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異世界の戦場医官、現代医療とタクティカル兵器で無双する〜ポイント稼いで地球の物資をポチったら、村の英雄になりました〜  作者: 月神世一


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EP 12

キルゾーン構築。軍医の防衛戦術

「パニックになるな! 俺の指示に従え!」

 ポポロ村の広場に、優太の腹の底から響く怒声が轟いた。

 死蟲機ネクロバグの大群が接近しているという報せを受け、広場は恐怖と混乱の坩堝るつぼと化していた。だが、極限の戦場を潜り抜けてきた『指揮官』の覇気を帯びた声が、村人たちのパニックを強引に縫い留める。

「逃げる時間はない! だが、絶望する必要もない。奴らを迎え撃ち、この村で完全に殲滅する!」

 無謀とも思える宣言。だが、昨日まで優太の奇跡的な医術と冷静な指導を目の当たりにしてきた村人たちは、その言葉にすがりつくように静まり返った。

「俺様も優太に従うぜ! 泣いてる暇があったら手を動かしな!」

 イグニスが両手斧を地面に叩きつけて吠えると、自警団の若者たちも覚悟を決めた顔で頷いた。

 優太は即座にホログラムUIを展開する。

 アンロックされたばかりの『建材・軍用資材』カテゴリ。優太は迷うことなく、レイザーワイヤー(有刺鉄線)、数百枚の空の土嚢袋、そして折りたたみ式の野歩兵用シャベルを大量にカートに叩き込んだ。

『計・500Pを消費します。購入しますか?』

(YESだ)

 広場の中央に、光の粒子と共に大量の軍用資材が山となって現れた。

 優太は自警団と、動ける獣人たちを集めて地図を広げる。

「いいか。敵は知能を持った虫と機械の化け物だ。だが、思考の基本は『最短距離での制圧』から逸脱しない。村を囲む防壁のうち、一番強度の低い南門をわざと開け放つ」

「なっ、わざと門を開けるのか!?」

「そうだ。強固な壁を破るより、開いた穴から侵入する方が効率がいいと敵に『錯覚』させるんだ」

 優太は地図の南門部分に指を置き、そこからV字型に線を描いた。

「門を抜けた先に、この土嚢を積み上げて『V字型のポケット(袋小路)』を作る。そのポケットの底と側面に、この有刺鉄線を何重にも張り巡らせろ」

「なるほど……敵を狭い通路に誘い込んで、身動きを取れなくするんだな!」

「そうだ、イグニス。そして土嚢の壁の裏側に自警団を配置し、三方向から十字砲火——いや、一方的なタコ殴りにする。これを現代戦術で『キルゾーン(絶対殺戮陣地)』と呼ぶ」

 単純だが、最も効果的な遅滞・殲滅戦術。

 優太の淀みない指示に、村人たちは見事な連携で動き始めた。

 獣人族の百馬力に勝る膂力は、土嚢作りにおいて圧倒的な効率を発揮した。土を掘り、袋に詰め、瞬く間に大人の背丈ほどの強固な土嚢陣地がV字型に組み上がっていく。

 有刺鉄線が張り巡らされ、のどかだった村の入り口は、わずか一時間で禍々しい『要塞』へと変貌を遂げた。

「よし。これで前線は保つ」

 優太は土嚢の強度を確認し、次に村の広場の後方に天幕を張った。

 そこに、止血帯、ガーゼ、消毒液、縫合キットなどの医療物資を整然と並べていく。最前線から負傷者をすぐに引き抜き、処置を行うための『トリアージ(野戦治療所)』だ。

「優太君」

 背後から、トンファーを握りしめたキャルルが歩み寄ってきた。

 彼女のウサギの耳は戦闘態勢でピンと立ち、その瞳には村を守るための強い覚悟が宿っている。

「私も、前線で戦うよ。私の足と蹴りなら、あの化け物たちにも届くはずだから」

「ダメだ。お前はここに残れ」

「……えっ?」

 優太は医療キットの配置を続けながら、振り返らずに告げた。

「お前は村長だ。それに、満月でもないのに力を使えば身体が持たない。お前の仕事は、このトリアージ所で負傷した非戦闘員や子供たちを守ることだ。俺たちの背中は、お前にしか預けられない」

「優太、君……」

 優太が振り返ると、キャルルはトンファーを握る手を胸に当てていた。

 その顔には不満など微塵もない。むしろ、瞳の奥に、暗く、甘い熱情がドロリと渦巻いていた。

「……ふふっ。わかった。優太君が『背中を預ける』って言ってくれたんだもんね。ここは私が、絶対に守る」

 キャルルが一歩近づき、優太の耳元で甘く囁く。

「優太君の作った陣地も、優太君の村も……私が、全部守ってあげるからね」

(俺の村、か……? まあ、モチベーションが高いのはいいことだ)

 若干の認識のズレを感じつつも、優太は頷いた。

 その直後、脳内に力強いファンファーレが鳴り響いた。

【善行を確認しました】

【対象:共同体救済のための防衛陣地構築、およびトリアージ拠点の設立】

【地域社会への貢献度:特大】

【ポイントを加算します:+1000P】

【現在の所持ポイント:10500P】

 再び所持ポイントが一万の大台に乗った。

 ガチャで引き当てる『切り札』のための資金は、十分に確保できた。

 ズン……、ズン……。

 地響きが、村の南門に迫ってきていた。

 森の木々が不自然に薙ぎ倒され、金属が擦れ合うようなカシャカシャという無機質な駆動音が、空気を震わせる。

「……来たぞッ! 全員、配置につけ!」

 優太の声と共に、土嚢の裏に隠れたイグニスや自警団員たちが武器を構える。

 優太自身も、土嚢の最前列中央に立ち、漆黒の柄を持つ『ワスプ薙刀』の刃を展開した。

「地獄の底から這い出してきた化け物ども。極上の『キルゾーン』へようこそ」

 森の暗がりから、酸のよだれを垂らした鋼鉄の蟻——死蟲機の大群が、開け放たれた門へ向かって雪崩れ込んできた。

 命を懸けた防衛戦の、幕が切って落とされた。

お読みいただきありがとうございます!


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