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魔法少女は暴虐すぎ。戦うべくして生を受け、美を求めて戦場に咲く  作者: 摩訶凜香


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第二十三章:戦いを前にした少女たち


カラオケの個室(ボックス)の中、マリは優子をじっと見つめていた。今日、優子が自分と亜季を呼び出したのは、何か重大な相談があるからだという。


「大丈夫ですの、優子?」


「私は平気。重要なのは、使徒が潜んでいると思われる空間を見つけたこと」優子は重苦しい口調で言った。彼女の心拍数は、どのような危機に直面しても、常に一定のフラットなリズムを刻んだままだ。


「よく生きて戻ってこられましたわね」マリは驚きに目を見開いた。彼女自身、かつて単身で使徒と交戦したことがある。


あの怪物どもは魔法少女に対して異常なまでの執着を持っており、その追撃を振り切って五体満足で生還することなど、ほぼ不可能に近いはずだった。


「てか使徒ってマジ何なんですか、先輩?」亜季が興味深そうに二人に視線を向けた。彼女も戦闘経験は豊富だったが、世界を滅ぼすほどの存在である「使徒」とは遭遇したことがない。


異界の魔法少女の残影に対しては、常に距離を保ち、遠隔から確実に狙撃する――それが彼女のスタイルであり、必要がなければ自ら好んで異界に踏み込むことはしなかった。


「亜季、あなたは遭遇したことがありませんでしたわね。あの化物どもは明確な自己意志を持ち、世界を崩壊させるほどの大力を秘めていますのよ」


「ガチか……。あの先輩、絶対に盛ったり嘘ついたりしないもんね……」


亜季は思わず口元を手で覆った。


「当時の私の仲間は、全員が戦死した。それで、ようやく倒せた」


優子は内心に微塵の動揺も乗せず、淡々と、まるで他人事のように言った。


「あたくしなんて、あの忌々しい出来損ないを太平洋まで蹴り飛ばして差し上げましたわ。私たちの世界では、奴らの魔力は急速に衰退しますの。そう考えると、奴らがこの世界で魔法を行使するためには、何らかの条件を満たす必要があるのでしょうね」マリは歯噛みしながらも、どこか高飛車な笑みを浮かべた。相手は間違いなく強敵だった。


一歩間違えれば、自分も黄泉の国へと直行していただろう。


「私たちは、おそらく現在生き残っている最後の魔法少女。七十億の人口の中で、私たち三人だけ」


優子は残る二人を見つめた。これからは、彼女たちと共に残りの使徒に対抗していかなければならない。


「つまり、あたくしたちが主役(ヒロイン)ということですわね」マリは左手を掲げてみせた。その手首には、クラスメイトから贈られたあの薔薇のロザリオが巻かれていた。


「え、てか、うちら三人だけでマジ足りる感じですか……?」亜季は少しテンションを落として呟いた。優子の過酷な過去を聞き、魔法少女としての自分の経験が、まだ遥かに及ばないことに気づかされたのだ。


「亜季は身軽で、遠距離からの狙撃に適した魔法を持っている。マリは正面突破が得意で、長期戦になればなるほど優位に立てる。私の魔法は陣地の構築に向いているけれど、できれば消耗戦は避けたい」


優子は二人の顔を見つめ、静かに言葉を続けた。


「二人は、私の過去の仲間たちよりずっと強い」それは優子の客観的な判断だった。かつての仲間たちは魔力に頼りきった戦闘を行い、節約という概念を知らなかった。


だからこそ、あの戦場で命を落としたのだ。魔法は確かに便利だが、乱用すれば貴重な魔力を無駄に消耗する。滅びた世界の敵から魔力を得ている以上、その交換効率には細心の注意を払わなければならない。


「優子のことですもの、当然作戦計画(プラン)はあるのでしょう?」


マリは小さく笑った。優子との付き合いはそれなりに長い。


戦略の立案やチームの連携において、自分は優子に及ばないことをマリは自覚していた。もっとも、優子の計画の中で、自分はいつだってチェスの「クイーン(王妃)」の役割を与えられるのだが。


「そう。私たちの敵は、一千以上の魔法少女の残影。彼女たちは生前の魔法を使うことができる。――一千人以上の魔法少女の残影。少し、魔力を消費することになる」優子は相変わらず無表情で語った。


「先輩、一千人って……。流石にどうやって戦うわけ?」


「正確には一千人以上。その上、さらに強力な使徒を相手にしなければならない」優子の氷のように冷徹な声に、亜季はさらに眉をひそめた。


「一千人もの魔法少女の残影を維持するとなれば、魔力の消費量もそうとうなものですわね」


「その通り。あの使徒は『コレクション』に対して異様なこだわりがあるようだ。だから、マリに敵陣へ突撃してもらい、誰が生物(ホンモノ)かを耳で聞き取ってほしい」


「なるほどね。使徒という生き物は活物(いきもの)ですもの、彼らの臓器は基本的には稼働しているはずですわ」


「要するに先輩、マリちゃんをガチで敵陣に突っ込ませる気満々ってコトね?」


「あなたと私が正面からの牽制(けんせい)を担当する。もちろん、一千もの大軍を相手に真正面から火力を競うほど、私は愚かじゃない」


「……おけ、りょ。先輩を信じるわ」


「では、作戦を練りましょう」優子がそう言ってノートを広げようとしたその時、マリがニヤリと悪巧みのような笑みを浮かべた。


「ちょっと、優子。元人気アイドルを二人もカラオケに連れ出しておいて、お話はそれだけかしら?」マリは手元のリモコンを取り、楽しげに歌の予約を始めた。


「それな、先輩! 元人気アイドルが二人もここに大集合とか、男子が見たらガチで羨ましすぎて死ぬレベルっしょ!」亜季もテンションを戻してクスクスと笑う。


「あなたたちって人は……」優子は呆れたように溜息をついた。しかし、その口元は抑えきれずに小さく上を向いていた。


彼女たちは世界を救う英雄だ。しかし同時に、うら若き青春を生きる、ちょっと賑やかな一人の少女たちでもあった。

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