妹の生態
私が気付いていない矛盾がまだあったりすると思うので、気付いた矛盾がありましたら感想でご指摘いただければ、嬉しいです。
生徒の注目を集めながら、るんるん、と上機嫌に俺の手を引っ張るリーナについていくと、校門に差し掛かったところで、
「お兄ちゃん」
校門のそばの壁に背中を預けていた妹に呼び止められた。
「な、なんで、夏海ちゃんがっ」
「あたしは兄を待っていたというだけで、付属品のあなたに用はないのです」
そして、安定の喧嘩腰だった。
ゴキブリでも見つけたような顔をするリーナに妹は済ました顔を崩さずに返す。
その二人を下校していく生徒どもがなんだなんだと見ながら通り過ぎていく。
「付属品っ!」
「お、おい。頼むからもうやめてくれ」
「っ、ダーリンが言うのでしたら」
しかし、対処法はなんとなくわかってきた。
俺が口出しすれば、とりあえず口論には発展しないようなのだ。
「ほら、夏海、謝れ」
「っ……………………すいませんでした」
兄らしいことをしたことないが、妹には頭の中にある兄の像にならって妹を見据えて強い口調で言うと、不承不承の体でリーナにペコリと頭を下げた。
その姿に溝が深いとわかって、ため息をつきたくなる。
「で、なんで夏海ちゃんは待ち伏せていたの?」
「兄に買い出しの荷物持ちにしようと思いまして」
「お使いを頼まれてるんだね」
まだ微妙な空気が流れていたが、里見のおかけでそれがだんだんと薄らいでいく。
前からそうだが、妹は里見に思うところはないらしい。
「いいえ。そういうわけではありません」
「?」
「行くよ、お兄ちゃん。今日は近くの商店街が特売日だから」
里見の疑問に答えることなく、妹が俺な話を振ってきた。きっと、ここで訳を答えるより家についてからすべてを話したほうがいいと思ったのだろう。
それに、これから買い物は自分たちでしないといけないな。
「ああ、わかった。すまないが、付き合ってくれないか?」
「ボクは全然構わないよ」
「私もです」
「(ちっ…………いや、好都合ね)」
「⁇」
なんか余計な舌打ちが聞こえたような気がするが………………………………妹を見ると、
「なに?」
アリにでももっと温かみのある目で見るだろうという眼差しで俺を見返した。
「なんでもない」
「はぁ? 用もないのに、見ないでよ。汚れる」
「っ、す、すまん」
いつもより険のある言葉まで返ってきて、容赦なく心を刺される。
──── ❖ ✥ ❖ ────
「おじさーん。これ三尾くださーい」
「おおうっ。って、お嬢ちゃん見ない顔だなっ‼︎ こんな可愛いお嬢ちゃんなら忘れねぇんだがよっ」
「そんな、可愛いなんてないですよ。あっ、ありがとうございます、はい、1200円」
「毎度ありっ‼︎ だけど、お嬢ちゃん可愛いから半額だっ。もってけ」
「ええっ! そんな受け取れませんよっ」
「いやいや、持っていってくれっ。お嬢ちゃんの顔は三尾どころかうちの店の魚全部より価値がある」
「そ、そんなぁ…………嬉しいです。そこまで言うのでしたら、受け取りますね。ありがとうございます。はい、お兄ちゃん持ってね」
「お、おう」
「おっ、兄ちゃんだったのかっ! てっきり年上の彼氏だと思っちまったよ」
「えっ、そうですかぁっ? もしかして、お似合いに見えました?」
「ああ、お似合いなカップルだと思ったが、こりゃすまねぇな」
「いえいえ、よく言われることですからぁ」
…………………………………………という感じのやり取りを見るのは今回を含めて三度目だ。
笑みを絶やさず、店主が自慢話を始めれば、嫌な顔せず素直に驚いたような反応を見せて喜ばせ、自分からもいいところを言ったりしているという、俺も見たことない妹がそこにいた。
言うなれば、新生物。
寝て起きたら、犬がケロべロスになってるぐらいの変貌ぶりだ。
「………………………………ねぇ、あれ夏海ちゃんだよね?」
「ああ、多分な」
「なんで私にはあんなふうに接してくれないのでしょう」
それは本当に不思議だ。
俺を嫌っているようであるが、彼氏と言われてまんざらでもなさそうなふうに装えるというのに、リーナとは一切馴れ合おうとはしないのはなぜだろう。
「さあ、わからない」
「……………………今なら仲良くなれるかもしれませんっ!」
妹の八方美人ぶりを見て、そこに付け込めると思ったのか、止める間もなくリーナが突撃していった。
店主との話が合わったところで声をかけた。
…………無視されてる。
あっ、偶然と見せかけて足を思いっきり踏まれてる。
帰ってきた。
「駄目でした……………………」
踏まれた足をさすりながら、ちょっと涙目でリーナが帰還してきた。
「だろうな」
「……………………夏海ちゃん……誰に似たんだろうね?」
「……………………誰だろうな?」
俺の顔をじーっと見ながら、訊いてきた里見に答えた。
母さんはまず絶対違う。親父だと多分もっとキレやすくて暴力的になってる。俺だともっとまともになってるはずだしな………………………………さっぱりだ。
「はあ〜〜〜」
「?」
里見が俺の答えにため息をついたが、それもまた俺にとってさっぱりだった。
それから、お店で買い物をするたびに何か余計なものをもらったり値引きされながら、買い物は終わった。
商店街を出た頃には、俺は両腕いっぱいの荷物を持たされていた。
俺を連れて行ったのはこのことを予期していたからだろうな……………………くそっ、重いっ‼︎‼︎




