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異世界の戦場医官、現代医療とタクティカル兵器で無双する〜ポイント稼いで地球の物資をポチったら、村の英雄になりました〜  作者: 月神世一


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EP 13

インテリヤクザの契約書と、黄金の村の独立宣言

 雲一つない、清々しい朝のポポロ村の広場。

 だが、その中心には、血と土に塗れ、麻縄で簀巻きにされた十五人の重武装傭兵たちが、一列に並んで土下座させられていた。

「な、なんだこれは……っ!? 俺の雇った『黒の牙』が、こんな田舎の土民どもに……っ!」

 自警団によって広場に引きずり出された『ゴルド商会』の商人ガルドは、信じがたい光景に目をひん剥き、脂汗をダラダラと流していた。

「おはよう、ガルド。昨晩は随分と物騒な『使者』を送ってくれたな」

 広場の中央に置かれた木箱に腰掛け、優太がアメリカンスピリットの煙を吐き出しながら冷徹に声をかけた。

 その隣では、ネギオが分厚い六法全書を片手に、ニヤニヤといやらしい笑みを浮かべている。

「ひっ……! ち、違う! 俺は知らない! こいつらが勝手にやったことだ!」

「ほう。ルナミス帝国の法治主義は、随分と寛容なようだな」

 優太が顎でしゃくると、簀巻きにされた傭兵の頭目(大男)が、青ざめた顔で絶叫した。

「ふざけんなガルド! てめえが金貨百枚で俺たちを雇った契約書が、俺の懐に入ってんだよ! しかも『人魚は無傷で俺の愛玩奴隷にするから気をつけろ』って念押しまでしやがって!」

「ばっ、お前……黙れッ!」

 ガルドが真っ赤になって怒鳴るが、優太の冷たい視線が突き刺さると、ヒィッと喉を鳴らして黙り込んだ。

「さて、ネギオ。事の顛末を帝国の裁判所に持ち込んだ場合、彼の量刑はどうなる」

 優太が問いかけると、ネギオは咳払いをして六法全書をペラペラと捲った。

「カカッ、ルナミス帝国通商法違反、ならびに私兵を用いた未認可の武力行使。さらに『人身売買禁止法』への抵触やな。これらを総合すると……商会からの永久追放、全財産の没収、そしてマグローザ漁船での懲役五十年っちゅうところや。実質的な死刑やな」

「……ッ!!」

 ガルドの膝から崩れ落ち、地面に手をついた。

 物理的な暴力(夜襲)で完敗し、今度は法的・社会的な息の根を完全に止められたのだ。ルナミス帝国という法治国家のルールを悪用しようとした商人が、その法そのものに首を絞められる完璧な『詰み』だった。

「お、お許しを……! どうか、裁判所への引き渡しだけはご勘弁をぉぉっ!」

 ガルドは優太の足元に擦り寄り、大粒の涙を流して土下座した。

「全財産を差し出します! この馬車も、金貨もすべて置いていきますから、どうか命だけは……っ!」

「……ふっ。全財産など、たかが知れている」

 優太はガルドを冷たく見下ろし、持っていた羊皮紙をガルドの目の前に投げ捨てた。

 それは昨日、ガルドが突きつけてきた『不平等な専属買取契約書』だ。

 ただし、その内容(数字)は、優太の指示によってネギオが全面的に『書き換え』を行っていた。

「裁判所に突き出すつもりはない。俺はお前を、このポポロ村の『専属商人』として改めて雇用してやる」

「え……?」

「この契約書をよく読め」

 ガルドが震える手で羊皮紙を拾い上げ、そこに書かれた数字を見て、さらに目を剥いた。

「こ、これは……ッ! 特産品の買取価格が、市場相場の五倍!? しかも、輸送費と護衛費はすべてゴルド商会持ち……!?」

「そうだ」

 優太はシガレットを携帯灰皿に揉み消し、ゆっくりと立ち上がった。

「ルナミス帝国の富裕層に、あの美味い『たまんネギ』や『人参マンドラ』を高く売り捌くパイプと流通網ロジスティクス。それが、お前の持つ唯一にして最大の価値だ。お前はこれから、自分の商会のネットワークをフル活用し、俺たちの村の特産品を最高値で売り捌く『営業マン』になってもらう」

「そ、そんな無茶な! いくら美味くても、こんな法外な価格じゃ、俺の手元に利益がほとんど残らねえ! ただのパシリじゃねえか!」

「そうだ。お前は俺たちのパシリだ。だが、マグローザ漁船で一生タコ部屋で暮らすよりは、マシな人生だと思うがな?」

 極寒の戦場医官の目。

 そこには微塵の慈悲もなく、純粋な『村の利益の最大化』だけが計算されていた。

 敵の命を奪うのではなく、その機能(流通網)を丸ごと奪い取り、自軍のシステムに組み込む。まさにインテリヤクザ顔負けのえげつない経済侵略カウンターだ。

「……ひぐっ、うぅっ……サイン、しますぅぅっ……」

 完全に心を折られたガルドは、泣きながら羊皮紙にサインと血判を押した。

 それを見ていたイグニスや村人たちは、優太の冷酷で完璧な制圧劇に、尊敬を通り越して「この人にだけは絶対に逆らわないでおこう」と静かに誓っていた。

「……優太さん、悪役商会の大ボスみたいですわね。でも、私、そういう稼げる男の人、嫌いじゃありませんわよ♡」

 リーザだけは、サインされた契約書を見て「これで毎日お肉が食べられますわーっ!」と目を輝かせている。

「カカッ! 見事なもんや。これでポポロ村は、誰にも脅かされん圧倒的な『富』を手に入れたっちゅうわけやな。周辺のどの村よりも豊かな、黄金の開拓村や」

 ネギオが満足げにポポロシガーを吹かし、契約書を回収した。

『パラパパパパーン!!』

 その瞬間、優太の脳内で、今までにないほど大音量のファンファーレが鳴り響いた。

【特大の善行を確認しました】

【対象:共同体『ポポロ村』の完全なる経済的自立、および長期的な繁栄システムの構築】

【地域社会への貢献度:極大】

【ポイントを加算します:+10000P】

【現在の所持ポイント:15100P】

(……一万ポイント。命を救うだけでなく、村の『未来の生活』を保証したことに対する評価か)

 これで、いつ強力な魔獣が攻めてきても、高額な医療機器や軍事兵器を惜しみなく投入できる。

 優太はホログラムUIを閉じ、清々しい秋空を見上げた。

「イグニス、キャルル。そしてネギオとリーザ」

 優太が振り返ると、村の仲間たちが彼を誇らしげに見つめていた。

「害虫駆除と、契約は完了した。これでこの村の不可侵と繁栄は保証された。……今日は、昨日よりも盛大な宴会にするぞ。とびきり美味いもんを食わせてやる」

「うおおおおッ!! 優太先生、万歳ッ!!」

「優太君のご飯! 私、優太君の横に座るーっ!」

「きゅるるるるっ! 私は金貨の上でステーキを食べますわーッ!」

 広場が割れんばかりの歓声に包まれる。

 ガルドと傭兵たちがトボトボと村から追い出されていくのを背景に、ポポロ村の第二の平和な日常が幕を開けた。

 しかし、彼らはまだ気づいていなかった。

 リーザの昨夜の『ゲリラライブ』が、奇跡のバフ効果として天界の神々の目に留まり、ゴッドチューブを通じてとんでもない騒動の種を引き寄せようとしていることに。

お読みいただきありがとうございます!


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