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異世界の戦場医官、現代医療とタクティカル兵器で無双する〜ポイント稼いで地球の物資をポチったら、村の英雄になりました〜  作者: 月神世一


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EP 9

たまんネギの賢者モードと、迫る宵闇

 太陽が西の森へと沈みかけ、ポポロ村は赤黒い宵闇に包まれようとしていた。

 ルナミス帝国の悪徳商人ガルドが放つであろう『夜襲』に備え、優太は額に四眼の暗視ゴーグルを装着し、村の防壁内で的確な指示を飛ばしていた。

夜間戦闘ナイト・オペレーションの前に、まずは最大の資源キャッシュカウを安全地帯へ回収する。急げ!」

「おう! 任せとけ!」

 イグニスたち自警団が、畑から『特産品』である狂気の変異農作物たちを次々と麻袋に詰め込んでいる。

 だが、当然ながら普通の収穫作業ですんなり終わるはずもなかった。

「うおっ!? なんだこれ、ズボンが……ッ!?」

 両手で麻袋を抱えていたイグニスのズボンが、突如として足首までずり下がった。

 彼の足元には、ツルツルとした緑色の豆の群れが、見事な連携プレイでズボンのベルトを引っ張っていたのだ。

「カカッ! ワテの自信作『ダイズラ豆』や! 危機を感じると相手の衣類を強制的にずり下げて羞恥心を煽り、逃走経路を確保するスナイパー顔負けの攪乱部隊やで!」

「ふざけんなッ! 俺様の純白のブリーフが丸見えじゃねえか!」

 イグニスが顔を真っ赤にしてズボンを引き上げようとした、その時。

 足元の土から顔を出している『ネタキャベツ』たちが、ヒソヒソと葉をすり合わせ始めた。

『ねえねえ、聞いた? イグニスってルナミスで大物ぶってたけど、実は日雇いと炊き出しループしてたらしいよー』

『ウケるー。実家に「純金の像が建つ」とか嘘の手紙送ってたんでしょー? イタすぎー』

「や、やめろぉぉぉッ!! 俺様の黒歴史を大音量で拡散すんじゃねえッ!!」

 精神攻撃ゴシップと物理的羞恥(ズボンずり下げ)の波状攻撃。イグニスは両手で顔を覆い、畑の中心でうずくまってしまった。

「……対象のトラウマを的確に抉る情報戦インフォメーション・ウォーフェアか。恐るべき植物だな」

「感心してねえで助けてくれよ優太ぁっ!」

 優太は真顔で分析しながら、ネタキャベツたちの口(葉の隙間)にガムテープを貼って黙らせ、鮮やかな手つきで収穫していく。

 一方、畑の反対側では、キャルルが『たまんネギ』の群生を収穫していた。

 たまんネギたちは、葉っぱの腕でルナミス帝国の水着グラビア雑誌を広げ、「ヒッヒッ」「タマンネェ……」とピンク色に発光しながら、煩悩を糖度へと変換している最中だった。

「……あら?」

 キャルルは、その雑誌の表紙——『魅惑の豊満ボディ特集!』という文字と、露出度の高い水着の女性を見て、ウサギの耳をピクリと動かした。

 そして、ひどく冷たく、だが満面の笑みを浮かべたまま、たまんネギたちを見下ろした。

「ダメだよ。こんな不純なものを見ちゃ」

 スッ。

 キャルルが、たまんネギたちの手から一切の容赦なくグラビア雑誌を没収した。

「優太君の村に、こんな破廉恥なものは必要ないの。優太君は、私だけを見ていればいいんだから……ね?」

 瞳の奥に宿る、絶対零度のヤンデレの圧。

 生き甲斐である煩悩グラビアを奪われたたまんネギたちは、一瞬「アッ……」と絶望の声を上げた。

 だが、次の瞬間。

 彼らのピンク色だった皮が、突如として眩いほどの『純白』へと変化し、頭上には天使の輪のような神々しい光が浮かび上がったのだ。

『……我、悟リヲ得タリ。色即是空、空即是色……』

「おおっ!? なんやあれは!」

 ネギオがポポロシガーを落とし、驚愕の声を上げた。

「煩悩を極限まで高めた状態で、強制的にそれを剥奪されたことで、精神が涅槃ニルヴァーナに到達しとる! 名付けて『賢者モード』! 蓄積されたアミノ酸が神仏の領域にまで昇華された、究極の甘みやで!」

「……この村の生態系は、根本的に狂っているな」

 優太は深く溜め息を吐きながら、後光が差しているたまんネギたちを麻袋に回収した。

 かくして、村の特産品は無事に全量回収され、安全な倉庫へと運び込まれた。

 村人たちとリーザは、優太の指示により強固な村長宅の地下室へと避難を完了している。

 ——夜。

 静寂がポポロ村を包み込んだ。

 優太は一人、村の南門の内側に立ち、額の暗視ゴーグル(ナイトビジョン)を下ろした。

 視界が、緑色がかった鮮明な映像へと切り替わる。森の奥の木々の輪郭から、葉の一枚一枚までがはっきりと見える。

「ネギオ、イグニス。所定の位置で待機しろ。俺の合図があるまで動くな」

「おう。気をつけろよ、優太」

「カカッ、インテリヤクザの狩りの時間やな」

 優太は南門の前に、購入したばかりの『指向性対人地雷クレイモア』を二基、目立たないように設置し、起爆用の起爆装置クリッカーを手に握りしめた。

 そして、ワスプ薙刀・改の黒い柄を静かに引き抜く。

 ガサッ……。

 緑色の視界の奥。

 防壁の外の森から、十数人の『熱源』が、音を殺して村へ近づいてくるのが見えた。

 全員が黒装束に身を包み、手には殺傷能力の高いクロスボウや、毒を塗った短剣を握っている。ガルドが雇った、正真正銘の暗殺と略奪のプロフェッショナルたちだ。

『……静かなもんだ。田舎の獣人どもは、ぐっすり寝てるぜ』

『女と人魚は生け捕りだ。男は全員殺せ。ガルドの旦那からのボーナスが弾むぞ』

 傭兵たちのリーダーが、下劣な笑みを浮かべながら小声で指示を出すのが、優太の耳にも微かに届いた。

 彼らは、自分たちが『狩る側』だと微塵も疑っていない。

 だが、彼らは知らない。

 この村の防衛指揮官が、地球の現代戦術と最強の殺傷兵器を備えた、極寒の怪物であることを。

「……害虫ども。絶対殺戮陣地キルゾーンへようこそ」

 優太は暗視ゴーグルの奥で冷酷に目を細め、静かに起爆装置の安全ピンを外した。

 ポポロ村の黄金を守るための、一方的な蹂躙が幕を開ける。

お読みいただきありがとうございます!


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