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雅樹と香奈大場を諭す。

由香と瞬を追い出した2人、特に雅樹は今まで見せた事のない顔を覗かせる。


~第8話~    その四



剣道場で場を支配する由香。

そんな事件が近くで起こっているとは全く予想すら出来ないここは地獄のコキュートスの指導室


大場は焦っていた。何を言っても雅樹、香奈に波状攻撃を受けてしまう。


『ですからして~…』


兎に角面倒な夫妻から一分一秒でも早く解放されたい…担任は思考が停止し始めていた…由香達が退出して早30分。

雅樹は笑顔こそ崩してはいなかったがそれは腹黒い笑顔であった…


『そうなんですか、では何故?』


先程から容量の得ない大場の解答、

俺は矛盾点を突き始めている。


チラリと隣の香奈の様子をうかがう

笑顔の全くない香奈。


『…………』


香奈は…隣を見るのも恐い…

全くの無言である。


『その橘君への物言いはわたしが全て悪かったので…』


兎に角切り抜けたい大場。


『では何故悪意のある噂が出回っているのですか?学校側はそれをヨシとしたのですよね?』


容赦なく俺は斬り込む


『いえ、それは学校側の判断ではなくですね…私の私見と言いますか…』


『私見ですか?大場先生の?では瞬にまつわる噂が一人歩きしているのは大場先生が?』


『いえ、意図的にではないのですが…』


《これはツッコんだ方が良さそうだな。》

腹黒い雅樹が要領の得ない回答に、少しだけ遊んでやるか…と


『意図的ではないと言うと、大場先生が噂を流したが、悪意があったわけではないと…』


あえて大場が噂の出所か意地悪く聞き返す。

俺は大場の逃げ道となる一言を優しく言うと…


『人間誰しも失言や舌禍事件はありますもんね。』


『そうなんです、橘に悪意があってやった訳では決してありません…』


ようやく自分が噂の元凶と暴露をしてしまい、己の何が悪かったのか心の底から理解し始める大場。この自白でまだまだ遊べる(笑)


『はい…ですので…』


大場は止まった思考をなんとか動かそうと必死に言葉を紡ぐ…しかし思考回路は全く役に立ちそうにない…全て自分の何気ない一言が原因で瞬を傷つけた…後悔が募る…

 

大場の自己弁護に苛立っていたのは俺だけではなかった…


『ですのでは、自己弁護の語り口調ですよ?

あらあら、大場先生は何科の先生なんですか?』


香奈は俺が遊びはじめたのを察した。


『いえ、申し訳ございません。』


『あら?私謝罪を求める質問したかしら?』


無言のプレッシャーよりも笑顔と話しかけるプレッシャー、慣れてない人間なら笑顔と話しかけるプレッシャーの方がダメージがデカい…これは俺が身をもって経験済みだ…


『いえ!私は現国を担当してまして…』


『あら~、私の職場でそんな言い回しをしたら私怒っちゃいますね~』


香奈、もう激怒してるだろう…あえて口には出さない(出せない…)


『まぁまぁ、現国の先生だって一般的な常識の話し方に詳しい訳じゃないから、そんなに責めないであげなよ…』


少しイジってみる。


『すみません、恐縮です…』


この言葉を俺は新たな玩具が見つかったと言葉を返す。


『恐縮ですの使い方バッチリ!流石先生ですね。ただ、謝罪の際すみませんは頂けない。申し訳ございません。ありませんが最適解ですね~』


もう担任の精神的ライフはマイナスだな。

ここが落とし所か?トドメといくか…


『先生だって人間です。間違いは必ずあります。

ただ、素直に謝れるか…若い子達に教えるのはソコが大切なんじゃないですか?社会に出て謝れない子が増えてます。今回、大場先生とお話をして教師って立場を人の一段上って定義付けてないでしょうか?結局最後は人と人ですよ?』


『仰るとおりです。深く反省しております。橘君にも心から謝罪を申し出たい所存です…』


既に大場は瞬に対する罪の意識で心は崩壊寸前である事は一目瞭然だ。

すかさず香奈は優しく大場に諭すように伝える。


『その時は教師が生徒に謝るのではなく、人間が人間に謝罪をするようにお願いしますね?

瞬君、強く振る舞ってますけど、ギリギリ保ってるんです。大場先生から見たら瞬君は生涯受け持つ生徒、1000人の内の一人かもしれないですけど、瞬君から見たら大場先生、担任の先生は一人だけなんです。コレが最後の別れになるかもしれないのでお互いに気持ちよくお別れしてくださいね?』


軽く時計を見ると由香達が退出して一時間以上経過している事に気が付く。


『はい、お二人と話してこれからの教師としての考え方を改める事が出来ました…ありがとうございます。』


『それでは転校手続きの話しをはじめましょうか?』


まだまだ担任の受難は続くのであった。

由香の予想通り、二人の怒りの説教は精神的暴力、心を殺す。予言通りとなるのであった。

もっとも由香も過去にこの夫婦に同じ目に遭わされた被害者でもある為、大場の未来は高精度で的中した。


そして、

まだ学校内で大場の未来を予想した特大の危険人物が静かに爆発の時を迎えようとしている事を、三人は知らない…


その五に続く


次回は由香と瞬の物語に戻ります。

おっとりしたお姉さんの由香…

ヒロインの座は手に入るのか?

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