22.叔父の目論見
【今回のあらすじ】
列車の中で、勇真の前に叔父の博貴が現れる。
新宿駅を出発してから1時間半ほどが経ち、窓の外は山や田畑といった長閑な風景が続いていた。人家はまばらだ。ぼんやりと風景を眺めていた勇真は、隣に座っていた壮年が突然立ち上がったので、つられてそちらへ目を向けた。
立ち上がった壮年の肩をポンと叩いて、ひとりの男が入れ替わり席に座った。
サングラスをかけた男を見て、千峨戸大橋で見かけた親子の父親に似ていると思った。
「ユウ君、大きくなったなぁ」
男は感慨深げに言った。
男は、サングラスをずらすと、金色の目で勇真を見つめ、ニッと笑った。
その笑顔で気づく。これは叔父だ。あのDVDで見た父の弟。実家に現れたあの奇怪な少年が兄であるならば、叔父が若い頃のままの姿でいても不思議はない。
いつの間にか、あの少年が兄であると信じ始めていた。あり得ないと理性は囁くのだが、心のどこかが諦めて、理論的な思考を放棄し、異常事態を容認しようとしている。それに、赤の他人のまったく見知らぬ子供が勇真に対して異様な行動を取ったと考えるよりも、あれが兄だと思ったほうが腑に落ちる。納得はできないが、そのほうが安心できる。
「叔父……さん……?」
叔父は、DVDに映っていた姿に比べるとやつれており、目つきがきつくなっていた。顎に無精ひげ風のひげを生やしているところも印象を変える要因になっている。
「嬉しいなぁ、覚えていてくれたんだね? 博貴叔父さんだよ」
叔父は心底嬉しそうに言った。しかし、目は笑っていない。金色の目は怪しい光を宿し、勇真を舐めるように見つめている。
「いったい、何を……」
手が伸びてきて、勇真の頬を撫でる。
勇真は身を固くした。
叔父はいったい何をしに来たのか。自分は何をされるのか。そもそもこの叔父は、自分にとって有益なのか、それとも災厄なのか。
兄は少なくとも敵ではなさそうだった。この叔父はどうなのだろうか。
「俺たち神護の子供たちは、血種どもにいいように踊らされてきた。俺たちが生きている限りそれはずっと続く。だから、俺はそれを断ち切りに来た――」
叔父の手が、勇真の頬から首筋を伝い、左の胸に到達した。
「俺は、神護家の呪いの連鎖を断ち切る。ごめんよ、勇真。お前には何の恨みもないんだ」
叔父は勇真の耳元で囁き、彼の胸を愛おしそうに撫でたあと、ぐっと力を込めて手のひらを押し付けてきた。
「かはっ!」
息が詰まる。心臓を鷲掴みにされ、勇真は意識が遠のくのを感じた。
【登場人物】
神護勇真:主人公。33歳。神護家最後のひとり。
神護博貴:勇真と真澄の叔父。60歳。外見は30代前半。
神護真澄:勇真の兄。
【用語】
千峨戸大橋:勇真の両親が死亡した現場。(物語上の架空の橋)
血種:血を媒介に特殊な力を操る者。




