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伯爵令嬢デボラと姉と婚約解消  作者: オギノナギ


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3/5

3話 社交パーティ

 自分に恋人か婚約者がいないと、なんだか危険な気がしてきた。とりあえず、私は両親に相談した上で、侯爵家のダミアンという男性と婚約することにした。


 ダミアンは変に甘い性格じゃないせいか、女性受けはそこまでよくなかった。むしろ、フリッツのようなナンパしまくりチャラ男タイプが、今の貴族界隈ではモテていた。


 でも、フリッツと違って、ダミアンの悪いウワサは全く聞かなかった。だから、ダミアンのことは多少信頼できる気がしていた。


「デボラ様はダミアン様と婚約なさったのですか。ダミアン様は頭がよくて、かっこよくて素晴らしい方ですね。でも、ダミアン様は女性に対して距離を置きすぎじゃないですか。私の婚約者のフリッツ様なんて、女性に対するエスコートが素晴らしいのですわ」


 家でキャシーは私を無理やり捕まえ、そんなことを言ってきた。確かにフリッツは女性に対する距離感が近い。でも、女性の胸や腰をがっつり触ったりという接触が、フリッツは多い。そんなフリッツの手つきが、私はすごく苦手だった。


 ダミアンはフリッツみたいにベタベタせず、必要最低限だけ触れてくれる。ダミアンはそっけないというよりも、ちゃんと気遣ってくれている感じに思えた。だから、私はダミアンの方が好きだ。


「はい。フリッツ様も素敵ですね」


 とりあえず、私は話を合わせた。すると、キャシーは目つきを鋭くした。


「デボラ様ったら元婚約者のくせに、フリッツ様に気があるのですか。デボラは面倒な女ですね」


 キャシーの発言に納得できない。私はキャシーの話に合わせただけだよ。なのに、なんで批判されないといけないんだ。意味分からん。


「いいえ。私はフリッツ様を好きではありませんよ。失礼いたします」


 そう言って、私はキャシーから離れた。キャシーともう会話したくもない。


 でも、社交パーティの日になったら、話は変わってくる。他貴族達の前で、キャシーと私が仲悪い様子を見せたくなかった。


 ダミアンが飲み物を取りに行ったときのことだった。フリッツとデボラが、私に近づいてきた。


「デボラ様、見てください。私のフリッツ様がとってもかっこいいのですわ。大好きです。愛していますわ」


 キャシーがすごくはしゃいでいる。その隣で、フリッツは面倒くさそうな顔をしていた。


「キャシー様さあ、ちょっと引っ付きすぎですよ。俺は他の女とも話したいんです」


 フリッツの発言を聞いて、キャシーがイラついたような顔をした。でも、キャシーは表情をすぐ取り繕って、フリッツにすり寄り始めた。


「フリッツ様の社交的な性格は素晴らしいと思っています。でも、フリッツ様は私をもっと構ってほしいのです。だって、もうすぐ私達の結婚式なんですよ。ですから、私達の仲を周囲に見せつけないといけないでしょう」


 キャシーはかわいく言ってみせる。けれど、フリッツは興味なさそうにため息をついた。


「別にいいじゃないですか。それより、俺はデボラ様と話がしたいんです。俺がデボラ様に送った手紙の返事、まだ返ってきていないんですけれど」


 フリッツはこちらを見ながら言ってくる。フリッツの視線がなんか嫌だ。


 フリッツが私の身体を、舐め合わすように見る感じがすごく気持ち悪い。とはいえ、フリッツの視線が不愉快だなんて言ったら、自意識過剰だとか言われるだろう。本当に気のせいの可能性もあるし、指摘は難しい。


 監視カメラがあれば証拠も残りやすいけれど。この異世界にカメラなんてない。


 そもそも、自分の身体を見られたところで、何かが減るわけでもないしと笑われるかもしれない。でも、正直怖いんだよ。


 フリッツの視線を受けて、このままこの視線を放置しておくと、いつか無理やり襲われそうな恐怖すら覚える。だから、危険回避したいと思ってしまう。もちろん、考えすぎだとは思うけれど。例えるなら、ゲームの敵の弱い威嚇攻撃を無視していたら、その敵が必殺技を放ってきて一発キルされることもあるから怖い、みたいな危険予測だ。


 あと、昔フリッツがとある女性に対して、合意のなく行為に及ぼうとしたってウワサを聞いたことある。だから、余計に恐怖を感じてしまう。あくまでウワサ話だとは聞いているけれど、どうなんだろうな。


「私はフリッツ様からお手紙をいただいた覚えなどございません。何のことでしょうか。フリッツ様の名前をかたる人間から、悪趣味なお手紙ならいただきましたが」

 

 そのように言ってみる。だって、あの手紙をフリッツのものだと認めてしまったら、キャシーが怒るだろうし。


「えー。その手紙は俺が書いたやつですよ。仕方がありませんねえ。じゃあ、今ここで俺の気持ちを伝えますね。俺はキャシー様よりデボラ様の方が好きです。やっぱり、俺はデボラ様と結婚したいと思ってます」


 フリッツがとんでもないことを言ってくる。ここは社交パーティ会場だから、そんな話はしないでほしいな。


 フリッツの言葉を聞いて、キャシーはガタガタと震え始めた。キャシーは今にも倒れてしまいそうだった。


「そんな。嘘でしょう。私はフリッツ様を心から愛しているのに。どうしてフリッツ様はそんなことを言うのですか」


 キャシーの声はとてもか細くて、今にも消え入りそうだった。でも、フリッツはキャシーを見て、バカにしたような笑みを浮かべた。


「だってさあ。キャシー様は俺を束縛しすぎなんですよ。俺はもっと自由な身でいたいんです。デボラ様の方がまだ、俺が遊んでいても許してくれそうですよ。でも、結婚詐欺や独身偽装まがいのことだと、デボラ様は苦手なんでしたっけ。んじゃあ、次からは俺は堂々浮気しますよ。まあ、俺と浮気相手との間に隠し子が産まれちゃったら、養育費はばらまくかもしれません。すみません。家の資産減らしちゃいます」


 フリッツの発言を聞いて、すごく腹が立ってきた。フリッツは結婚を何だと思っているんだ。


「私はフリッツ様と結婚したくありません。よりを戻す気は一切ございません」


 きっぱり言って断る。こんなフリッツと話したくもない。


「デボラ様さあ、そんなこと言わないでくださいよ。ほら、俺はデボラ様のことが好きですよ。デボラ様は俺と結ばれるべきです」


 フリッツがそう言って手を伸ばしてくる。私が後ずさりしても、フリッツはにじり寄ってきた。嫌だ。吐き気がする。


「フリッツ様、おやめください」


 やって来たダミアンがそう言って、割って入ってくれた。ダミアンが私を庇うように立ってくれる。ダミアンの背中がなんだか頼もしかった。


「あーあ。今のデボラ様の婚約者はダミアン様でしたね。男がいるとやりにくいですねえ。仕方がありません。俺はデボラ様のことを一旦諦めますよ」

 

 フリッツが悔しそうに言ったあと、乱暴な足取りで立ち去っていった。キャシーは目を見開いて、フリッツの後ろ姿を見つめていた。


「待ってください。私だけのフリッツ様ですよね。今のフリッツ様のお言葉は、ご冗談だったのでしょう。私はフリッツ様を心底愛していますから、フリッツ様も私だけを見ていてください。私がフリッツ様にもっと尽くしたら、フリッツ様は喜んでくれるはずですわ。ねえ、フリッツ様。そうですわよね。ねえっ」


 キャシーはそんなことを言いながら、フリッツを追いかける。けれど、キャシーはハイヒールのパンプスを履いているから、早歩きだと転けそうなくらい危なっかしかった。パンプスはローヒールでも素早く歩きにくいのに、ハイヒールだとすごく危険だよね。


 そんなキャシーに、フリッツは気がついたらしい。でも、フリッツはキャシーを見てあざ笑うばかりだった。


「キャシー様、付いてこないでください。俺はキャシー様のことを嫌いになりそうです。そもそも、俺はキャシー様だけの男になるつもりはありません。俺の夢はハーレムなんですよ」


 フリッツがそう言って、キャシーから顔を背ける。けれど、キャシーはフリッツに追いすがった。


「そんな冷たいことを言っても、フリッツ様は私のことが好きなんでしょう。フリッツ様にもっと愛されるよう、私は頑張りますから。うふふ。私はフリッツ様のことを信じていますっ」


 キャシーはつらそうな声で言って、フリッツについて行く。でも、フリッツの歩く速度が速すぎて、キャシーは置いていかれそうになっていた。


 そんなフリッツとキャシーの姿を見て、私は何とも言えない気持ちになった。キャシーを救いたいとも思ったけれど、自分の声はキャシーに届かないだろう。


「デボラ様大丈夫ですか。もしよろしければ、バルコニーへ出て夜風に当たりましょうか」


 ダミアンが声をかけてくれる。ダミアンは必要以上に距離を詰めてこないけれど、こうやって優しさを発揮してくれる。こんなダミアンが婚約者になってくれて、私はとても幸せ者だ。


「はい、そうします。ありがとうございます」


 私が声を出すと、ダミアンが安心したように微笑んだ。ダミアンは心配してくれていたのかな。嬉しい。


 私はダミアンのことだけ考えて、安心感に浸りたかった。でも、どうしてもフリッツとキャシーのことが思い浮かぶ。これからフリッツとキャシーはどうなってしまうのだろう。

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