雅樹の過去、瞬の未来
瞬が英一家の一員となるのか?それとも…
~第六話~
少し時間は戻り午前中。英家の夫婦がそれぞれの時間を過ごす時、娘の由香も職場にて健闘していた。
由香は郊外にある大型ショッピングモールに入るホームセンターに勤務している。大学を卒業後働き始めた。
由香は店長を見つけると笑顔で話しかける。
『あっ、店長おはようございます!』
『おう、英さんおはよう。』
由香は明日の急な休みを勝ち取る為、自身の職場の上司と対決を覚悟していた…
『店長…月曜日なんですが…』
何かを察した店長は咄嗟に返す
『おお!月曜日だよな、英さんの担当の売場の営業さんが来るのは。あの営業さん、俺も一緒に仕事したけど勉強になるからしっかり学べよ?』
海千山千の店長は理由を聞くと判断する材料が増えて面倒になるのを経験上解っている為、会話の流れを変える一言を放つ
『あの、それで月曜なんですが…』
『まぁ、不安もあるだろうけど商談でもないから楽しく話せればそれでいいから。じゃあ今日も一日よろしくね!』
サラッと会話を断ち切り逃げるように仕事へと向かう店長…
『あう~、何も話せない…』
途方に暮れる由香であった。
由香は大学を卒業してから大手のホームセンターに勤務している。今年で4年目となる。役職も与えられて部下もできた。先輩からも可愛がられていると言っても過言ではない。
『由香~、手が空いたらコッチ手伝って~』
『は~い!』
『由香先輩、これってどうしたらいいんですか?』
『それ?ちょっと待ってね、すぐに行くから!』
『英チーフ、特注なんですけど…』
『了解です!まもなく伺うから納期と数量、解る範囲を伝票に記載してて下さい。』
そうこうするうちにあっという間に午前中は終わりを迎えようとする。
時間の確認にスマホを覗くと母である香奈からのメールが…
文章自体は他愛もない…だが香奈の圧を感じる…
《ちゃんと休みはもらえた?これから瞬君とそっちに行くからご飯食べましょ?》
《ああ…ママからの業務連絡及び確認メール…》
店長は由香から対角線に逃げており、なかなか捕まらない。
追いかけるとスタッフから声を掛けられてと…
ピコッ!
《また業務連絡メール…》
香奈からのメールを開くと短文だが先程より圧を感じるのは何故だろう…
《到着~》
《ゲッ!もう到着後?ヤバい、急がないと…》
店頭に店長の姿を確認し、無線で店長を足止めする由香。
『店長、少しだけ時間宜しいですか!』
『ん?どうした?これからご飯だから後でもいいかな?』
『時間は取らせませんので…』
『それ、長くなるヤツだよね?』
どうしても休みを取りたい由香VSどうしても休ませたくない店長のにらみ合いが始まろうとする瞬間…英家の女帝、香奈の登場…
『由香~、良かった、ソコにいたのね~』
『ゲッ、ママ…お母さんもう来たの?』
この短いやり取りを見て店長は由香の母と気が付く。
『ああ、英さんのお母さんでしたか。いつもは英さん頑張ってますよ。私は店長の佐々(さっさ)と申します。』
『今回は由香が急な休みを言い出して申し訳ありませんでしたね~』
『えっ?休みをですか?』
香奈は大袈裟に驚き由香を見据える…
『え?由香ったらまだ伝えてなかったんですか?もう!お昼に伝えるなんて失礼だし、月曜日の事なんだから早く伝えないとダメじゃない!店長さんだって朝からいたんでしょ?』
『はい…店長、それで月曜なんですが…』
『急だなぁ、何か事情でもある?』
と観念した店長、それでも断りの言葉を探す。
香奈は終始笑顔であるが、プレッシャーを放つ。
瞬は由香、香奈、店長の佐々をそれぞれ見比べる。
《昨日から何回も見てる香奈さんの笑顔のプレッシャー…》
笑顔のままプレッシャーを由香、佐々にかけ続けて言い放つ香奈。
『親戚の都合で申し訳ございませんが、どうしても外せないんですよね~』
香奈の助け船がでる。かなりのパワープレーである。これを家族からされると会社としてはNoと言うのは難しい…
ここで最後の抵抗を試みる佐々。
『お家の事なら仕方ないですが、英さん、月曜、営業さん来るって知ってたよね?』
それでも店長も必死に抵抗を試みる…が…
香奈のプレッシャーが一段階引き上げられる気配がした…
瞬は何かを感じ、咄嗟に言葉が口から紡ぎ出される…
『あの!店長さんごめんなさい。僕のせいで由香お姉ちゃんが休むことになって…』
瞬は香奈のプレッシャーを感じ取り咄嗟に口を開く。
『僕、英さんの親戚の橘瞬と言います。ごめんなさい、僕、家族がいなくなってしまって、英さんと一緒に住むことになったんです。それで急なんですが月曜日に引っ越しとか転校とかの手続きで…』
真剣な顔をした瞬を覗き込む佐々…
『そんな大切な話なら早く言ってよ~、これで休みをあげない何て言ったら俺、鬼じゃん!月曜、休んでイイから、俺と約束、この子のためにも月曜は頑張れ!』
由香は嬉しそうに笑顔で答える。
『はい!ありがとうございます!』
『そろそろ休憩だろ?《家族で》ご飯食べてきな?昼からもガンガン働いてもらうからね!いってらっしゃい!』
家族を強調した店長の一言で休みをゲットした由香は意気揚々と家族で食事に向かうのだった。
そして何より休みをゲットしたことより、瞬からお姉ちゃんと呼ばれた事が一番嬉しかった由香であった。
この作品はお気づきの方もいらっしゃるかもしれませんが、異世界でまったり生きるのスピンオフです。
当初異世界行きの前日談で書いていたんですが、何故か本編よりみんな楽しそうにイキイキ動き出しまして…止められないのでスピンオフとして書いてます。




