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決断のとき

とても長くなったので、分割するために中途半端なところで切れてしまいました。ご了承ください。

それと、今回は展開が少し暗くなりますが、これ以上暗くならないので心配はいりません(≧▽≦)






 それから、重い荷物を全部持たされたまま家まで歩いて、妹が玄関の鍵を開け、扉を開いた────その、瞬間だった。


 「ただい、っ! え、エリー‼︎」

 「遅いぞっ‼︎‼︎ 時間になっても帰ってこんから、置き去りにされたと思ったではないかぁっ‼︎‼︎‼︎」


 音を聞き付けたエリーが居間から出てきて涙を撒き散らしながら猛然と走ってきた。

 足を止めるような気配がないことを察知した俺は咄嗟に荷物を離して、両手を広げる。

 そして、予想を裏切らず、エリーは板の間の端で飛んで、玄関に入った俺に向かって大の字で飛びかかったが、それをどうにか受け止めることができた。


 「すまんすまん。買い物をしていたら、思った以上に時間がかかったんだ」


 むんず、とコアラのように抱きついてきたエリーに、あやすように言った。

 ………………………………もう、こいつは神じゃないよな……………………だが、可愛いから許す。


 「そうなの。ごめんね、エリー」

 「ぐ、ぐずっ…………わ、妾は心が広いからな…………許す」

 「ありがとよ」


 横から妹が頭を撫でられながら、涙声で強がるエリーに一切ツッコミをせずに、言った。

 ……………………この世界はこんな神に運営されていたと思うと、かなり不安になってきたんだが。


 「ねぇ、その子誰? 新しい妹?」


 と、思っていたら、後ろから何がなんだかわかっていないようである里見が訊いてきた。その後ろでは、リーナが目を見開いたまま固まっていた。


 「違う」

 「えっ……………………じ、じゃあ……………………」

 「だ、ダーリン……………………っ」


 素直に答えたらなぜか、二人は宇宙人に遭遇したような驚愕の表情を浮かべて俺と妹の間で視線を行ったり来たりさせた。


 「? こいつは俺が話したかったことに大きく関わるやつだから、先に上がってくれ。夏海、エリーを頼んだ」

 「わかった。こっちおいで、エリー」

 「うむっ」


 荷物を持つために、エリーを妹に託す間も、なぜか二人はそれを続けていた。


 「こやつらは何者じゃ?」


 その二人の存在にようやく気付いたエリーが、妹の腕に抱えられながら、訊いてきた。

 その声にはまだ涙声が残っていて、目元完全に赤く腫れていた。


 「俺の友達だ」

 「そうかっ。ならば、妾の友でもあるということであるなっ」

 「う、うん……………………よ、よろしくね」


 よくわからない論理で友達にされた里見が、苦笑いで言った。


 「うむっ。こちらこそじゃ」

 「お、お邪魔するね」

 「で、では、私も、お邪魔しますね」

 「はい、どうぞ。特に何もありませんが、ゆっくりしていってください」


 二人を先導するように妹が上がり、居間に向かい、その後を里見とリーナが続いて、最後に俺が入った。


 「二人はテーブルに座ってくれないか」


 荷物を台所のそばに置きながら、居間に入ってから途方に暮れたように立っている二人に言って、二人が並んで座ったあと、俺も対面の席についた。

 リーナは当然だが、里見もこの家に来るのは初めてだから、緊張するのかもしれないな。

 その間妹はと言うと、冷蔵庫に買ってきたものを入れていて、それを素早く終わらせると手持ち無沙汰にしていたエリーの相手をしながら、客人用のお茶を入れ始めた…………………………………………今朝の俺ならそれに引っ掛かりを覚えていただけだろうが、今の俺はその引っ掛かりの正体を知ってしまっているのだ……………………。


 「で、は、話しっ、ていうのは何かな?」

 「あ、ああ……………………そうだったな」


 妹に気を取られていた俺は里見のぎこちない声に我に返ると、静かに覚悟を決めて話し始めた。


 「本題にいきなり入らせてもらうが、二人に話したいことがあるんだ。だが、俺はこれから話すことは、話したところでお前らが得になんてならない。いやっ、それどころか、聞いて損をするような内容だ────だから、本当に聞きたいかどうか、今聞かせてくれ」


 俺は真剣に言った。

 その真剣さを理解したのか、二人が息を呑んで、黙り込んだ。

 家にまで呼んでおいて、こんな風に迫るのは卑怯だってわかっている。

 それでも、この二人は拒否しないだろうと、俺は考えている。

 ゲス野郎の所業に違いない。

 だが、それでも、しなければならないのだ。

 俺のセリフを最後に、居間に静寂が訪れた。

 騒いでいたエリーも、場の空気を察してか静かになり、妹が急須からお茶を注ぐ音がするだけ。

 そして、妹が楚々(そそ)とした動きで物音を立てず、入れたお茶を俺たちの前に置くと、そのままエリーを連れてテレビのある方へ行った。


 「……………………それは、昨日のこと、それと、あの子にも関係しているんだよね」


 そのタイミングで、里見が強張った顔で言った。


 「ああ、その通りだ」

 「………………………………わかった…………僕はいいよ……………………出会ったその時から、僕は火脆木君のすべてを受け入れると決めていたから」

 「お、おう……………………」


 ………………………………なんか、想像以上に重い言葉が帰ってきたぞ……………………。


 「それで、キャサリーナはどうする。別に断っ────」

 「いえっ‼︎‼︎ 大丈夫ですっ‼︎‼︎」


 深刻な顔をして考え込んでいたリーナが俺のセリフを聞きたくないとばかりに、大声で言った。


 「私もっ、私もダーリンのすべてを受け止めると決意したんですっ‼︎‼︎ 負けるものですかっ‼︎‼︎」


 拳を作ると、瞳に炎を燃やして、正体不明の敵に宣誓するようにリーナが言った。

 ……………………たった、二日の付き合いだが、俺はこいつがこう言うとわかっていた。

 俺も、妹に蔑まれるようなゲスになったものだ。

 しかし、言質は取った。

 あとはすべて話すだけだ。


 「お前らの気持ちはわかった。だから、今から話すことはすべて真実だ。もちろん信じるか信じないかはお前ら次第だ。ただ、俺は二人の気持ちは裏切るつもりはない、絶対にだ」


 俺はそう前置きして、本題に入ったのだった。


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