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1話

土田勇都つちだゆうとは大学に入り、二度目の夏を迎えようとしていた。いつも通りに講義を終え、一人で帰路に立つ。周りからは『ぽっちゃり』と揶揄やゆされるその体形からは多くの汗が出ており、より一層勇都に不快感を与えていた。

「世の中クソだな」

家につき、もう何回、何十回目かわからないほど口に出した言葉を呟く。

いつからこんなことを考えるようになったのだろうか。中学生のころ、名前のせいで「ユウシャ」とあだ名をつけられからかわれていた時には、既に思っていた記憶がある。名前を付けた親に暴言を言い、泣きながらつぶやき続けていた。

そんな勇都にも期待を抱いた時期があった。それは大学進学である。中学、高校といじめられてさえいなかったものの、スクールカーストでは底辺ていへんだった勇都にとってクラスという存在がない大学はとても素晴らしいものに思えた。

しかし、結果は『ただスクールカーストがない』だけだった。結局所謂いわゆるリア充という人達は、その中でグループを作った。最初は勇都もそのグループに入ろうとしていた。そこでは意外にも自分と同じアニメを見ている人や、趣味の合いそうな人もいて、充実した大学生活を送れるはずだった。

入学して一か月もすると、誰にも話しかけられなくなった。仲のいいと思っていた友達は違う誰かと楽しそうに話している。遊びの計画を勇都の横でたてているのに、誘われることは無かった。

二か月もたつころには勇都は孤立していた。友達だと信じていた人たちとは、すれ違うときに挨拶あいさつを交わす程度になった。入学してすぐに入ったアニメ研究会というサークルにもその頃になると足がとおのいていた。オタクを誇って、どこでもアニメやゲームの話しかしないサークルに嫌気いやけがさしていたのだ。

そんなことを思い出していると余計に腹がたってきた。部屋に入るなり、エアコンの電源を入れ、テレビをつける。一人暮らしの生活はとても心地ここちよい。自炊をしなければいけない事が少々面倒だが、誰にも気を使わず自由に過ごせることが勇都にとって一番だった。

「昨晩、○○市△△町で空き巣が発生しました」

ニュースが流れてきた。家の近所だったため少し気になったが、すぐに録画していたアニメに切り替える。大学で疲れた後には好きなアニメを見るのが一番だ。

いつもと同じようにアニメを見続ける。

時間が来ると夕飯を簡単に済ませ、次はゲーム機を起動させた。FPSは良くも悪くも勇都に現実を忘れさせてくれた。

敵に向かって銃を撃つ。敵の攻撃を予測して物陰に潜り、待ち伏せ。敵陣に穴を見つけると味方を引き連れて一気に畳みかける。長くこのゲームをやり続けている勇都にとってそれらの行動は頭で考えるより先にしているものであった。

何度目かのマッチングを終え、時計を見ると既に日にちを跨いでいた。明日も朝一から講義があるので今日はこれぐらいにしておこう。

ベッドに入り、携帯を確認すると珍しくメッセージを受信していた。

【昨日勇都の家の近くで空き巣があったらしいから十分気を付けてね】

母からだ。そんなことでいちいち連絡をよこさないでほしい。心の中で悪態をつき【わかった】とだけ返信をして寝る体勢になる。

―ああ、このままどこか違う世界にでも行けたらいいのに―

そんなことを考えている内に眠りについた。勇都の意識は深く、深く落ちていった。




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