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迷い猫系年下男の甘い誘惑がとまらない!「お礼は身体で返すよ」甘い牙を隠した美青年に執着されるカフェ店長の話  作者: はなたろう


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12/21

12話 知らないソラの顔

数日後の定休日。



俺は新しいコーヒーカップを買うため、少し遠出をしていた。



馴染みのアンティークショップは、先代のオーナーに教えてもらった場所だ。

気のいい店主との会話も楽しく、穏やかな時間が流れる。年代物のカップをいくつか見つけ、俺は束の間の満足感に浸っていた。



春の陽射しが心地よい。


桜はすでに散り急いでいたが、代わりに萌え始めた新緑がきらきらと眩しく光っている。



オープンテラスのあるカフェで、のんびりしてから帰ろうか。そんなことを考え、反対側の通りに目をやった。


そのときだ。



「……ソラ?」



最初は、見間違いだと思った。


全身を黒ずくめで固め、フードを目深に被っている。数時間前まで、俺のベッドで丸くなって寝ていた男とは、まるで別人のような鋭い気配を纏っていた。



俺は無意識のうちに、ソラの後を追っていた。



ソラは人通りの少ない路地を抜け、歓楽街の一角へと入っていく。


まだ明るい時間帯だというのに、通りにはネオンの残光が滲み、安っぽいアルコールと香水の匂いが混じって漂っていた。



この街の住人のように手慣れた足取りで、ソラは迷いなく進む。


キャバクラの店先でタバコを吸っていた男が、ソラに向かって「よう」と親しげに声をかけた。ソラは軽く手を上げ言葉を返す。



どう見ても、堅気の人間ではない風貌の男と、あまりに自然に接している。



確かにソラは『夜の店で働いていた』と言った。


それはもう終わった過去の話だと思い込んでいたけれど、同居して3ヶ月。俺はソラのことを何ひとつ知らないままだ。



ソラは古びた雑居ビルの前で立ち止まると、そのまま外階段を上っていった。


2階のドアが開き、中から黒服の男がソラを出迎える。何やら親密な挨拶を交わすと、男はソラの肩を抱くようにして中へと招き入れた。



ソラの姿が見えなくなると、俺はビルの正面へと回り込んだ。



『2階 LUNATIQUEルナティーク



看板にはそう記されている。

俺はすぐにスマートフォンを取り出し、その店名を検索した。



『メンズエスコート』『恋人代行クラブ』『貴方だけの最高の夜を演じます』



どぎつい宣伝文句が画面いっぱいに並んだ。


スクロールする指が、真実を拒絶するように震えた。



ソラの無邪気な笑顔の裏に隠された、もうひとつの顔。

それが、俺の平穏な心を激しく揺さぶった。

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