由香、瞬と学校見学する
大場との対決…大人の汚さを見せたくない雅樹と香奈に追い出された由香と瞬は学校内でも、瞬の部活、剣道部を覗きに行く…
~第8話~ その三
父から大人の話し合いするから部屋を出ろと言われ、追い出された由香と瞬。
瞬はこの学校で所属する剣道部を紹介するために校舎を案内するのだが…
『いやぁ~、追い出されたねぇ。ママもヤバかったけど、パパのあの怒り方スッゴく久しぶりに見たよ…アレはヤバい、言葉や直接的な暴力行為ではないけど、心理的な暴力だよ…心を…殺すヤツ…』
『由香さん、久しぶりって雅樹さん以前にも?』
『うん、今まで忘れてたけど…私が高校の時…色々あって、パパがあのキレ方してた。ママはブリザードみたいな氷点下って感じのキレ方、パパは黒い闇で覆って逃げ道を塞ぐアイアンメイデン?そんな感じ…』
『確かに雅樹さん香奈さんに負けてない圧、プレッシャーでしたもん…』
『正直、あのモンスター二人を相手にする先生が少し憐れ…お祈りしておこう。辛かったね~、頑張ったね~、周りを恨まないでね~、成仏しなっせ、成仏しなっせ(笑)』
『あの…大場先生死んじゃってます(笑)』
『お!ようやく笑ってくれた!アレはあのオッサンが確実に悪い!パパやママだけでなく私も怒り心頭だったんだから!』
『僕の為に怒ってくれてありがとうございます。』
『瞬君だから怒った訳じゃないよ。もちろん瞬君が大切だから怒りも何倍にもなったけど…』
由香の何気ない一言に瞬の目には薄らと涙がにじむ。
『…由香さん……』
校舎を出て渡り廊下を歩く二人。瞬にとって通い慣れた部活の剣道場が見えてくる。
『あっ、ここが剣道場です!案内しますね。』
重い扉を開くと中には剣道部員が稽古に勤しんでいる。
乾いた竹刀の音、踏み込む足音、気合いの入った掛け声、瞬は懐かしいと素直に感じた…
そこには一人気合いの入った声を上げ、部員を鼓舞する主将と思わしき人物が…
『あそこで声を張ってるのが主将の相馬先輩です。先輩、凄く強いんです!』
嬉しそうに相馬の強さを語る瞬。
剣道場の入口に立つ瞬と由香を見つけた部員が大声をだす。
『あれ?捨て子の橘じゃん、親に捨てられたから学校辞めたってきいたけど(笑)』
『俺は親殺して警察に捕まったって聞いた(笑)』
悪意に満ちた顔付きで瞬を貶す二人の部員。
周囲の部員達も遠巻きに瞬を指差したりヒソヒソと…
瞬はすぐに辛そうな顔になり、否定の言葉を発する。
『ち、違っ…』
仲間と思っていた部員達の悪意に満ちた言葉に反論する気持ちをへし折られる瞬。
するとそれを見ていた相馬が大きく息を吸い肩が大きく動く。
『お前達!適当な噂を信じて橘をイジるんじゃない!』
かなりの大声で部員達を一喝する相馬。すると初めに瞬をなじっていた部員が声を荒げる。
『だって学校から逃げたんだぜ?やましいことがなければ逃げないって。』
その言葉に反応するかの様にもう一人の、瞬をなじっていた部員も尻馬に乗り出す。
『何もしてないなら逃げるなよ!大場もお前の事を疑ってたぞ?』
他の部員たちも遠巻きにニヤニヤとイヤらしい顔つきでこちらを眺める。中には動画撮影している部員までいるようだ…
その様子を見ていた相馬が吼える。
『お前達がそんなんだから橘も学校に来れなくなったんだ!大場先生の言った事を鵜呑みにするな!』
相馬だけは瞬の味方をしてくれているようだった。しかし瞬の最大の味方はもっと側にいた由香であった。
由香はいつの間にかスマホを取り出して撮影をしていた…
『そっちの君コッチに来てね~、あと、人間のクズ共!注目~!』
瞬は一瞬自分の目を疑う…ソコにいるのは普段の賑やかな由香ではなかった…
それは先程見た真っ黒い空気を纏った雅樹にもよく似た雰囲気であった…
『小さな小さな箱庭の居住者だね。君達は。人の下らない噂を信じて勝手に話を歪曲してさぁ~、コレ、デマだったら瞬君の人権問題だよ。しかも自ら証拠を残しちゃって。』
由香は香奈譲りの笑顔を見せると剣道場に静かに響く声で話し出した。
『私も証拠として撮影してるけど、うっかりSNSにアップしたら大変だね~。君達の未来は消えちゃったかなぁ~。』
『この動画、もし進学先に見られたら…まず落とされるよね(笑)就職先にも(笑)まずホワイト企業には行けないね(笑)』
部員たちは初めは由香を馬鹿にする視線を送っていたのだが、今では目線を逸らし我関せずとなっている。
由香は更に凶悪とも見えなくもない笑顔で続ける。
『暴言吐いた子だけじゃないよ?止めなかったヤツも同じなんだよ~。結婚だってこんなデジタル・タトゥー見つかったらまず反対されちゃうね~。この中で親がそれなりの会社や自営業やってる子の親も被害者確定だね~。』
由香はあくまでも可能性の話を、さも現実になりそうな言い回しをあえて選び話し続ける。
《由香さん、香奈さんにそっくりだ…》
瞬は背筋が凍る。
そんな瞬にお構いなく静かな怒りを部員達にぶつける由香…
『最悪、廃業やクビかも…そしたら一家離散とかも…悲惨だね~(笑)中には親に捨てられる子も出てくるかもね。みんな寿司テロとか知ってるよね?こんな事で?って大変な事になるヤツ。』
剣道場は静まり返る…それでも由香の言葉は止まらない。
『みんな無言だけどどうしたの?あんまり静かだと親指がヘンな所触って配信されちゃうかも~(笑)』
瞬は普段の由香との恐ろしいギャップを感じた…
部員達は自分達の未来に降り懸かる恐ろしい未来を想像し息を呑む。
そんな中相馬が恐る恐る異議を申し立てる…
『あ、あの!お願いします、部員達もみんな反省してます。許してください!』
由香の底の見えない静かな圧をヒシヒシと相馬は感じただ恐怖する。
今までどんな相手と相対してもこんな恐怖を感じる事は無かった。それが試合でも無く、ただ立って話をするだけの女性に恐怖を感じる。
必死に由香に懇願する相馬に由香は先程とは違う柔らかな笑顔を向ける。
『あなたは優しいね。瞬君の事もかばってくれてたし。こんなゴミクズ達までかばって。』
『確かに非があるのはアイツらです。でもゴミクズは…』
『そう?我が身可愛さでも謝罪も出来ない人間はゴミクズか、人間以下じゃないかな~って私は思うんだけど?』
由香の言葉を聞き、部員達は慌てて謝罪をはじめる。
『みんな、キツい言い方になったけど、軽く考えてやっちゃった事って、とんでもない事になりかねないんだよ。さっき言った事は起こりえないかもしれないけど、私や瞬君が本気でやろうとしたらできなくもないんだよ。学生だから許される…って簡単に考えたらダメだよ。年上のお姉さんからのお説教!わかったかな?』
由香の圧倒的な威圧感、演説に圧倒された部員達は瞬に代わる代わる謝る。
中には口先だけの謝罪もあっただろう。しかし、心から反省し謝罪をしている部員も間違いなくいる。
中には由香の事を尊敬の眼差しや憧れの目で見る部員もチラホラいるようだ。
その中でも相馬はその様子がハッキリと伝わってくる。
その中でも初めに瞬をからかった二人の部員は謝罪と思えない頭を軽く下げるだけであった。
それを相馬が慌ててフォローする。
『すみません、コイツ等、橘に全く勝てなくて意地になってしまって…』
『瞬君はそんなに強かったんだねぇ~』
由香は余裕の笑顔で二人の部員をからかうような笑顔で見つめた。
それを見た相馬が驚いた声で由香に返す。
『えっ?知らなかったんですか?橘は県大会常連ですよ?しかも毎回ベスト4に残ってます。』
瞬は照れたように
『相馬先輩も同じです!僕よりも強いですから!』
『瞬君の新しい魅力発見だね~。じゃあ君達は瞬君に歯が立たないからこんな形で意趣返ししたんだね~。お子ちゃまだもんね。仕方ないでちゅね~』
由香の煽りは止まらない…
『そんな事ねぇよ!拮抗してるから!』
『橘は学校から逃げてたんだよ!今なら俺の方が強い!』
『じゃあ、お姉さん強い所を見たいなぁ~』
意地の悪い笑顔を部員に向ける由香…
そして簡単に提案に乗ってくる部員二人…
周りの部員達はヒソヒソと…
その様子を見ていた相馬が場を収める様に言い放つ。
『それなら一本勝負で決めよう。どっちが勝っても剣士らしく遺恨は残さない!コレならどうだ?』
『二人とも凄い自信があるみたいだし、瞬君、本気出しても問題なさそうだね?』
由香はあえて部員二人が逃げられない空気を作り出し、瞬に向かってイタズラっぽく微笑んだ。
瞬は意を決してキリッとした顔付きに変わり部員二人を見据えた。
『わかりました。全力で…やる…』
部員二人も頷く。
こうして全て由香の掌の上で試合が始まろうとしていた。
その四に続く
由香が暴れ始めました(笑)
私の作品キャラが勝手に過去話を話したり、暴れます…
作者でも把握仕切れません(笑)




