第十二章 ① 集結(食事会)
所沢市・緑町。
赤煉瓦ベル。
今日は凛花とノア主催の『お食事会』だ。
数人の龍神たちが招待された。
まずは呂色九頭龍神在狼コン太。
そして黄金龍王トールと緋色龍神ミュウズ(夫妻)。
さらに富士五湖の『乱波五大龍神』がやって来た。
コン太は可笑しくなって頬を緩めた。
激レア龍神が激セマ部屋に大集結している。
ぎっちぎち、ぎゅうぎゅうだ。
心なしか酸素が薄いように感じる。
ノアの『パパン』黄金龍王トール。
キラリ、金髪のオールバック。
ギラリ、眼光は鋭い。
人間の姿はかなりのイケオジ(イケてるオジサン)だ。
多くの龍神や神々からの信望厚い。
威風堂々。
大人の風格漂う人格者である。
ノアの『ママン』緋色龍神ミュウズ。
黄金色を帯びた茜色の膚と瞳。
当然ながら容姿端麗! スタイル抜群!
性格はスッキリサッパリしている。
内面ブラボー!
容貌ビューティフォー!
要するに百点満点の美龍である。
富士五湖の乱波五大龍神。
彼らは強靭強面ムッキムキ!
ちょい悪オジサン集団である。
いかつい彼らの個体能力値は極めて高い。
しかし荒っぽくて気難しい。
それゆえ大変扱いにくいのである。
パンッ! パンッ!
コン太が手を叩く。
一同の注目を集める。
そして興奮気味に語り出す。
「いやはや、いやはや!
あの日は感動したよ!
シャキーンッ!
重い瞼を開けたのは伝説の緋色龍神!
青木ヶ原の樹海からその姿を現した!
キラキラキラッ!
富士の山には降ったばかりの秋雪が煌めいた。
ヒュルーンッ!
西湖には幾つもの虹が架かった。
湖上で乱波が『龍の舞』を演舞した。
そうして緋色龍神ミュウズの目覚めを歓迎したんだ。
それはそれは見事で圧巻だったよ!」
凛花は絶佳たる風景を想像して詠嘆する。
「いいなあ!
その景色、私も見たかったなあ……」
ミュウズは麗しく微笑む。
「あの日。
黄金龍王から波動メッセージが送られてきたの。
そろそろ目覚めよ、って……。
昼寝のつもりが何年か経過していたみたいなの。
どうやら寝すぎたらしいわ」
コン太と乱波は頷いて笑う。
「確かに寝過ぎだねえ!」
「寝すぎ、寝すぎ!」
ミュウズは凛花の耳元に囁く。
「ねえ凛花、ノアは気が強いから大変でしょう?
ずっと一緒に居ると気を遣って疲れるんじゃない?
大丈夫?」
凛花は目を見開いた。
「ええっ?
そんなこと考えたこともなかった」
ノアは頬を膨らます。
「もうっ、ママったら!
いつまでも子供扱いしないでよ!
家事はきちんと分担しているんだから!
料理は凛花に任せちゃっているけど……」
「ふふ。ノアは家事全般なんでも得意ですよ!
それに財団運営は任せきりです。
家賃や生活費も折半してくれています。
とても思慮深くて申し分のない女性です」
ノアは得意げだ。
「ほらっ、聞いた?
ママは心配しすぎなのよ」
「あらそう?
だけど驚いた。
クールなノアが龍使いと深い信頼関係にあるなんて、ね?」
「安心した?」
「ええ。嬉しいわ。
だから余計に……。
凛花の幼少期を影像透視したとき怒りに震えたわ。
危うく富士山を噴火させてしまうところだったわよ」
ミュウズは茶目っ気たっぷりにウインクする。
凛花の頬をそっと撫でた。
凛花は嬉しくて堪らない。
緋色龍神ミュウズ……。
なんて素敵な女性なのだろう。
コン太から聞かされていた通り。
クレオパトラもビックリ仰天の美しさだ。
包み込むような柔らかな優しさはノアとおんなじだ。
一瞬で大好きになった。
コン太はしびれを切らす。
「ねえ、おなかがすいたよ!
すぐに食事会を始めておくれよ!
凛花のお手製料理を食べさせておくれよ!」
テーブルに盛りだくさんのごちそうが並んだ。
ジャジャカジャーンッ!
本日の夕食メニューはこちら!
乱波リクエストの甲斐サーモンの太巻き寿司(てんこ盛り)。
甲斐サーモンのマリネ(てんこ盛り)。
さらには野菜たっぷり鶏ちゃん焼き(大盛)。
平べったい五平餅(大量)。
姿勢を正して両手を合わす。
「いっただっきまーす!」
ワッシワッシ!
ワッシワッシ!
「ごちそうさまでした!」
……わずか三十分。
あっという間にすべてを平らげた。
黄金龍王が穏やかに話しかける。
「凛花、少し頑張りすぎていないかい?
早朝まで『是契約者』と鬼ヶ城の浜辺で過ごすだろう?
それから大学での講義。アルバイトもある。
身体が心配だよ……」
凛花は応える。
「わあ、すみません!
トールパパに心配させてしまいました。
だけど大変だと感じたことは一度もありません
ノアがいつも支えてくれているので大丈夫です」
「そうかい?
くれぐれも無理をしてはいけないよ」
「ありがとうございます!
だけど本当に全然無理なんかしていません。
ノアとコン太のお陰で毎日が楽しくて幸せです」
「それならいいが……。
凛花は龍神界にとって大切な家族だからね」
ノアとミュウズは笑い合う。
「パパがこんなに人間に優しいなんて……。
驚きね」
「本当ねっ!
凛花だけは特別みたいね」
ミュウズは改まって告げる。
「凛花、娘と仲良くしてくれてありがとう……。
ノアに家事をもっとやらせてね?
生活費をたくさんもらってね?」
凛花は瞳を潤ませる。
「私にとって重要なのは。
ノアの存在そのものです。
家事とか生活費とか。
そんなのどうだっていいんです。
いつもノアから慈愛をもらっています。
いっぱい過ぎて溢れて多すぎるくらいです。
トールパパ、ミュウズママ!
ノアをこの世に誕生させてくれてありがとう!
ノアと出会えて良かった!
龍神界の家族に迎えていただけて本当に幸せです!」
トールとミュウズは目頭が熱くなって涙ぐむ。
ノアは胸がいっぱいになってしまった。
堪えきれず大粒の涙を落とした。




