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異世界の戦場医官、現代医療とタクティカル兵器で無双する〜ポイント稼いで地球の物資をポチったら、村の英雄になりました〜  作者: 月神世一


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EP 8

 白銀のウォーゲームと、容赦なき戦術的雪合戦

 ポポロ山の山頂、魔導雪山サウナの周辺に広がる白銀の雪原。

 極寒の水風呂とインフィニティチェアでの外気浴を経て、心身ともに極限まで『整った』ポポロ村の面々は、完全なリラックス状態を満喫していた。

 だが、有り余るエネルギーと健康的な肉体を持て余したヤンデレ村長が、雪玉を両手でポンポンと弾ませながら、ニヤリと悪戯っぽい笑みを浮かべた。

「ねえねえ、みんな! せっかくこれだけ綺麗な雪が積もってるんだから、サウナの後のクールダウンも兼ねて『雪合戦』をやらない!?」

 キャルルの提案に、水着の上に防寒着を羽織っていた女子たちが次々と賛同の声を上げた。

「おほっ! 雪合戦ですの!? 氷魔法を極めた私に、雪上の戦いを挑むとはいい度胸ですわね!」

 スアイがタローマン製の手袋をはめ直し、好戦的な笑みを浮かべる。

「賛成ーっ! 雪原でキャッキャウフフする天使の姿、絶対に配信映えするよぉっ☆」

 キュララがエンジェルすまーとふぉんを空中待機させながら羽を羽ばたかせる。

「まぁ♡ 雪遊びですね。私、雪だるまをたくさん作りますわ!」

 天然エルフのルナも、ピンクのドレスの上にコートを着込み、のほほんと微笑んでいる。

「おっ、いいぜ! 俺様の両手斧の代わりに、俺様の豪腕から放たれる『イグニス・ストレート』を見せてやるからな!」

 イグニスが肩をぐるぐると回してウォーミングアップを始めた。

 唯一、芋ジャージ姿のリーザだけが「雪って……お腹の足しになりますの?」と首を傾げていたが、概ね全員の意見は一致した。

「……遊びとはいえ、やるからにはルール(交戦規定)を厳格に定めるぞ」

 丸太に腰掛けていた中村優太が、コンバットグラスの位置を直し、ゆっくりと立ち上がった。

「顔面への直接打撃ヘッドショットは禁止。また、雪玉の中に石や氷塊ハードマテリアルを仕込む行為は、明確なジュネーヴ条約違反とみなし、即座に失格とする。チームは、俺とイグニス、リーザの『防衛隊チーム』。キャルル、スアイ、ルナ、キュララの『村役場・女子チーム』に分ける。……いいな?」

「「「おーっ!!」」」

 和気藹々とした掛け声と共に、両陣営が雪原の両端へと散っていく。

 誰もが、ただのレクリエーションだと思っていた。

 だが、この時、女子チームは『元グリーンベレーの軍医』という優太の経歴が意味する、絶対的な冷酷さ(手加減のなさ)を甘く見積もりすぎていたのだ。

「それじゃあ、いくよーっ! 月影流奥義・雪玉乱れ鐘打ちぃぃっ!!」

 ピーッ! という優太の笛の音と共に、キャルルが先制攻撃を仕掛けた。

 彼女の脚力が生み出す異常な投擲速度。放たれた雪玉は、空気を切り裂きながら『マッハ』に近い速度で優太たちに向かって飛来した。

 ドババババッ!!

 雪玉が地面に着弾するたびに、まるで迫撃砲を受けたかのように雪柱が吹き上がる。

「ぎゃあああっ!? なんだあの火力! 雪合戦の威力じゃねえぞ!」

 イグニスが慌てて雪の壁の裏に身を隠す。

「ふふんっ! 私の番ですわね! 『アイシクル・スナイプ』!」

 スアイが両手で素早く雪玉を握ると、瞬時に氷魔法を付与して硬度と空気抵抗を最適化し、正確無比な狙撃で立て続けに雪玉を放つ。

「いくよーっ! 『ホーリー・スノー・スプラッシュ』ッ☆」

 キュララが無駄に派手な光のエフェクトと共に雪玉を投げつけるが、こちらは軌道が読めすぎる上に威力が低く、パフッとイグニスの足元に落ちただけだった。

「皆様、お気をつけてーっ♡」

 さらに後方では、ルナが「雪だるま」を作ろうとして植物魔法と自然魔法を誤爆させ、体長五メートルを超える『自立型スノーゴーレム』をうっかり錬成し、雪原の真ん中をズシンズシンと歩かせ始めていた。

「おいおいおいっ! 反則だろアレ! なんでゴーレムが歩いてんだよ!」

 イグニスが絶叫する。

 圧倒的な身体能力、魔法、そして天然の災害。

 女子チームの火力の前に、防衛隊チームは手も足も出ない――かに見えた。

 しかし。

「……イグニス、喚くな。相手の火力が高いのは想定内デフォルトだ。戦術的撤退フォールバックを行いつつ、敵の火線を分散させる」

 優太は雪の塹壕に身を屈めながら、極めて冷静に指示を出した。

「リーザ! 前衛ヴァンガードに出ろ!」

「えっ? わ、私がですの!?」

「お前は元人魚だ。動体視力と水(雪)への親和性は高いはずだ。飛んでくる雪玉を『処理』しろ」

「処理……あっ、分かりましたわ!」

 芋ジャージのリーザが塹壕から飛び出し、キャルルとスアイの猛烈な雪玉弾幕の前に立ちはだかる。

「リーザちゃん、危ないよーっ!」

 キャルルが手加減して投げた雪玉が、リーザの顔面スレスレに迫る。

 だが、極貧の底辺生活で培った『生存本能(食欲)』は、人魚姫の潜在能力を極限まで引き出していた。

「あむぁっ!!」

 リーザは空中で大きく口を開け、飛んできた雪玉を見事に口でキャッチした。

 そして、ゴクンと飲み込み、歓喜の声を上げる。

「まぁっ! 冷たくて美味しいですわ! ここにルナミスデパートの試食コーナーのシロップさえあれば、完璧なかき氷ですのにーっ!」

「嘘ぉ!? 食べちゃったの!?」

「フッ、ならばこれならどうですの!」

 スアイが連続で氷結雪玉を放つが、リーザは反復横跳びをしながら「パクッ! あむっ! んぐっ!」と次々に雪玉を捕食キャッチしていく。

「……ふざけてるわね」

「す、すごい食欲……!」

 女子チームの注意が、完全にリーザの狂気的な『雪玉イーター』の動きに引き付けられた。

「……今だ。イグニス、左翼から回り込め」

 優太の冷徹な声が響いた。

 女子チームの注意が逸れたわずかな隙を突き、優太は姿勢を極限まで低くして、雪原の地形の起伏デッドアングルを利用しながら無音で前進を開始した。

 優太の動きは、雪遊びのそれではない。完全に『CQC(近接戦闘)』における潜入・制圧の挙動だった。

「いくぜェッ! 俺様のイグニス・ストレー――」

 イグニスが調子に乗って大声で飛び出した瞬間。

「甘いよ、イグニス君!」

 ドカァァンッ!

 キャルルのマッハ雪玉がイグニスの胸板にクリーンヒットし、彼は「ぐはぁっ!?」と情けない悲鳴を上げて雪に沈んだ。

「よし、まずは一人撃破ですわ!」

 スアイが笑みを深めた、その時。

「――索敵が甘いぞ、元将軍」

「なっ!?」

 スアイの真横、完全に死角となる雪の壁の裏側から、優太が音もなく立ち上がった。

 スアイが慌てて雪玉を握ろうとするよりも早く、優太の腕がスアイの腕を捕らえ、関節を軽く極めながら足を払う(合気柔術の崩し)。

「きゃあっ!?」

 バランスを崩したスアイが雪の上に倒れ込むと同時、優太は彼女の背中にポンッと冷たい雪玉を押し当てた。

「ヒット(撃破)。スアイ、お前は戦死だ」

「くっ……! ま、まさか回り込まれていたなんて……! 指揮官殿、手加減というものを知りませんの!?」

模擬戦ウォーゲームにおいて妥協する者は、実戦で死ぬ。ルール無用は論外だが、ルール内での全力ガチは敬意の証だ」

 優太は容赦なくスアイを制圧し、即座に次の標的へと身を翻す。

「ゆ、優太さん! 私には当てないでよぉっ!」

 キュララが半泣きで逃げようとするが、優太はすでに彼女の逃走ルートに『雪の落とし穴(即席のブービートラップ)』を仕掛けていた。

「わちゃぁっ!?」

 キュララがトラップに足を取られて転んだ隙に、優太の正確無比な投擲が、彼女の背中をポンッと打つ。

「ヒット。キュララ、沈黙」

「うぇぇぇんっ! 優太さんの軍隊仕込みの雪合戦、怖すぎるよぉぉっ!」

 残るは、雪玉を食い続けるリーザに気を取られていたキャルルと、スノーゴーレムの背中でニコニコしているルナのみ。

「優太君! 私と本気の勝負だよ!」

 キャルルが安全靴を雪に踏み込み、紫電の闘気を纏った全力の雪玉を放とうとする。

 しかし、優太は正面から撃ち合うような愚策は取らない。

 優太は自身の足元の雪を強く蹴り上げ、意図的に雪煙の目隠し(スモークスクリーン)を発生させた。

「えっ!?」

 視界を奪われたキャルルが躊躇した一瞬。

 雪煙を突き破り、優太が姿勢を低くしてキャルルの懐へと潜り込んだ。

「月影流のモーションは大きい。投擲のタメの瞬間に、必ず重心が浮く」

 優太はキャルルの足首を軽く払う(システマの体術)。

「ああっ!」

 バランスを崩したキャルルが、ふわりと雪の上に背中から倒れ込む。

 優太は倒れたキャルルの顔のすぐ横に手をつき、彼女を見下ろす形で、雪玉をキャルルの肩にポンと置いた。

「……ヒット。俺の勝ちだ、キャルル」

「ゆ、優太君……っ♡」

 雪の上に押し倒される(マウントを取られる)ような形になったキャルルは、顔を真っ赤にしてヤンデレ成分を暴走させ、完全に骨抜きになってしまった。

「うふふふっ、優太君の雪玉、もっと……もっと当てて……♡」

「……不健全な妄想をするな。これでお前も戦死だ」

 優太はため息をついて立ち上がる。

 最後に残ったルナのスノーゴーレムは、優太が木の枝の雪を落としてゴーレムの頭に直撃させ、見事に瓦解させた。

「はははっ、完敗ですわ。まさか雪合戦で、戦術的包囲網とCQCを仕掛けられるとは思いませんでしたの」

 雪まみれになったスアイが、清々しい笑い声を上げる。

「うぅ……優太さん、遊びなのにガチすぎるよぉ……でも、配信の撮れ高はバッチリだったかもっ☆」

 キュララが羽についた雪を払いながら、エンジェルすまーとふぉんを回収する。

「優太様ぁ! 私、雪玉三十個食べましたわ! お腹がタプタプですのーっ!」

 リーザが満足げにお腹をさすり、イグニスが「俺様、何もしてねえ……」と雪の中でいじけていた。

 全員が雪まみれになりながらも、その顔には心からの笑みが浮かんでいる。

 優太はコンバットグラスの雪を指で拭い、アメリカンスピリットに再び火を点けた。

(……くだらない遊びだが、悪くない。部隊の連携チームビルディングと、ストレスの解消には十分な効果があったな)

【善行を確認しました】

【対象:村人との健全なレクリエーションを通じた、部隊の連帯感強化と健康増進】

【ポイントを加算します:+1000P】

 脳内に響くシステム音を聞きながら、優太は冷たい冬空を見上げた。

 最強の元魔族も、元王族も、極貧の人魚も、みんな等しく雪に塗れて笑い合っている。

 この何気ない日常の『遊び』すらも、ポポロ村の結束を強固なものにする重要な防衛プロセスの一つであった。

 だが、この平和な笑い声の裏で、ポポロ山の麓には、確実に『魔皇国の新たな影』が忍び寄りつつあることを、優太のAWACSはすでに捉え始めていたのである。

読んでいただきありがとうございます。

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