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第十九話

「かっこよかったよお前」


光が開けると教室にいた。竹口が手を高々とあげ手のひらを向けている。


「え? 竹口? マリルは?」


「誰だそれ、外人さんか? そんなことよりハイタッチだよ!早くしろよ!恥ずかしいだろ?」


「あ、ああ」


俺は竹口とハイタッチをして席につく。状況を整理しようと、後ろを振り返り、竹口に確認する。


「なぁ、竹口……」


「おい、前むけよヒーロー、先生きてんだろ」


「ヒーロー?」


「あの不良の矢鍋を倒したんだから、お前はもうクラスのヒーローだ。ヒーローの力で俺をハーレムにしてくれよ」


「無理だ」


ようやく状況を理解する。どうやら、俺はおっさんの魔法で元の世界に帰って来たらしい。そして、今は矢鍋を倒した直後だろう。じゃなきゃ竹口がこんなに浮かれているはずがない。


ホームルームが始まると、普段の日常が始まった。危険もなければ、魔法もない。なんだか懐かしい気分になっていた。


俺の日常ってこうだったよなと、平凡を取り戻した想いにふける。


ホームルームが終わり、竹口は一日の授業が全て終わったかのようなテンションで俺に話しかける。


「やっとおわったー!なぁ、ホーリーお前どうしちまったんだ?」


「え? なにが?」


「なんていうか、お前の朝の行動はお前じゃないっていうか」


「何言ってんだよ」


「うまく説明できないんだけど、まるで、矢鍋がくるのをわかってたような…… いったいどんな魔法使ったんだよ?」


大きくは外れていない竹口の直感に戸惑った。

こいつは昔から変なところで感がいい。


「ば、ばか言うなよ。そんな魔法あるならとっくに使ってるよ」


「ま、それもそっか」と竹口はすぐに納得し、話題を変える。


「なぁ、ヒーロー」


「その呼び方やめろよ。普通でいいよ」


「そっか? カッコいいじゃん。ホーロー」


「混ざってんじゃねぇかよ。いいから普通に呼べよ。そんなことより、なんか言おうとしてなかったか?」


「そうそう!お前、今日が何の日か知ってるか?」


「今日? お前の誕生日だっけ?」


忘れるわけない。今日は……


「花火大会だよ! いくだろ?」


「いや、無理だろ…… 俺告白しちゃってフラれてるし……」


「おいおい、今朝のお前はどこいったんだよ?」


「ここにいるよ」


「なぁ、頼むよ。俺も梨華ちゃん誘いたいんだ。お前と桜田が一緒に来てくれるほうが可能性あがるだろ?」


俺はふと、竹口があの日花火大会にいなかったことを思いだした。だとすると……


「誘っても無理だとおもうぞ?」


「いいや、そんなことない。だって、カラオケはきてくれただろ?」


(たしかに……)


「明日はなにか用事があるんじゃないか? 流石に急だろ」


「それなら、それで仕方ないからお前といくよ」


「は? なんでだよ! 嫌だよ」


「なんだよ。いいだろ、親友なんだから。それに、青春の一ページに友達との花火はつきものだろ?」


わけがわからない。


「それじゃあ、俺と志帆ちゃんの花火はどうなるんだよ?」


「お、誘う気になってくれたのか?」


「え、いや……」


「大丈夫だよ!今のお前ならいけるって!」


結局、竹口の話に乗せられて俺は志帆ちゃんを誘うことになった。


「わかった、じゃあ放課後言ってみるよ」


「本当にありがとう。じゃあ俺も梨華ちゃん誘ってみる! 付き合ったら真っ先に報告するよ」


そんなことにはならない。


「ああ、楽しみにしてるよ」


そこから通常の授業がすすんだ。空は青々と晴れ、肌を撫なでる優しい風が夏の匂いを運んでくる。

俺は何とも言えない、穏やかで平和な日々を噛み締めていた。

このまま、平和に一日が終ると思い込んでいた。しかし、事件がおこる。


昼休みに入り、竹口が女子の魅力について熱く語っていた。


「やっぱ、冬のタイツよりも夏の生足だよな。スケールが違うよ」とよくわからないマニアックな質問をぶつけてくる。


俺はこんな会話してたのかと自分自身嫌になってくる。だが、男として親友の質問にははっきりと答える。


「気持ちはわかるけど、タイツはタイツで無限の可能性を秘めてるからな。あれは魔法だよ」


「どんな魔法だよ」と竹口は笑う。


実に馬鹿っぽい会話だが、この時間が楽しかったりもする。


昼休みも半分が終わろうとした頃、よう!と目の前にさわやかな汗をかいた秀人が現れる。


「あ、秀人……くん 」


「な、なんだよ」竹口はなぜか、威嚇している。


「いいだろ? 俺も混ぜてくれよ。何の話ししてたんだ?」


「お前にはわかんない会話だよ」と竹口は警戒心を強めている。


確かにわからないだろう。わかりたくもないが正解だと思うが……


「そうハブにしないでくれよ。あ、そうだ桐島ってなんか部活やってんの?」


「おれ? いや、やってないけど……」


「じゃあさ、俺の相方としてアメフト部入らないか?」


「え?……」


「お前みたく根性あるやつが入ってくれると俺も嬉しいんだけどな、考えてみてくれよ」


人に評価されたことが少ない俺は、誘われたことを素直に嬉しく思っていた。


「ありがとう。でも、俺は……」


竹口が声を張り上げる。


「だめだ!ホーリーは俺の相方なんだ!それに、俺とホーリーはそんな暇ないんだよ」


「そんな暇ないって、バイトでもしてるのか?」


「そんなのするかっ、俺とホーリーは今日の花火大会の打ち合わせをしてるんだ」


「え!? 花火大会あんの? マジで? 俺もいく!」


秀人は驚き、好奇心をおさえきれない子供のような反応をする。


「な、なんだよ。関係ないだ……」


竹口が秀人の勢いにおされていると、宮上が秀人の後ろから顔を出す。


「おつかれー!珍しいメンバーで話してんじゃん!あ、桐島!あんた今朝、カッコよかったじゃん。でも、志帆って本当不思議だよね。だって昨日は……」


「宮上! そ、そういえば竹口が話しあるらしいぞ」


宮上はきっとカラオケ店でのことを言おうとしたのだろう。それに気づき無理矢理話題をそらす。


「り、梨華ちゃん!き、きょう……その……」


竹口は予想外の宮上の登場にあたふたしていた。


秀人が、あ!と声を上げる。


「そうだ! 今日花火大会あるらしいんだけど、宮上一緒に行かないか?」


まさかのじたいに「えっ!?」と声がでてしまう。


竹口を見ると放心状態になっている。


「え? うちと? いいの? 秀人君部活忙しいんじゃない?」


宮上は今まで見たことのない表情をしていた。体をもじもじさせ、恥ずかしそうにしている。


タイツか生足の話題をしている時の幸せそうな竹口はもういない。まさに天国から地獄に堕おちたような落差だ。


「部活早めに終わらせるから、そのあと行こうぜ!」


「うん、じゃあ教室で待ってる」と宮上が言った瞬間、竹口は立ち上がる。


「竹…… 口?」


宮上や秀人も驚いている。


「ちくしょう!!」


竹口は教室を飛び出した。


「竹口!!」と俺は叫んだが、今の彼に聞こえたかはさだかではない。


ここまで読んでいただきありがとうございます。

今回の作品は二度目の投稿となっています。

個人的に読み直したら面白かったので、以前投稿していたのを、読みづらい箇所を改稿して読みやすくして再度投稿してみました!

この作品はこの話をいれて後5話で終わらせようと思ってます!

ここまで読んでいただき本当に感謝です。


次作を出したさいには、もっと面白くなるように精進しますので、また見かけた際は立ち寄って読んで貰えると嬉しいです!

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