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第十一話

グラウンドには、メラさんと職員たちが並んでいた。

どれも一目で分かる――強者だ。


中央には炎の線で囲まれた正方形。まるで闘技場だ。


「これより、魔法士対抗戦を行う!」


メラさんの声が響く。


「順番は決めていない。戦いたいやつから前に出ろ!」


その瞬間――


「おお!」


ゼファルドが躊躇なく前に出た。


やっぱりな。


そう思った直後、


「おい! 人間! てめえも来い!」


……来た。


逃げるわけにはいかない。

俺は渋々、リングへ向かった。


真正面に立つ。


近くで見ると、異常だった。


(デカすぎる……)


身長は二メートル以上。体格は二回り以上違う。

まるで化け物だ。


「ぐちゃぐちゃにしてやるよ」


声が出ない。


怖い。


喉が締まる。


「よし、始めろ!」


合図は、それだけだった。


ルールも説明もない。


(……公開処刑じゃねぇか)


次の瞬間――


ゼファルドの体が黒く染まる。

光沢を帯び、まるで金属のように変化していく。


「ちょ、ちょっと待――」


言い終わる前に、


衝撃。


(――っ!?)


腹に、何かがめり込んだ。


理解するより先に、体がくの字に折れる。


遅れて痛みが来る。


「が……っ!」


息ができない。


気づけば、ゼファルドの拳が俺のあばらに食い込んでいた。


まるで鉄球だ。


そのまま地面に崩れる。


「どうやって紛れ込んだか知らねぇが――」


背中に拳が落ちる。


一撃、二撃、三撃。


「人間の分際で、ここに来てんじゃねぇよ!」


「ぐっ……!」


体が跳ねる。


(やばい……)


「こ、殺される……」


思わず口に出た。


「ゆ、許して……ください……」


地面にしがみつきながら、命乞いをする。


だが――


「はぁ?」


ゼファルドは笑った。


「やめるわけねぇだろ」


拳がさらに重くなる。


意識が削られていく。


――もう無理だ。


そのとき、


「……そろそろ止めるか」


メラさんの声が遠くに聞こえた。


(助か……る……)


意識が落ちかけた、その瞬間――


「おい! お主はそれでいいのか!?」


別の声が割り込んだ。


(……おっさん? どこにいる?)


視線を声のする方へ向けると、おっさんが何かを叫んでいた。


周りの生徒達は不審がって距離をとっている。

どうやらおっさんの正体をしらないらしい。


「このまま戻っても、またフラれるだけだぞ!」


ざわめきが広がる。


「ワシはお主の世界を見てきた!」


……何を言ってる?


思考がぼやける。


「お主がボコボコにされたのはな――」


一瞬、間があった。


嫌な予感が走る。


「桜田という娘が頼んだからじゃ!」


「……え」


「矢鍋という男に頼んだんじゃ! お主に諦めさせるために!」


頭が真っ白になる。


「つまり――」


やめろ。


「お主は最初から嫌われておったんじゃ!!期待持たせてすまん!!」


笑い声が広がった。


乾いた笑い。


遠くの音のように聞こえる。


(……ああ)


そうか。


「なんだよ、それ……くそ」


力を振り絞って立ち上がる。


「じゃあ、やり直してもどのみち……フラれんじゃねぇか」


「まだやるのか?」


ゼファルドが呆れたように言う。


「死ぬぞ?」


「うるせぇ」


もう、どうでもいい。


全部が馬鹿らしい。


異世界に来て、殴られて、

好きな子には最初から嫌われてた。


「……ほんと、最悪だな」


顔を上げる。


「おい、おっさん」


「なんじゃ」


「こいつ倒す魔法、あるか?」


「……ある」


一拍置いて、おっさんが言う。


「お主はもう使える」


「……は?」


「集中せい。魔法の流れを感じろ」


――集中。


目を閉じる。


……なにかが流れている。


体の中を巡る、光。


それに触れた瞬間――


体が光った。


「なっ!? 光魔法だと!?」


周囲がざわつく。


「やっとか」とメラさんの声が聞こえ、刺激的なメラさんが視界に入る。


「そのまま一点に集めろ!」


一点――


集中……


……ん?


(さっきのメラさんの服……)


一瞬よぎる。


――光が、下に集まった。


「……っ!?」


「ぎゃはははは!」


爆笑が起こる。


「てめえ、ふざけてんのか!」


ゼファルドがキレる。


「くっ……!」


慌てて拳に意識を集中させる。


(これ外したら終わりだ)


体力は、もうない。


一発だけ。


ゼファルドが拳を振り上げる。


「死ね、人間!」


「今じゃ! 打て!」


――踏み込む。


拳を突き出す。


光が弾けた。


直撃。


ゼファルドの体が吹き飛ぶ。


そのまま地面に叩きつけられ、動かなくなった。


静寂。


「……うむ、まぁまぁじゃな」


おっさんの声だけが響く。


周囲は、誰も動かない。


ただ、俺を見ていた。


「……勝った?」


「すごい! 新人君!」


マリルが飛びついてくる。


「ああ……」


力が抜ける。


「ありが――」


言い終わる前に、膝が崩れた。


「新人君!」


視界が暗くなる。


そのまま――


意識が途切れた。

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