英家、緊急ミッション発令!
皆瀬、雪柳の二人に勝った由香であったが、この後真のボスとの対決が待っていた…
~十二話~
『まずい!早く帰らないと、香奈が怒ってる!』
『何でママに連絡してないの?普段は業務連絡レベルで連絡してるクセに!』
『とにかく早く帰りましょう!』
三人はそれぞれ香奈の静かな微笑みを思い出して急いで家路を辿る。
『『『ASAP!』』』
もはや合い言葉の様に可及的速やか!を口にする三人。
『パパ!今からでも遅くない!ママにメール!瞬君の仕事を終わるのを待ってた。それから偶然私と鉢合わせしたからこれから帰るって!』
『そうだな!ダメージは最小限に!瞬も話しを合わせてくれ!』
『はい!』
三人は小走りで駅に向かう。
『由香さんが足が速いのは何となく分かってましたけど、何で雅樹さん…僕より速いんですか!』
『普段から仕事で動き回ってるから!』
『瞬君の身体の軸がブレてるからだよ~。』
プルルルル…
『ドア閉まりま~す。』
プシュ~
何とか予定の電車に乗ることができた三人だが、雅樹と由香は軽く息を整える、瞬はゼェゼェと肩で息をする。
『二人…とも…何でそんなに…げん…き…なんです…か?』
瞬は必死に息を整えながら二人に疑問をぶつける。
『仕事が最大のトレーニングだからだよ。』
『私は家でも筋トレやってるから。瞬君はもう少し体力を付けた方がいいね。さっき走りながら言ったけど、軸…体幹がまだまだ鍛えられてないから。そしたら突き以外の戦法も幅が広がるからね。』
『は…はい…』
由香の体力はまだ理解できる…雅樹の体力はどうなってるのか…もう50手前の男の持久力とは思えないと瞬は口には出さないが恐ろしく感じる。
『瞬君、新しい学校、馴染めた?部活剣道続けるんだよね?』
由香が何気なく瞬に尋ねる。
『はい、楽しく通えてます。大場先生、今の学校に何度も連絡してくれてるみたいで…今の担任の先生や、顧問の先生も普通に接してくれます。』
ようやく息が整った瞬は笑顔を見せて答える。
『よかったな、瞬。人はいくつになっても変われる。大場先生、しっかり変わったな。』
『あの時のパパはヤバかった…アレやられたら精神が死ぬ。』
『僕もあんな雅樹さん初めて見ました。』
『そんな事はないだろ?普通に話しただけだよ?』
『私は大場先生に同情した…そう言えば瞬君の学校って私の卒業した学校って知ってた?』
『はい、部室に由香さんが全国大会出場を決めた時の写真がありましたよ。顧問の先生も高校から剣道を始めたけど、恐ろしい集中力で凄まじい伸び方だったと…』
そんな会話をしていると降車駅に近づく。
《次は~…お出口は右側です~》
『おっ、駅に着いた!二人とも分かってるな?』
『『ASAP!』』
『よし、最後まで走り抜けるぞ!』
その後、三人は自宅まで全力疾走を余儀される事となる。
『さすがに疲れたなぁ…』
『この後…ご飯(二度目の夕食)だね…』
『僕、走り過ぎて胃が限界…』
『分かっている。みんな同じだ。だが、今日最後のミッションだ。何食わぬ顔をして腹ペコのふり!…行けるか?二人とも!』
『ああ…ダイエットかぁ…』
『うっ…逝けそうです…』
再度息を整える三人…
『『『ただいま~』』』
『お帰りなさい、遅かったわねぇ~』
『ごめんね、瞬の初バイトを、ラストまで付き合ってた。』
『ごめんなさい、雅樹さん早く帰れたのに…』
『私は駅で二人と一緒になったから~』
『あら、そうだったのね。お疲れ様。ご飯なんだけど…天麩羅とサバの味噌煮込み、どっちが良いかしら~』
『『『・・・・・・』』』
コレは…大将の店で雅樹達がオーダーした料理だった…
『女将さんから連絡きたのよ~。瞬君大変だったみたいねぇ~。同じ年の子と仲良くなれたみたいだし、雅樹は雅樹で大変だったみたいねぇ?聞いた話だと連絡する余裕もなさそうだったしね?』
『ごめんなさい…香奈…』
『責めてないわよ?雅樹らしいじゃないの。自分より人の事を優先するって私も誇らしいわよ?夜も遅くなったからお風呂、入ってね?瞬君が嫌じゃなかったら雅樹と入る?それとも由香と?』
と香奈はイジワルな笑みを浮かべて三人を揶揄う。
瞬は目を白黒と…由香は挙動不審に…
『僕っ、雅樹さんと入りたいですっ!』
『じゃあ男の裸の付き合いでもするか?』
『はい!』
こうして男二人は風呂場に消える…
『由香も大変だったみたいねぇ?瞬君にライバル心を燃やす子と話したんでしょ?』
『うん!パパと瞬君と、その子の他にもお兄さんが二人いたんだけどね。』
『あらあら。』
『そうだ!パパのお店にウチの会社の戦略的情報室の人がバイトしてたの!』
『由香の?珍しいわねぇ~。ダブルワークするようなお給料じゃないでしょ?それに戦略的情報室なら忙しくてそんなヒマもないと思うんだけど…』
『私は向こうを知ってたから挨拶しようとしたんだけど、なんだか私の事を知ってたみたいなんだよね。私は広報でしか知らなかったんだけど、ママみたいに…んんっ、お静かにって感じで見てきて…』
『まだまだ社歴の短い由香を知ってたの?』
『うん、室長って言おうとしたら目で止められた。そして、はじめまして、バイトの…って』
『そうなの?何かしらねぇ~』
香奈は内心思い当たる…
《雅樹と瞬君、一緒にお風呂に行かせて正解だったようね…》
『室長さんってどんな人かしら?』
『凄いスピード出世!お兄さんって感じのシゴデキな人!』
《やっぱり…雪柳さんね…》
香奈の表情は穏やか…
だが、内心は香奈の持つ情報と由香の話をつなぎ合わせていた…
由香は、まだ香奈がこの場をあえて用意し、何気ない会話を通じて聞き込みをしている事に気が付いていなかった。
一方男二人は…
『瞬、ゆっくり風呂に浸かれよ?明日は日曜だから朝からバイト入れてるんだよね?』
『そうなんです。店長さんからは「日曜日は違ったお店の顔」が見れてたのしいよ~!って言われました。』
『そう…か…』
《店長、本当の所を隠したな…「日曜日は朝市で店がパンクする勢い」でお客さんがくるんだよな…》
『忙しいからよろしくね♪って。』
『うん…忙しいよ。明日も早いから早く寝ようね。』
ココで日曜日の朝市は戦場だと瞬には伝えられない…
雅樹は真実は経験すれば自ずと分かる…そう思い瞬には黙っている事にした…
毎回思うんですが、香奈さん、雅樹より余程主人公なんですよねぇ~。
雅樹は瞬とのんびり入浴、香奈は由香に雪柳の情報を聞き出す…
由香も母親だからと言って自分の会社の情報を全て言っていないんですよね~。
なのに雪柳の存在を知る香奈…やっぱりこの人がラスボスか…




