表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
9/20

8.叔父と甥

【今回のあらすじ】

神護家に戻った真澄は、家に入りたがる叔父を追い払う。

 勇真の前から姿を消した少年は、神護(かみご)家へ戻った。

 幹線道路から外れ、だらだらと続く坂道を登ってゆく。そこそこ広い道の左右には、大きな古い家や、数軒の新築住宅の集まりや、アパートなどが建っているが、次第に畑や藪が増えて、家はまばらになっていく。突き当たりにある、神社へ上る長い階段の手前を右に折れ、片側に竹藪、反対側に数軒の家が並ぶ道を行くと、その先に神護家の屋敷はあった。

 屋根付きの古風な門をくぐり、敷石を踏んで進んだ少年は、玄関前で足を止めた。両手を腰に当てると、扉の前にしゃがんでいる(こわ)えタバコの男を見下ろす。


博貴(ひろき)叔父さん……」

 少し茶色がかったくせ毛を肩まで伸ばし、あごに無精ひげ風のひげを生やした叔父は、にやりと笑い、金色の瞳で少年を見上げた。今朝、橋の上で出くわしたときとは異なり、きっちりと喪服を着ている。サングラスもかけていない。

「よう、真澄(ますみ)

 気軽に名前を呼ばれて少年は、嫌そうに顔を歪めた。

 叔父の外見は30代前半に見える。茶目っ気のある表情をしてみせて、楽しい親戚のおじさんの振りをしているが、しかし、中身はそんなものではないことを真澄は知っている。

「こいつらをどけてくれないか? 家に入れない」

 叔父は、タバコを携帯灰皿にねじ込むと、立ち上がり、背後の扉を、くいっと親指で指して言った。

 真澄が使役している使霊(しれい)たちが、白い不定形の体を大きく広げて、何者の侵入も許さぬという構えで、扉の前をがっちりと固めている。

「叔父さんを、ボクたちの家に入れるわけにはいかないよ」

「俺の家でもあるんだがね。自分の家にぐらい自由に帰らせてくれよ。何しろ28年ぶりの帰国なんだから」

 眉を下げ、憐れみを乞う表情をする。

「ダメだよ。父さんと母さんにあんな仕打ちをしておきながら、どの(つら)下げてこの家に帰ってきたの?」

忌族(きぞく)たちが求めていることを知れば、お前だって同じことをするさ」

 叔父は瞳を曇らせた。

「ボクと戦いたいの?」

 真澄は牙を剥き出し、叔父を睨み付けた。

「それは、ご遠慮願いたいな」

 叔父は両手を挙げて降参のポーズをとった。

「父さんと母さんに、これ以上手出しはさせない。ユウ君にも手出しはさせないよ」

「あんな場所で勇真に手出しできるはずないだろ? まったくこの国は変わっちまって、どこに行ってもスマホで撮影されるわ、防犯カメラはあるわ、しかも、ドライブレコーダーまであるとか、まったく証拠隠滅に手がかかりすぎる」

 叔父はぼやいた。

「ボクの前から消えて」

 真澄が凄むと、叔父は素早く真澄に近寄り、耳元に唇を寄せて囁いた。

「ふたりの遺体は、きっちり始末しろ。忌族どもには絶対に渡すな。もちろん尸族(しぞく)にもな」

 叔父は一歩下がって体を遠ざけると、奴霊(どれい)を呼び出した。地面から湧きだした黒い粘液の塊に体を包み込まれたと思うと、奴霊もろとも姿を消した。

 真澄は叔父の気配が完全に消えるのを待ってから、使霊に扉を開けるように命じると、屋敷の中に入っていった。

【登場人物】

神護真澄(かみごますみ):勇真の兄。35歳。外見は7歳。2.で勇真の名刺を警察に届けた少年。3.で親子連れに見えた子供。5.で勇真の前に現れ、6.7.で兄を名乗った少年。

神護博貴(かみごひろき):勇真と真澄の叔父。60歳。外見は30代前半。0.で勇真の両親の殺したサングラスの男。3.で親子連れに見えたサングラスの男。


【用語】

尸族しぞく:血種の一派。詳細は後に判明。今はナイショ。

忌族きぞく:血種の一派。詳細は後に判明。今はナイショ。

使霊(しれい):血種が操る霊体。

奴霊(どれい):血種が操る霊体。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ