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最後の一人になっても  作者: アルファベット・あき蔵
第04章:特殊戦術班_ギャンビット

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最終の一手

「我らの遺志を、この手に――!」


焦土と化した泥と血の街並みの中で、クイーンは激痛に痺れる手で、ナイトの高周波ブレードを左腕の壊れかけた装甲へ力任せにボルト締めし、ビショップの長距離照準スコープから露出した光ファイバーを、破れたバイザー越しに右目の網膜ディスプレイへ直接叩き込んで直結させた。


「ガアアアアッ……!!」


網膜を直接焼き焦がすような過電流の激痛。

吐血とともに視界が大きく歪み、世界がノイズと血の激しい赤色に染まり上がる。


だが次の瞬間、ビショップが命と引き換えに遺した高度な精度補正データが、青い演算コードの列となって起動した。


無差別に乱射される不可視の切断波。その僅かな空気の歪み、屈折率のわずかな差異、大気のミリ単位の圧力変化すらも、直結された右目に「完全な弾道線」として鮮明に浮き彫りとなる。


「見えた……ッ!」


背部スラスターが絶叫のような爆音を上げ、オーバーヒートの警報を無視して限界を超えた出力を吐き出した。


全方位への極超音速機動。大気を切り裂く切断波の幾何学的死角を寸分違わずすり抜け、かわしきれぬ一撃はナイトの残した近接ブレードで強引に跳ね返す。崩落するビルの壁面を蹴り、不規則な三角跳躍で死角へと滑り込むその軌道は、まさに泥臭く前線を押し通した亡きナイトの立ち回りそのものだった。


「ギ……ギギガガガッ!?」


カメレオンが焦燥に駆られたように全身を泡立たせ、表面から無数の光学結晶針を一斉に全方位へ放つ。全方位を埋め尽くす死の豪雨。もはや回避など不可能な密度の絶対死域。


クイーンは……逃げなかった。


「ここで……すべてを終わらせる!!」


彼女は回避行動を完全に捨て、正面から死の雨の中へと真っ直ぐ突っ込んだ。


ズバババババッ!!


光学結晶針がクイーンの強化装甲を容赦なく穿ち、肉を削り、骨を砕く。

右腕のフレームが途中で弾け飛び、左腹部を無数の結晶が貫く。激痛で視界が真っ白に染まり、意識が暗闇の底へと引きずり込まれそうになる。だが、彼女の足は止まらない。ナイトのように泥臭く踏み込み、その肉体をカメレオンの無数の刃の群れへ自ら深く貫かせ、楔として固定させた。


「な……ッ!?」


カメレオンの肉体が凍りつく。自らの攻撃を逆手にとり、肉体と装甲を楔(くさび)にして逃げ場を完全に塞がれたのだ。


「ビショップが角度を教えてくれた……! ナイトが距離を詰めてくれた……! そして、私が引導を渡す!!」


クイーンは左腕のブレードをカメレオンの核へ深く突き立て、残された右手のサブマシンガンを、直結されたビショップのスコープの指示通り、敵の脳と心臓が交差する唯一の幾何学的死角へ押し当てた。


「これが、私たちの……チェックメイトだぁぁぁぁッ!!!!」


ズドォォォォォォォォンッ!!!!


零距離からの全エネルギー瞬時過負荷解放。


高エネルギーの凄まじい爆炎が両者の存在を包み込んだ。

ナイトの剛腕のごとき粉砕力と、ビショップの狙撃のごとき精密穿孔が、クイーンの全軌道エネルギーとともに弾けた。


カメレオンの脳と心臓――二つの核が同時に、分子レベルで微塵に砕け散る。


「ギ……ガ……アアアアアアアアアアッ……―――」


異形は断末魔すら途中で途切れ、最後の死を迎えた。

細胞の無軌道な進化すら追いつかない完全なる崩壊。黒い肉体が、結晶の破片とともに一瞬にして灰となって崩れ去っていく。


爆煙が激しい風に流される。

そこには、跡形もなく消滅したカメレオンの残骸と、大量の過熱煙を吹き上げながら呆然と突っ立っているクイーンの姿だけがあった。


「はぁ……はぁ……っ……!」


膝を激しく震わせながらも、彼女は倒れなかった。

冷たい雨が、焼き付いた機体と、仲間たちの遺志を背負って生き残った最後の『クイーン』を静かに濡らし続けていた。

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