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最後の一人になっても  作者: アルファベット・あき蔵
第05章:独立遊撃隊_グラビトン

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潮汐の終焉

「潮汐同期(タイダル・シンクロナイズ)――限界解除。……ルナ、俺を見ろ!!」


アースの血を吐くような叫びとともに、限界を遥かに迎えていた『アース・シールド』の背部重力炉が、全安全回路と内部基盤を焼き切りながら壮絶な閃光を放った。


タイタンの疑似ブラックホールから全方位へ発せられる圧倒的な圧迫重力に対し、アースは自らの機体そのものを「反転重力核」と化して強行突進。歪み、捻じ切れる空間を自らの重力場で強引に切り裂きながら、歩く超質量塊の真下――その超高密度な絶対防御核の至近距離へと飛び込んだ。


ガガガガガガガガガガガガッ!!


「グガァッ……あぁぁぁぁぁっ!!」


タイタンの発する超重力が、アースの機体を容赦なく全方位から押し潰す。


誇り高き重装甲が飴細工のようにぐにゃりと歪み、内部の高強度フレームが凄惨な音を立てて粉々に砕け散っていく。コクピット内のアースの肉体にも凄まじい物理的Gが容赦なく襲いかかり、圧力で眼球や皮膚の毛細血管から赤ぐろい血が吹き出した。骨が軋んで折れ、意識が真っ白に白濁していく。


だが、アースは絶対に操縦桿を離さなかった。


「離さねぇ……! ここが……お前の墓場だぁぁぁッ!!」


砕けた重装甲のアームを、タイタンの漆黒の核へと力任せに叩き刺し、己の肉体と機体ごと敵の巨大な質量をその場に完全固定する。自分が生きて重力場を維持している「いまこの瞬間」しか、あの絶対防御を突破する手はないのだ。


「アース……! やめて、アース!! 機体が……あなたが壊れちゃうよぉぉっ!!」


照準モニター越しに、アースが血みどろになりながら絶叫する姿が映し出される。ルナの瞳からボロボロと涙が溢れ出し、悲痛な叫び声が通信機を激しく震わせた。


「撃て……ルナ!! 俺を……俺の背中を信じろぉぉぉッ!!」


アースの機体から解き放たれた極限の重力波と、ルナの超大型レールガンから溢れ出す膨大なエネルギーが、二人の愛と覚悟に呼応するように最高密度で交錯する。


地球と月。潮汐同期(タイダル・シンクロナイズ)の完全覚醒。


アースの命が放つ命懸けの重力場が、タイタンの誇る絶対不可侵の重力殻に、極小の「分子崩壊の歪み」を穿ち、漆黒の渦を一直線に切り裂く無二の射撃ルートを泥臭くこじ開けた。


「アース…… 信じてるわ……私はいつだって……」


ルナは涙を振り払い、両手で狙撃トリガーを限界まで押し込んだ。


二人の惹かれ合う引力波が極限まで高まり、吹き荒れる闇と焦土の世界を、蒼と白の光芒で染め上げる。


【極光潮汐貫通砲(タイダル・イグジスト)】――発射。


ズバババババババババババババアンッ!!!!


大気を一瞬で蒸発させ、重力そのものを置き去りにする極大の光の太矢が放たれた。


アースの機体のわずか数ミリ横をすり抜けた絶対貫通弾は、アースが命懸けで抉り開けた重力殻の亀裂へと一直線に突き刺さる。タイタンの内部へと侵入した光の矢は、超高密度の潮汐波による連鎖的な分子崩壊を伴って、その肉体の内側から爆発的に拡散した。


ドゴォォォォォォォォォンッ!!!!


疑似ブラックホールと化していたタイタンの脳、そして心臓――死を乗り越えて進化し続けた2つの核心が、二人の魂の共鳴エネルギーによって微塵切りへと砕かれ、空間の歪みごと木っ端微塵に消滅していく。


「ギ……ガ……アアアアアアアアアアッ……―――」


四度目の死。今度こそ完全なる撃破。

増殖も、耐性獲得も、細胞の再生すら二度と許さない絶対的な概念破壊が、巨神『タイタン』を完全にこの世から抹消したのだった。

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