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第二十一話

目を開いていても閉じているような、そんな感覚だった。


宮上の話しによれば、志帆ちゃんのお父さんが会社をクビになり、その後事故にあい救急車で運ばれたと聞いたのは一時間前のことだ。

そのあとも宮上から何度も着信があり、志帆の側にいてほしいとお願いされたが、俺は断った。

なぜなら、こうなった原因は俺にある気がしたからだ。こんな未来を俺はしらない。つまり、俺が変えた過去によってこの未来が生まれている。これ以上、余計なことをして未来を変えられない。


「なんでこんなことに……」


口に出しても答えなんかわからない。


小学生の頃、スポーツや勉強で結果がでない生徒にたいし、担任は決まり文句のように言っていた言葉がある。

「真っ暗なトンネルでも、ひたすら走るといつかは明るい出口にたどり着く」「やまない雨はないんだ」いずれも、暗いできごとは、ずっとは続かないという意味で使われていたが、果たして本当にそうなのだろうか、と花火の残響を感じながら、明かりのない自分の部屋で考えていた。

外に光がなかったら、トンネルを抜けても暗いままだし、雨がやんだあとも大抵、空は曇っていて明るくはならない。

どんなに頑張っても、いい未来になんてきっとならない。

俺がしてきたことは、明るい未来にむかっていたようで、実は暗い未来を作っていたのではないかと後悔や罪の意識を募らせる。


「俺のせいだ…… 俺はなんてことを……」


目から涙がこぼれる。


「なにをうじうじしておる!」


「おわっ、おっさん!?」


おっさんの突然と登場に飛び起き、慌てて電気をつける。


「やはり、こっちの光はうっとうしい光じゃ。文明が退化しておるな」といって眩しそうに顔を歪めている。


「いつから来てたんだよ?」


「今回の事はお主のせいじゃないぞ。そして、あのおなごの父親は無事じゃ」


いつからいた、という質問には答えず、それどころじゃない俺の心を察したようにおっさんは言った。


志帆ちゃんのお父さんが無事だときき、心が少し軽くなるが、俺のせいであることに変わりはない。


「俺のせいだよ……。 でもそうか…… よかった」


なぜおっさんがそんなことを知っているのかはわからないが、とりあえずは安心した。


「お主がうじうじしてもなにも変わらんぞ? これ以上考えるでない。それより、もう、準備はよいか?」


「準備? なんのだよ?」


「お主はこれから、合宿じゃ。はよ連れていかんとメラに怒られるんじゃよ」


すっかり忘れていた。もうそんな気にはなれない。


「…… 俺はもういいよ。異世界にはいかない」


「なにを言っておる。お主はまだ魔法士にもなっていないのだぞ?」


「いいんだよ。魔法士なんて俺にはもうどうだっていい」


「…… ここで、終わらせるんじゃな?」


「うん、いくら頑張ってやりなおしても結果はよくならないってことが今日わかったんだ」


「何を言っておる。お主の未来はお主がきめるんじゃ。今の未来で本当にいいのか? あのおなごを振り向かせたいじゃろ?」


「もういいんだよ! 俺が自分の都合で未来なんて変えちゃいけなかったんだ」


怒鳴るようにおっさんにそういうと、髭をさすりながら、残念そうな表情を見せる。


「そうか…… じゃあ、そこで一生腐っとれ」


「……」


そういうと、おっさんは光とともに姿を消した。


「これ以上、どうしろってんだよ……」


次の日、学校に行くと志帆ちゃんの姿はなかった。宮上も暗い表情をしている。


机に顔を伏せている竹口に話しかける。


「竹口! 昨日はごめんな。色々あってさ」


「話しかけるな……」


「え?」


「俺はもう、お前とは親友じゃない」


「どうしたんだよ。花火に行けなかったこと、怒ってるのか?」


「違う。なんで側にいてあげなかったんだ……」


「え……」


「志帆ちゃんの側にだよ。お前は志帆ちゃんのことが好きなんだろ? それなのに、どうして辛いときに側にいてあげなかったんだよ」


「そ、それは……。俺だって色々あるんだよ」


「好きな人のピンチに現れないお前はもうヒーローじゃない。ただの腰抜けだ」


腰抜けと言う言葉をきき頭に血がのぼる。


「なんだよ……。なにも知らないくせに」


「…… 知りたくもないね」


(ちがう……)


「いつも能天気なお前と違って俺は色々考えてんだよ!」


(こんなんじゃない…… )


俺が思い描いた未来はこんなんじゃない。


教室が静まり返り、視線が集まる。

竹口が顔をあげ、視線を向けると「がっかりしたんだ……」と辛そうに言った。


何もかもが崩れていく。


(なにもなんでこんなことに……)


「くそっ」


俺は教室を出た。もうなにも考えたくない。


外に出ると花火の名残を消すかのように雨がふっていた。


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