表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
血と絆 ~または記憶と祈り~  作者: 木庭七虹
41/97

40.博貴-8

【今回のあらすじ】

博貴の過去。博貴は兄と勇真を斬りつけ、真澄を橋から放り投げ、自分も身を投げた。

 神護(かみご)家の男である、兄と、真澄(ますみ)と、勇真(ゆうま)と、俺が、みな死ねば、それで神護家の(のろ)いは終わる。間違いなく終わる。父が残されるが、近ごろすっかり体が弱った父が、これから新たに子供を作ることはないだろう。

 それで終わるのだ。神護家の呪いは。呪いの連鎖は。

 真澄と勇真が死ねば、優美(ゆみ)は悲しむだろう。

 兄が死んだら、優美は悲しむだろうか?

 俺が死んだら優美は、少しは涙を流してくれるだろうか?


 ナタを振るって勇真の首を斬り、そのまま兄の肩から袈裟懸(けさが)けに振り下ろす。

 肩の骨に引っかかり、ナタが抜けなくなった。

 老師が気づき、こちらへ戻ってくる。

 寅三(とらぞう)も呼んだのだろう。玄関の扉が音を立てて開く。


 博貴(ひろき)は、真澄を抱え上げた。

 泣きながらもがく真澄を押さえながら、車に乗る。

 猛スピードで発車し、門への道を下る。

 閉まりかけている門に、スピードを上げて突っ込む。

 門は曲がり、車は大破した。

 車のドアの隙間からにじり出ると、真澄を引っ張り出し、抱えて走った。

 真澄は気を失っている。

 天使のような真澄の顔を見ていると、涙がこぼれる。


――夏樹(なつき)さん、どうやら俺は、いいお父さんにはなれそうにないです……。


 兄は死んだだろうか? 勇真は?

 生きていれば、老師がすぐにふたりを治癒してしまうだろう。

 そして神護家の呪いは続くのだろうか? このままずっと。永遠に。

 だが、それももう、博貴にはあずかり知らぬことだ。

 追っ手が来る前に、終わらせよう。

 死ねば、尸族(しぞく)として蘇らされる可能性は残るが、もう子孫は残せない。

 兄と甥っ子も、無事に死んでいることを祈るばかりだ。


 前方に千峨戸(ちがと)大橋が見えてきた。全長90メートル、高さ30メートルの赤いアーチ橋。

 博貴は橋まで来ると、確実に殺すために真澄を頭を下にして放り投げた。そして、自分も欄干(らんかん)を越えて身を投げる。川岸の岩に頭から落ちれば、まず助かることはないだろう。

 遠ざかる鉄製の赤いアーチと、その向こうの青い空を見ながら、地面に激突する瞬間を待った。

 が、希望どおりにはいかない。腹に激痛が走った。それは地面に激突した痛みではない。倒木だか流木だかの太い枝が、背中から腹まで貫通し、博貴は串刺しになっていた。皮肉なことに、枝に刺さったことによって勢いが削がれ、博貴は即死を免れ、まだ意識を保っていた。

 数メートル先の岩の上に、倒れている真澄が見えた。首があらぬ方向に曲がり、血が流れている。


――真澄! 真澄! 真澄!


 涙でかすむ目に、真澄を抱き起こす寅三の姿が映った。


 寅三さん……。

 ならば、真澄は蘇るだろう。

 殺そうとしたくせに、そのことになぜか博貴はホッとする。

 寅三が、こちらを怒りに燃える目で見ている。

 いつも温厚な寅三がそんな顔をするのを初めて見た。それほどのことを自分はしてしまったのだ。だが、今さら謝罪しても意味がないし、後悔すべきでもない。神護の家は、やはり滅ぶべきだ。

 寅三が、何か叫んでいる。

 寅三は、チッと舌打ちをし、顔をゆがめると、真澄を抱えて飛び去った。

 何か黒くねばねばしたものが、博貴の体を包み込んだ。

 ひどく不快な闇に包まれて、博貴は意識を手放した。

【登場人物】

神護博貴かみごひろき:勇真と真澄の叔父。

兄:神護真悟かみごしんご。勇真と真澄の父。博貴の兄。

神護真澄(かみごますみ):勇真の兄。博貴の甥。

神護勇真かみごゆうま:主人公。博貴の甥。

父:神護貴一かっみごたかかず。勇真と真澄の祖父。曾祖父総一の長男。真悟と博貴の父。

神護優美かみごゆみ:勇真と真澄の母。真悟と博貴のいとこ。真悟の妻。

老師/尸皇しこう:神護家を守護する神を名乗る老人。

神護寅三かみごとらぞう:勇真と真澄の高祖父の三男。曾祖父総一の弟。博貴の大叔父。

神護夏樹かみごなつき:勇真と真澄の大叔父。祖父貴一の弟。慎吾と博貴の叔父。未来視。


【用語】

尸族しぞく:血種の一派。

千峨戸ちがと大橋:勇真の両親が死亡した現場。(物語上の架空の橋)

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ