表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
血と絆 ~または記憶と祈り~  作者: 木庭七虹
91/97

90.白虎と青龍

【今回のあらすじ】

尸皇が召喚した白虎と青龍が、伯爵と博貴に役割を告げる。

 寅三(とらぞう)に向けて微笑(ほほえ)んだ尸皇(しこう)は、さらに笑みを深くした。

「すべて揃ったな……」

 目を(つぶ)ると、再び両手を高く掲げた。

「来い」

 尸皇の呼びかけに、宙に(にじ)むように神獣が姿を現した。

 出現したのは、2柱の神だ。


 白と秋を司り、西方を守護する白虎(びゃっこ)

 青と春を司り、東方を守護する青龍(せいりゅう)


「それぞれの役目を果たせと伝えよ……」

 尸皇が目を開け両手を下すと、青龍と白虎が飛び去った。


 -------------------------------------


 一服したあと、館への坂道を駆け上がった。

 玄関前に到達したとき、博貴(ひろき)伯爵(コント)は、雷に打たれたかのようにビクリと体を震わせて立ち止まった。

 2柱の神獣が降臨し、博貴と伯爵の体に入り込んだ。

 博貴の体に入り込んだ青龍が彼に(ささや)く。

(お前は、父となり、次世代の〈(たね)〉を生み出す)

 伯爵の体に入り込んだ白虎が彼女に囁く。

(お前は、母となり、次世代の〈種〉を産む)

「クソッ、何なんだ!」

 博貴は(うめ)いた。なんでわけのわからない要求ばかり俺にするんだ!

 声を無視しようとするのだが、青龍が博貴の心臓をがっちりと握り、逆らうことを許さない。自由意志は奪われ、血管の中で騒ぐ血の欲求を果たそうとする。

「ああ……」

 伯爵が、うっとりとした顔で博貴を見た。

「私たちは、行かねば……」

 博貴の手を取り、玄関に向かう。

 博貴の足はそれに従ってしまう。感情は理不尽な要求を拒絶しているのに、体は喜んで従ってしまう。

 玄関の扉は壊されていた。

 操られるように博貴は、伯爵と共に館に足を踏み入れた。


 寸前まで真っ暗だった玄関ホールが、まぶしい光に満たされる。

 博貴が目にしたのは、夏樹(なつき)の首に男爵(バロン)のナイフが刺さるところだった。

 (ロワ)が放った奴霊(どれい)が、夏樹の日本刀を分厚く包み込み、公爵(デュック)の左腕がその奴霊ごと日本刀を受け止めていた。

 夏樹は、博貴に気付いて微笑むと、その場に倒れた。

 博貴は、考える間もなく、男爵に向けて銃弾を放っていた。

 5発の弾丸が、男爵の頭部を粉々に砕いた。


 男爵が撃たれたのを見て、王は顔を(しか)めたが、そのまま2階に上がっていった。刀が腕まで達していたらしく、血を滴らせた公爵は、警戒するように博貴を見たが、博貴の目が夏樹だけに注がれていることに気付くと、そのまま王のあとを追った。


「夏樹さん!」

 博貴が駆け寄り抱き上げると、夏樹はうっすらと目を開けた。

「やられちゃいました。ナイフに毒が塗ってあったようです」

「血を……」

 博貴が、腕を差し出したが、夏樹はフフフと笑って首を振った。

「今日は、僕が死ぬ日です。この未来は変わりません。そして、キミの未来も変えてはなりません。ヒロ君、言ったでしょう? キミはいいお父さんになりますって。キミはそうならねばいけないんです。迷ったり拒んだりしているヒマはありません。僕ら神護(かみご)の子供は世界を救うヒーローなんですよ」

 夏樹は、博貴の手をポンポンと励ますように叩いた。

「ユウ君は、この奥のセーフティルームにいます。急いで。忌族(きぞく)が彼を(けが)さないうちに、きちんと〈種〉を届けてください」

「ヒーローになんて、なりたくない」

 博貴は唸った。

「生まれた意味を果たさないと、キミは後悔します。キミが拒んで次世代の〈種〉が生まれないと、この地球は滅びます。そうなれば今度こそ、本当の地獄ですよ?」

 夏樹はそのまま気を失った。

「クソッ! クソッ! クソッ‼」

 博貴は、思いつく限りの罵詈雑言(ばりぞうごん)を吐きながら、勇真のもとへ走った。その後を伯爵が追った。

【登場人物】

神護寅三かみごとらぞう:勇真の真澄の高祖父の三男。曾祖父の弟。尸族。111歳。外見は20代半ば。

老師/尸皇しこう:血種の祖。尸族を率いる。

神護博貴(かみごひろき):勇真と真澄の叔父。忌族。60歳。外見は30代前半。

伯爵コント/アルジェーン:王の配下。忌族。銀髪にアイスブルーの瞳を持つ美女。

神護夏樹かみごなつき:勇真と真澄の大叔父。祖父の弟。寅三の甥。尸族。89歳。外見は20代前半。

男爵バロン/キュイブル:王の配下。忌族。赤銅色の髪をした、憎めない顔立ちの男。

ロワ:忌族を率いる王。

公爵デュック/オーレル:王の配下。忌族。金色の髪に褐色の肌をした、ハリウッドのアクションスターのような男。

神護勇真かみごゆうま:主人公。33歳。尸皇によって作り出された〈種〉の継承者。

白虎びゃっこ:神獣で四神のひとつ。白と秋を司り、西方を守護する。

青龍せいりゅう:神獣で四神のひとつ。青と春を司り、東方を守護する。


【用語】

血種けっしゅ/たね:血の中に潜み、世界を観測する存在。または血の中に種を宿し、血を媒介に特殊な力を操る者たち。

忌族きぞく:血種の一派。尸皇と袂を分かち、敵対する王に従う者たち。

奴霊(どれい):忌族が操る霊体。黒くてどろどろ。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ