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異世界の戦場医官、現代医療とタクティカル兵器で無双する〜ポイント稼いで地球の物資をポチったら、村の英雄になりました〜  作者: 月神世一


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EP 8

特定ドクシングと、田舎の母の涙(社会的抹殺)

 ポポロ村の広場。

 南門を突破して勝ち誇っていた『迷惑系配信者(凸撃者)』たちの頭上に、キュララが展開した複数のエンジェルすまーとふぉん(ドローンカメラ)が、ハエのようにまとわりついていた。

「はーい、特定班のみんなぁ! この悪そうなお兄さんたちの顔、バッチリ4K画質で映してるからねーっ!」

 上空で羽をはためかせるキュララの号令と共に、彼女の配信画面のコメント欄が、異常な速度で滝のように流れ始めた。

「ハッ! なんだそのふざけた天使は! 俺たちを撮ってどうするつもりだ! 俺たちの配信の方が同接(視聴者数)が多いんだぜ!」

 金髪でピアスだらけのリーダー格の男が、鼻で笑いながら自分の自撮り棒(魔導通信石)を掲げる。

 だが、優太はアメリカンスピリットの煙を細く吐き出し、氷のように冷たい声で宣告した。

「……五秒だ。お前たちの『嘘の正義』が通用するのは、あと五秒だけだ」

 五、四、三、二、一。

 優太が心の中でカウントダウンを終えた瞬間。

 キュララが空中に展開した巨大なホログラム・モニターに、凄まじい勢いで『個人情報』が次々と羅列され始めた。

「えーっと! 特定班からの報告、読み上げるねっ☆」

 キュララが、アイドルのような弾ける笑顔で、恐るべき内容を読み上げ始めた。

「まずはリーダーの金髪ピアスさん! 本名『ガリバン』、二十八歳! ルナミス帝国東部のオクラ村出身! 現在の職業はフリーランスの傭兵って言ってるけど、実際はギルドの会費を半年滞納して除名寸前! おまけに裏アカウント(匿名掲示板)で『俺は本当はすごい剣士だけど世間が分かってない』って毎日ポエムを書き込んでるね! 痛ぁーいっ♡」

「なっ……!? て、てめえ! なんで俺の本名と裏アカを……!?」

 ガリバンの顔から、一瞬にして血の気が引いた。

「まだまだいくよーっ! 後ろにいる大柄なお兄さん! 先週、ルナミスの歓楽街のキャバクラで無銭飲食して逃げてるね! 被害届出てるよー! その隣の痩せたお兄さんは、出会い系魔導具で女の子に貢がせてるヒモ男! しかも相手の女の子、実はネカマ(おじさん)だって特定班が裏取り済みでーすっ☆」

「ぎゃあああっ!? や、やめろ! 俺の恥ずかしい過去を全世界に晒すなァァッ!」

「うわぁぁっ! 俺の彼女、おっさんだったのかよォォッ!?」

 広場に、怒声ではなく『悲鳴』が響き渡った。

 ルナミスの底辺で燻っていた彼らの、見栄と嘘で塗り固められた過去と現在が、数百万人の視聴者の前で丸裸にされていく。

「……これが情報戦インフォメーション・ウォーだ」

 優太は、完全にパニックに陥っているガリバンたちに向けて、冷徹に歩み寄った。

「貴様らが正義面をして流した『フェイクニュース』は、俺たちの手によって完全に論破された。今、ゴッドチューブのトレンドはお前たちの『本名』『前科』『実家の住所』で埋め尽くされている。……いわゆる、デジタルタトゥー(社会的抹殺)の完成だ」

「ひぃっ……!」

 ガリバンが後ずさる。

 物理的な暴力など一切振るっていない。だが、優太の纏うインテリヤクザのオーラと、情報の暴力ドクシングは、彼らの心を根元からへし折るのに十分だった。

 そして、優太が仕掛けた『最大の精神攻撃トドメ』が、いよいよ発動する。

 ルルルルルッ! ルルルルルッ!!

 突如、ガリバンの腰のポーチに入っていた、私用の魔導通信石が激しく鳴り響いた。

 恐る恐る通信石を耳に当てたガリバンは、次の瞬間、ビクッと肩を跳ねさせた。

『……ガリバン!! あんた、都会で立派な騎士になるって言って村を出たのに、何やってんだい!!』

 通信石から漏れ聞こえてきたのは、ドスの効いた、しかしどこか涙ぐんでいる『初老の女性』の怒声だった。

「か、母ちゃん……!? な、なんで俺の通信石に……!?」

『なんでじゃないよ! 見ず知らずの親切な人たち(特定班)から、村の寄り合い所に山ほど連絡が来たんだよ! あんたが変な金髪にして、辺境の村で強盗まがいのことを配信してるって! 村の恥さらし! 今すぐ帰ってきて、うちの畑を手伝いなさい!!』

「か、母ちゃぁぁんっ……! ごめんなさぁぁいっ! 俺が悪かったよぉぉっ!」

 金髪ピアスのリーダーが、大粒の涙を流しながら、ポポロ村の広場の土に額を擦り付けて号泣し始めた。

 それを皮切りに、他のならず者たちの通信石も次々と鳴り始め、「親父!? 違うんだ!」「ばあちゃん、泣かないでくれぇぇっ!」と、広場は阿鼻叫喚の『家族からの公開説教クレーム会場』へと変貌した。

「……勝負あったな」

 優太は満足げに頷き、背後の自警団に視線を送った。

 イグニスもネギオも、あまりのエグい結末にドン引きして、顔を引きつらせている。

「優太……お前、悪魔かよ。槍で突かれた方が、まだマシなダメージだぞ……」

「現代のコンプライアンス社会では、物理的な死よりも、社会的な死の方が重いんだ。……キャルル、どうした?」

 優太が視線を落とすと、特注の安全靴を履いたヤンデレ村長が、頬を赤らめて優太を見上げていた。

「ううん。優太君、指一本触れずに悪い奴らを土下座させちゃうなんて、最高にカッコいいなって……♡ やっぱり、私の目に狂いはなかったよ」

「サバイバルより、世間の目の方が恐ろしいですわね……。私、絶対に優太様と特定班には逆らいませんわ……っ!」

 キャルルがうっとりとし、リーザが恐怖に震えながらパンの耳をかじる。

「よし、キュララ。状況は完全に制圧した。最後は『エンタメ』らしく、綺麗にシメてやれ」

「了解っ☆ それじゃあみんな、最後はキュララの浄化魔法でお別れだよーっ!」

 キュララが空中でカメラ目線を決め、無駄に長い変身(十四秒)を経て、白銀の聖騎士の鎧を纏った。優太は「またあの隙だらけの変身か」と額を押さえたが、今回は敵が全員土下座して泣いているため、完全に安全である。

「悪の心よ、綺麗になーれっ! 『ホーリー・スプラァァァッシュ』ッ!!」

 キュララのレイピアの先端から、極太の光属性レーザー(ただし、優太の指示により殺傷能力をゼロに絞った、ただの『眩しいだけの物理的衝撃波』)が発射された。

 ドゴォォォォンッ!!

 凄まじい閃光と爆音と共に、泣き崩れていたガリバンたちは「ぎゃあああっ! 母ちゃぁぁんっ!」と悲鳴を上げながら、広場の外、南門の遥か彼方へと綺麗に吹き飛ばされていった。

「ふぅ……。悪は、浄化されたよっ☆ みんな、最後まで見てくれてありがとーっ! ポポロ村はとっても平和で良い村だから、みんなも遊びに来てね! バイバーイッ!」

 キュララが完璧なアイドルスマイルで配信を終える。

 コメント欄は『キュララちゃん最高!』『悪徳指揮官じゃなくて、有能な軍師だった!』『ポポロ村のオニオンスープ飲みたい!』と、大絶賛の嵐で埋め尽くされていた。

 フェイクニュースによる炎上を、圧倒的な『情報力(OSINT)』と『生配信』によって完全に鎮火し、逆にポポロ村の知名度を爆発的に引き上げるPRへと変えた逆転劇。

 軍医・中村優太のインテリヤクザ的情報戦は、一滴の血も流すことなく、完全勝利の結末を迎えたのであった。

お読みいただきありがとうございます!


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