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最後の一人になっても  作者: アルファベット・あき蔵
第3章:特殊攻略班 _リアクター

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元素反応

「前衛、散開! キセノン、第一フェーズ起動!」


カーボンの怒号と同時に、スラスターの爆音を轟かせて『リアクター』の機体が弾け飛ぶように散った。


その直後、イージスの巨腕が振り下ろされる。ただの拳。しかし、表面にまとった絶対防壁の高密度エネルギーが、カーボンたちがコンマ数秒前まで立っていた地面を直径数十メートルにわたって消滅させ、激しい衝撃波が焦土を削り取った。


「了解……。励起(れいき)開始……ふぁ」


後方の解析機体から、キセノンのだるそうな声が響く。だが、その操作は精密機械そのものだった。

機体上部の巨大な照射砲が眩い紫白色に発光し、漆黒の戦場を一瞬で昼間のように照らし出す。


高電圧プラズマ光線——『キセノンアーク』。


指向性を持たされた高エネルギー粒子がイージスの巨躯を包み込む。ダメージを与えるためではない。プラズマの波長が防壁に衝突した瞬間、透過バリアのエネルギー循環周期と、分子レベルで存在する「コンマ数秒の密度の揺らぎ(隙間)」が、鮮烈な青紫色の幾何学模様となって表面に可視化された。


「見えた……。左脇腹、周期0.4秒ごとに分子結合がわずかに弛緩する……そこ」

「捉えた! フルオリーン、右から仕掛けろ!」

「任せて! 派手に行くわよ!」


フルオリーンが過熱した赤熱の機体を滑らせ、あえて右側からイージスへと突撃する。超高熱のプラズマブレードを振りかざす圧巻の強襲。


イージスは牙を剥き出し、右側からの脅威を排除せんとエネルギー防壁のリソースを瞬時に右半身へと偏向させた。ガチィン!と空間が歪むような鈍い重低音が響き、フルオリーンの刃は防壁の表面で虚しく弾かれ、火花を散らす。


「チッ、相変わらず硬いわね!」

「それでいい、誘い込まれた!」


イージスの防壁リソースが右に偏ったその瞬間、左脇腹の可視化された「隙間」ががら空きになる。

命懸けで敵の死角を前方に維持していたカーボンが、スラスターを全開にして左側面へ回り込んだ。


「ガリウム、今だ!」


「待ってたわよぉ……ッ!」


背後から飛び出したガリウムの機体が、狂気に満ちた歓喜の叫びをあげる。

彼女の機体から射出されたのは、数千発の微粒子アンカー。キセノンが見抜いた左脇腹のわずかな隙間へ、針の穴を通すような正確さで突き刺さった。


ガリウム特有の浸透性粒子兵器——『液体金属脆化(えきたいきんぞくぜいか)』。


装甲の隙間から侵入した粒子が、イージスの無敵を誇る高密度細胞および透過防壁の分子構造に瞬時に結合し、その結晶格子を内部から破壊していく。防壁のエネルギーが不気味な黒ずみを見せ、鉄が錆び落ちるように、あるいは豆腐のようにボロボロと崩れ始めた。


「あははははッ! ほら見て! どんなに強がっても、私に触れられたらみんなドロドロ! 脆くて惨めなゴミクズね!」

「調子に乗るな、ガリウム! フルオリーン、フィニッシュだ!」

「待ちかねたぜ、カーボン!!」


右側へのブラフを終え、即座に反転・跳躍していたフルオリーンが、上空から超高速で落下一閃。

彼女の全エネルギーを注ぎ込まれた超高熱兵器が、ガリウムによって内部から脆化し、防御力を失ったイージスの左脇腹へと突き刺さった。


「穿てぇぇぇッ!!」


ドバァンッ!!


限界を超えた高熱と強酸化反応が爆発的に膨れ上がる。

脆化した装甲を突き破った熱量が、イージスの肉体内部へと一気に侵食し、崩壊させ細胞を分子レベルで焼き尽くしていく。


絶叫すら上げる間もなく、絶対の防壁を破られた巨神の内部炉が暴走。巨躯の胸腔と頭部が、内側からの劇烈な爆発によって吹き飛んだ。


轟音と共に、肉塊と装甲の破片が焦土に降り注ぐ。


「……ハッ、案外大したことないわね!」


肩で息をつきながら、荒々しく笑うフルオリーン。


「あら、私の脆化が完璧だったからでしょう? 感謝しなさいよね」


クスクスと意地の悪い笑みを漏らすガリウム。


「……ふぅ。1回目、撃破確認。……でも、油断しないで」


後方でキセノンが低く冷ややかな声を挟む。

カーボンは破壊されたイージスの巨躯を見下ろし、操縦桿を握る手に力を込めた。


「ああ、分かっている。……本当の地獄は、ここからだ」


沈黙したはずの肉塊の山。

その中心部で、不気味な心拍音のように、朱色の細胞が激しく脈打ち始めていた。

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