表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
8/17

第七話

「俺が魔導士に…、だって俺の能力はゼロなんだろ? どうやってなるんだよ?」


俺がそう言うと、髭をいじりながら、おっさんは気だるそうに答えた。


「んー、まぁ、なんていうか……才能ない君でも? なれる? それが魔導師? みたいな?」


「ムカつくな……なんだよその、一昔前のチャラ男みたいな話し方は」


「なかなかじゃろ? 人間の世界をあらゆる時代で観察して身につけたんじゃ。お主、知っとるか? 腰パン」


「死語だぞ、それ。そんなの身につけんなよ」


呆れた俺をよそに、メラさんが苛立ったように口を開く。


「燃やされたくなかったら、話を聞け。お前にはまず、三ヶ月後に控えた魔法士認定試験を受けてもらう」


「えっ!? ちょっと待ってくださいよ。俺、魔法使えないんですよ?

どうやって試験受けろっていうんですか。それに俺は、志帆ちゃんにふさわしい男になるために来たんであって、別にこの世界で魔導師になろうなんて……」


「ごちゃごちゃうるさいな、小僧。調子に乗るなよ」


「え?」


その瞬間だった。


視界が赤く染まり、次の瞬間――右手が燃え上がる。


「うわああっ! 火が……!」


反射的に川へ飛び込む。

水に叩きつけられながら、必死に火を消した。


やっと炎が消え、顔を上げた、そのとき。


――白い光。


気づけば、俺は元の場所に立っていた。


「……え?」


服は濡れていない。火傷もない。


「たしかに……燃えたはずなのに……」


「やれやれ、今のはさすがに疲れたわい……」


おっさんの方を見ると、ぐったりと腰を下ろしていた。


「時間を戻したんじゃ。老体に無茶させんでくれ」


「ちょっとおじいさま! なんでこんなやつ助けるのよ」


メラさんが不満げに言う。


「なんでって……ここで死なれちゃ、連れてきたワシの立場が悪いじゃろうが」


おっさんはゆっくりと俺を見る。


「よく聞け、少年。魔法は誰にでも素質がある。もちろん、お主にもな」


「……」


「それを開花させるかどうかは、お主次第じゃ。ここに来た理由、忘れたわけじゃあるまい?」


――好きな人を振り向かせるため。


「魔導師の道は厳しい。じゃが、その分だけ価値がある。お主が思う理想に、きっと近づける」


(理想の自分……)


胸の奥が、少しだけ熱くなる。


(変わりたくて、ここに来たんだろ……)


「メラさん」


俺は顔を上げる。


「素質ゼロの俺でも、死ぬ気でやれば魔導師になれますか?」


「……」


一瞬、空気が張り詰めた。


「ええぞ、その目じゃ」


おっさんが嬉しそうに笑う。


メラさんは鋭い視線のまま、短く言った。


「それは、お前次第だ」


「……お願いします」


深く頭を下げる。


こんなふうに誰かに頭を下げたのは、いつ以来だろうか。



魔法とは、人間が持つオーラ――すなわちエネルギーを実体化したものらしい。


個人の性格や性質によって魔法は変化し、適性は実際に見てみないとわからないという。


「手を出せ。魔法の性質を見てやる」


「……はい」


正直、また燃やされるんじゃないかと怖い。

だが、そんなこと口にできる空気ではなかった。


メラさんが呪文を唱えると、俺の手が白く光る。


「おお……これが魔法か……」


「……なんと」


おっさんが立ち上がる。


メラさんも、わずかに目を見開いた。


「どうしたんですか?」


「お前、この魔法……」


「F素材の光魔法とは、面白いやつじゃのう」


おっさんが楽しそうに言う。


「いや、だからそれ何なんだよ。いいってことか?」


「当たり前じゃ! ワシと同じじゃからな!」


「…………」


正直、判断に困る。


ふっと、メラさんが笑った。


「どうやら、ただのゴミではなさそうだな」


「だから、ちゃんと説明してくださいよ」


「光魔法と闇魔法は“特殊魔法”だ」


「特殊?」


「私のような火や水、電気といった個性魔法は、その性質の力しか使えない」


メラさんは腕を組む。


「だが光と闇は違う。制限はあるが、他の魔法も扱える」


「……つまり?」


「万能型だ」


「チート魔法ってことか……」


「チート?」


「いえ、なんでもないです」


「……明日から訓練だ」


「え? 今からじゃないんですか?」


「ここでは限界がある。それと――」


メラさんは俺を指さす。


「少し魔力を与えておいた。街に出ても不審には思われないはずだ」


「あ、ありがとうございます」


「今日はもう帰れ」


おっさんが右手を向ける。


「いや、だから帰るってどこに――宿も取ってないんですけど」


その言葉を言い終える前に。


視界が白く弾けた。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ