瞬の初バイト!
瞬も転校が無事決まり、雅樹の働くスーパーでバイトをはじめる…
~第九話~
瞬の転校先も無事に決まり、雅樹の勤めるスーパーでバイトを始める事となる。
以前店長から聞いた17歳の少年と瞬が本日から勤務開始となる。
『今日の夕方からか…色々あったけどあっという間の出来事だったなぁ…』
雅樹は瞬の学校を訪れた日からわずかな時間しか流れていないハズなのに長い時が流れた様な感覚に囚われる…
夕方になると瞬ともう一人の少年を連れ、店長が現れる。
店長は人手が増えた事に笑顔が隠しきれず満面の笑顔で二人を紹介する。
『今日から働く皆瀬君、橘君、今日からだから皆さん、お願いしますね~!』
『皆瀬ッス。よろしくです。』
『橘瞬です。不慣れでご迷惑をお掛けするかもしれませんが、よろしくお願いします。』
『はじめまして、俺は英雅樹。普段は肉屋とか、色々やってるよ。何か分からない事は何でも聞いてね。それからもうすぐ夕方のパートさん二人が来るから引き合わせるから、これからよろしくね?』
『英さんはこの店のアニキ的な存在ですから頼ってくださいね!』
店長は嬉しそうに二人に伝える。
その様子を見ていた瞬は何故か嬉しそうに微笑んでいる。
『後1時間程すると、椿さん、雪柳さんってお兄さんが来るから、今日は二人に教わりましょう!お店の場所とかは英さん、説明をお願いします。』
『了解です。』
こうして雅樹は二人を連れ各部門のバックルームを案内する。
瞬は頷きながら、皆瀬は適当に…各部門のチーフにも引き合わせて次はグロサリー(非冷品メイン)の倉庫に案内する。
『ココが君達のメインの仕事場になると思う。基本は届いた商品を売場に補充する事。その時は商品の期限を確認して、日付の新しい商品を奥に、期限が近いモノ程手前に出して欲しい。期限が近い商品はカゴに避けてくれると助かるよ。』
『わかりました!』
『基本ッスよね?説明なくても大丈夫ッス。』
なかなか対照的な二人である。
ただ、現在の仕事力は二人とも未知数と雅樹は判断した。
『それから、お客さんに会ったら《いらっしゃいませ!》と元気よくね?』
『はい!』
『はい…』
続いて雅樹の管轄の一つ、日配の冷蔵庫とストックスペースに移動する。
『コッチが日配(冷蔵品メイン)の冷蔵庫。豆腐や納豆、要冷蔵品がココにあるよ。それと常温品。これも補充の対象。やることはさっきのグロサリーと同じ。』
説明をしていると…
『英さん、おはようございます。』
椿が出勤してきたようだ。
『椿さんおはようございます。彼らが前に店長が言ってた二人です。』
『橘瞬です。』
『皆瀬ッス…』
『ああ、私は椿だ。これからよろしく頼むよ。』
『あれ?椿さんだけですか?雪柳さんってまだ来てないです?』
『先程慌てて飛び込んで来てたよ。』
『お二人ともダブルワークでしたもんね。本業が忙しい時は大変なんじゃないですか?』
『英さんとは思えない一言ですね。仕事に振り回されるウチは二流。仕事を振り回して一流、仕事を振り回す英さんらしからぬ言い方ですね。』
『何を言ってるんですか!いつも仕事に振り回されてますから(笑)』
雅樹は慌てて椿の言葉を否定する…
すると後ろから声を掛けられる。
『何を言ってるんですか、英さんが振り回されるなら殆どの人が振り回されてますから。』
どうやら雪柳が出勤したようだ。
『雪柳さん、おはようございます。彼らが新しい子達です。』
『雪柳です。よろしく。』
『橘瞬です、よろしくお願いします!』
『皆瀬ッス…』
『ああ、よろしくな!それと、橘君?過度の緊張は目を曇らせる。ある程度の緊張感は必要だが、し過ぎは良くないぞ?』
雪柳の指摘に瞬はビクッとなる。
皆瀬は面白くない顔をし、小さく舌打ちをする。
それを見逃さない椿の一言。
『ほう…雪柳君は橘君が気になるようだな。確かに伸び代は未知数と思える。逆に私は皆瀬君も気になるがね。』
と椿は皆瀬を見る。
雅樹は声を張って皆瀬の舌打ちを掻き消すように言う。
『じゃあ今日は椿さんと雪柳さんに二人を見て貰います!よろしくです!』
こうして品出し作業が始まる。
皆瀬は態度に裏打ちされた作業スピードと正確性を併せ持っている。
逆に瞬は…
『いらっしゃいませ!』
挨拶をすると作業が止まる。
一方皆瀬は…
『らっしゃいませ~』
あまりお客さんの方を見ず、手を止めずに作業をする。
それを見て雪柳が瞬にアドバイスをする。
『橘君、ずっとキョロキョロしてもダメだ。お客さんの気配を察知するんだ。後ろにも目を付けるんだ。気配を察知してから挨拶をすれば充分間に合う。逆に皆瀬君は周りを気にしなさ過ぎだ!お客さんが棚前に立ったら譲る。これも後ろにも目を付けるって事だ。』
『はっ…はい!』
雪柳特有の言い回しに瞬は目を白黒させる。
一方皆瀬は面倒くさそうに応える。
『了解ッス…』
雪柳の指導は適切で本業ではどんな仕事をしているのか雅樹は興味を持つ。
『皆瀬君はスーパーで働いた経験があるようだな。基本は概ね出来ているようだ。』
椿が雅樹の隣に立ち、小声で雅樹に伝える。
『そうみたいですね。ただ、悪いクセと言うか、他のスーパーの動きや接客スタイルも持ち込んでますねぇ。』
『こればかりは本人が気付いて治さない事にはどうにもできんさ…若い二人を信じよう。』
椿もまた、本業で人を指導する立場ではないか…と雅樹は思う。
こうして納品された荷物があらかた片付き、閉店の時間が近づく。雅樹は普段はこの時間まで残らないのだが、瞬と夕食を食べて帰ろうと思い、この時間まで残っていた。
閉店の時間を迎え、店内の照明が落とされて行く。
『さあ、後は夜間店長に任せて俺達は帰るとするか。瞬君、大将の店に行かないか?』
『はい!行きたいです!』
『よし!今日は瞬君の初バイトだから好きなモノ頼んでいいぞ!』
『やったー!』
嬉しそうな雅樹と瞬を眺める椿と雪柳。
その様子を遠巻きに見る皆瀬…
『英さん、俺も初バイトだったんですけど…俺も好きなモノ頼んでいいですか?』
『そうだな…ヨシ皆瀬君も一緒に行くか!椿さん、雪柳さんもどうですか?』
『ああ、英さんの誘いなら断る理由がないな。』
『そうですね。俺もお供しますよ。椿さんの相手も英さん一人では大変でしょうしね?』
チラリと椿を見て人懐っこいイタズラな笑みを浮かべて雪柳は答える。
こうして雅樹達は大将の定食屋に向かうのであった。
この後の騒動も知らず…
今回はクセのある人が大量に(雅樹も含む)
今後、日常のスーパーの裏側だけではなく人間関係も楽しみにして下さい。




