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第六話

ワイワイ――いや、ブヒブヒという奇妙な声で意識が戻った。

首元がチクチクする。藁が刺さっているらしい。


「……ここは?」


お決まりのセリフをつぶやき、目を開ける。

そこは小屋のような場所で、俺は大量の藁の上に寝転がっていた。


ブヒッ、ブヒヒッ。


「おわっ!? え、ブタ小屋!? なんで…」


状況が理解できず、とにかく“おっさん”を探そうと小屋を飛び出した。


外は木々と草に覆われ、さらに先には眩しく光る川が流れている。

目を凝らすと――見覚えのある背中があった。


「おい! おっさん! なんで俺がブタ小屋なんだよ!」


振り向いた男は、泣きそうな顔で言った。


「お、おお……やっと起きたか……!」


竹口だった。


「あ、やっぱその体のままか。

いや竹口までつれてくることはないだろ!」


「その体のままってどういう意味だよ! 締まってるだろ?俺だって腹筋してんだぞ!」


話が噛み合わない。


「いや……え? 本当に竹口なのか?」


「他に誰がいるんだ。お前こそ頭でも打ったんじゃねぇの?

ホーリー、俺全然記憶がないんだ。状況から察するにやっぱり俺ら、誰かに連れてこられたのか?」


「え、お前は“おっさん”じゃなくて?」


「しつこいな! おっさん? 俺ら同級生だろ!」


「……え?」


いや待て、じゃあ俺を連れてきたあの髭のおっさんは?


「なぁ竹口。白髪で、髭生えてて、自分を魔法使いとか言う変なおっさんいなかったか?」


「いねぇよ。あ、もしかしてそいつが俺らを誘拐した犯人か?」


「ま、まあそんな感じだけど……」


竹口は拳を握った。


「ゆるせねぇ……!

カラオケ店の前で気づいたらここだったんだぞ!?

宮上も一緒だったのに……!」


「そ、そうだよな。ゆるせねぇよな……」


(すまない、竹口。カラオケの記憶がないのは俺のせいでもあるんだ)


キョロキョロしていると――


「おーーい!」


聞き慣れた声。振り返ると、おっさんが手を振って近づいてきていた。


「おっさん!!」


「なに!? こいつが犯人か!?」


竹口が俺を止める。


「待て! 一人じゃ危ないだろ! 俺達は協力して――」


「違うんだ竹――」


説明しようとした瞬間、竹口が前に立ちふさがる。


「おい誘拐犯! 目的はなんだ!

うちの家は普通の公務員家庭なんだぞ! 金なんかねぇからな!」


「違うんだ竹!!」


だが、おっさんが右手を向けた。


「すまんの。おぬしはもう帰ってよいぞ」


竹口の体が白く輝き――消えた。


「竹口!! おっさん!竹口になにしたんだよ!」


「元の世界に返しただけじゃ。布団の上で起きるようにしておいた。

あの男のことじゃ、夢だったと思うじゃろう」


「…………ならいいけど。

で、ここはどこなんだ?」


おっさんは長い髭を撫でながら言った。


「ここは魔法の国――ラジタニアじゃ」


「魔法の国ラジタニア……

で?こんなとこで目を覚ました俺は、なにをすれば?」


「すまんの。ウチのもんは人間に慣れておらんくてな。

お主を街に呼んだら殺されると思って、おもてに呼んだんじゃ」


「物騒だな……。こんなんで修行できるのかよ」


「大丈夫じゃ! 特別講師を呼んでおる」


パンッと手を叩いた。


赤い光が目の前を照らす。


光が収まると――

スラッとした長身、赤い髪、鋭い目、そして暴力的なまでの胸を持つ美女が立っていた。


「!!?」


女王様みたいだ……!


「おじいさま。教える子って、この者ですか?」


俺のほうが身長は上のはずだが、なぜか“見下ろされて”いる気がした。


「そうじゃ、頼んだぞ。メラ」


メラと呼ばれた美女が俺を値踏みするように見てくる。


だが俺の頭の中は、彼女の胸のことでいっぱいだった。


(でか……D? いやこの感じはE……いや、まさか……)


「Fね」


「え?」


「まぁ、そうじゃろうな……」


おっさんがガッカリした顔でうなずく。


「まさか……心の声を読んだのか!?」


「心の声? なにそれ。

貴様の“魔法素材”がFってことだ」


手に炎をまとわせながら睨んでくる。


「F素材の分際で生意気だな。燃やすぞ?」


「ちょ、おっさん!説明してくれ!」


「魔法素材Fは最低じゃ。魔法の素質ゼロという意味じゃ」


「そりゃそうだろ、人間なんだから。

てかこの人なに!? 俺を燃やす気満々だけど!」


「F素材のゴミが喋るな」


メラが炎を強めると、おっさんが手を上げた。


「そのへんにしておけ」


ようやく炎が消える。


「……助かった……」


「メラはわしの孫でな。魔法士官学校の教官じゃ。

お主を鍛えるにはちょうどええ」


「孫!? 顔も胸も色気も全部違いすぎだろ!

てかこの人も魔導師なのか?」


メラが鋭い目で言い放つ。


「おい貴様、魔導師がそんな簡単になれると思うなよ」


ため息をつきながら説明を始めた。


「この国には、下級から上級まで魔法士がいて、魔導師はその上級の中でも特化した者のみがなれる。

そして、さらに上に“聖魔導師”がいるが、国に数人しかいない。

おじいさまはその聖魔導師の一人だ」


「……つまり、おっさんがめちゃくちゃ凄いってこと?」


「やっと理解したか。鈍い奴め」


おっさんはご満悦だ。


「そんな人に俺が……?」


メラが顎を上げ、告げた。


「まぁいい。おじいさまの頼みだ。

頭も顔も悪そうな貴様を鍛えてやる」


「へ? 鍛えるって?」


そして――その言葉が落とされた。


「お主は魔導師になるんじゃよ」


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