の束」だった。
「神託が……!
シナリオが、一文字残らず消えているぞ!?」
「そんな……!
私たちの劇的なハッピーエンドは、どこへ行ったのですか!?」
聖女として祀り上げられている男爵令嬢マリアが、高級扇子をパタパタと慌ただしく振るい、半泣き状態でキーキーと声を張り上げる。
二人の頭の中では、今夜の晩餐会で大絶賛され、完璧なヒーローとヒロインとして持て囃されるはずの『筋書き』が完璧に出来上がっていた。
「殿下、マリア様!
街の様子が……大変です!」
近衛騎士が青い顔をして飛び込んできた。
窓の外から聞こえてくるのは、民衆のざわめきだった。
「おい、どうなってんだよ。
今日の聖女様のありがたいお言葉、まだかよ?」
「あれ……?
最近、教会の魔法障壁も調子が悪いぞ。
どうなってんだ?」
「ていうか、王太子様たち、自分たちの頭で考えた政策なんて一つもないだろ……」
民衆の目は、かつての「絶対的な信頼」から、すっかり「無能を見る冷ややかな目」へと変わっていた。
それもそのはず。
ルカウストたち王国の中枢は、これまで国家の政治も外交も、すべて神から下された『マスタープロット』の指示通りに動くだけの「お飾り」だった。
自分たちで物事を考え、決断した経験など一度もない。
絶対的な拠り所である台本は、追放したメロリアスによって、持ち去られてしまった。
「おのれ……!
メロリアスめ……!」
ルカウストは、悔しさに震え、拳を握りしめた。
「殿下!
今日の午後の『隣国との外交交渉』のト書きが、残っているはずですわ!」
「どこにもないと言っているだろうが!
文字が消えてるんだよ!」
台本がなければ一歩も歩けない無能な王太子と、セリフがなければ何も喋れないハリボテの聖女。
他力本願のツケが回った二人は、「神に捨てられた無能」として、王宮の中心で盛大かつ無様に自滅への道を転がり落ちていった。
――その頃。
王都から遠く離れた、のどかな旅の道中。
「……っくしょん!」
メロリアスは優雅に上品な鼻をすすると、手元のティーカップをソーサーにそっと置いた。
「あら。なんだか、どこかの誰かが盛大に私の悪口を叫んでいる気がしますわね」
「おそらく、王都の方々でしょう」
従者のレオンが、魔法水筒からお代わりの紅茶をトクトクと注ぎつつ、涼しい顔で言った。
表情には、微塵の同情もない。
「そろそろ、思考することを放棄した脳みそが限界を迎えて、盛大にパニックを起こしている頃合いかと」
「でしょうね。他人の書いた三流の台本にしがみついた報いですわ。
自業自得という文字を、彼らの額に赤字で刻んで差し上げたいくらいですもの」
メロリアスは「ふふっ」と美しい笑みを浮かべ、優雅に紅茶の香りを愉しんだ。
王都のバカどもが勝手に自滅の道を歩んでいることなど、メロリアスにとってはティータイムのちょっとしたスパイス程度でしかない。
世界には、まだ赤字で修正すべき「理不尽なクソ脚本」が山ほど待っているのだから。
「さて、レオン。
次なる不穏なフラグの回収に向かいますわよ」
「かしこまりました、メロリアス様。
赤ペンのインクは十分に補充してあります」
二人は麗らかな青空の下、次なる理不尽を叩き直すため、軽やかな足取りで新たな旅路へと歩み出すのだった。
第5話をお読みいただき、ありがとうございます!
優雅にティータイムを満喫するメロリアス様たちとは対照的に、王都に残ったルカウスト殿下と聖女マリアの「他力本願コンビ」。
さて、王都のバカどもが勝手に自滅の道を転がり落ちる中、次なる目的地ではどんな理不尽なフラグが待ち受けているのか……!?
「続きが気になる!」「王都のその後も見たい!」と思っていただけましたら、ぜひ【ブックマーク】や【評価(☆☆☆☆☆)】で応援していただけると、メロリアス様の赤ペンがさらに冴え渡ります!




