4話 結婚
社交パーティ後も、ダミアンと私は何度か会った。結婚式はどうするか、結婚生活はどうなりそうかなど、色々会話することが楽しかった。
ダミアンは私の意見をすぐ否定することもなく、ちゃんと聞いてくれた。その上で、ダミアンの意見も伝えてくれる。私はダミアンの言葉を解釈して、返事をする。
ダミアンとのやり取り一つ一つがすごく楽しい。こうやって落ち着いて話せる間柄はいいよね。
そんなダミアンと私の関係性に、キャシーは怒った。私が自室のいるとき、キャシーが無理やり突撃してくることも増えた。
「なんで、デボラ様はダミアン様とそんなに仲がいいのですか。ずるいと思いますわ。私だってフリッツ様と幸せに過ごしたいのに、全然うまくいかないのです。私はフリッツ様にちゃんと尽くしていますけれど、フリッツ様どこかへすぐ行ってしまうのですわ。そして、多分フリッツ様は他の女を抱いています。絶対おかしいんですよ。私という女がありながら、フリッツ様は満足していないのです。私はフリッツ様に対して、身も心も全て捧げていますのに」
キャシーがそう言って嘆く。そんな展開になることなんて、普通に予想できたことじゃないか。なんでキャシーは悲しんでいるのだろう。
「ダミアン様が優しいので、うまくいっているのですよ」
仕方がないので、私はそう言った。フリッツとキャシーの関係悪化は、フリッツに責任があると本当は言いたかった。でも、私がフリッツのことを批判すると、キャシーは怒鳴り散らしてしまうだろう。
だから、キャシーが婚約者を選び直した方がいいと、私は遠回しに伝えたつもりだった。でも、キャシーの表情を見る限り、私の思いは伝わらなかったようだ。
「なんですか。自慢ですか。デボラ様のくせに生意気ですね。でも、やっぱりダミアン様の方が、フリッツ様よりも素敵な男性だったかもしれません。いや、そんなことありません。フリッツ様は世界一立派な男性です、そうに決まっていますっ」
キャシーはそう言いながら、私の部屋を出ていった。キャシーにはフリッツしか見えていないのだろうか。
しばらくして、キャシーはフリッツと結婚した。結婚式中、キャシーは寂しそうに微笑んでいたし、フリッツは他の女性ばかり見ていた。あんなフリッツとキャシーがうまくいくはずもないと思う。
案の定、キャシーは実家によく帰ってきた。そして、キャシーは私を恨むように睨みつけてきた。
「キャシーお姉様」
私は声をどうかけたらいいか分からなかった。まあ、私の取るべき行動は、キャシーから距離を置くことだとは思うけれど。
でも、キャシーがあまりにも怖すぎて、私は離れることも難しかった。私が自室へ逃げ込んでも、キャシーは追ってくるだろうし。
「デボラ様が憎くて仕方がありませんわ。私は苦労しているのに、デボラ様がとっても幸せそうなのですもの。デボラ様が若いのもうらやましい限りです。フリッツ様は若い女性にばかり興味を持ちますし」
キャシーの発言を聞いて、私は頭が痛くなった。キャシーと私の年齢差ほとんどないんだけど。
「キャシーお姉様は十九歳、私は十八歳でしょう。私達は一歳しか離れていませんよ。それに、キャシーお姉様と同じように、私だって老けていくのです」
そのように伝えてみた。すると、キャシーは顔をしかめた。
「でも、もっと若い女性と浮気したいだなんて、フリッツ様は言いますし」
キャシーはふてくされたように言った。フリッツの発言が意味不明すぎる。
「いやいや。それはフリッツ様がおかしいですよ。キャシーお姉様より若い成人女性なんて、十八歳の女性しかいないじゃないですか」
そう言いつつも、不安がよぎった。さすがのフリッツも、未成年女性には手を出していないと思いたいのだけれど。フリッツのことだから、いまいち信用できない。
「フリッツ様のことを悪く言わないでくださいっ。私のフリッツ様は素晴らしい夫なんですっ」
キャシーは絶望したように叫んで、部屋を飛び出していった。キャシーが心配だけれど、私にはどうすることもできなかった。キャシーはどうなってしまうのだろう。




