↓ ↑ページトップへ
表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
貴族社会を奇策で殴る  作者: 水守 鳴
17章 魔王からの不当な求婚
90/133

ep.89 公爵からのプロポーズ

「国家……?」


「そうだ。化け猫最高家門の一つを貶めたんだ! 化け猫の魔王様と、化け猫の公侯爵家で化け狐魔王に正式に抗議する!」


「ええ!? そんなことが可能なんですか?」


 大伯父様は力強く頷いた。


「ああ。ユリジェンヌに恩を売る絶好の機会だ。全員、乗る。

それに、侯公爵家の猫たちはリトが幼い頃からお前を可愛いがってきたじゃないか? 

しかも、色炎の優先提供契約を結んでるのは誰だ? もちろん、化け猫の公侯爵連中だ」


「……」


「それと、化け猫の魔王様は面子を気にされる性格だ。性格抜きにしても、私が魔王様を動かそう」


 私が涙で濡れた瞳で大伯父様を見上げると、大伯父様は柔らかく笑った。


「マリアンヌとも即連携だ! マリアンヌは女性ネットワークに強い。女社会から狐魔王を叩き潰してもらおう」


「お祖母様が?」


 私がしゃくり上げると、呼吸の乱れが落ち着くまで、大伯父様は背中を撫でてくれた。


 泣き止むと、大伯父様は腕を離し、頭を撫でてくれた。


 すると、ファウバブト公爵が私に微笑んだ。


「安心してください。私の叔母は王太后です。母は強い。魔王の母から、魔王に天誅を下してもらいましょう」


「天誅……?」


「オローズが帰ってきたら、即連携です。オローズの兄は宰相、妹は王妃。これは嵐の予感がしますね。ちなみに、私も参戦します」


「ファウバブト公爵が!?」


「私は国際警察署長。最高責任者です。国際警察は国家間のトラブルの際に、調査や調停も行います。腕が鳴りますね。化け猫国とユリジェンヌに有利になるように、真実すら曲げてみせますよ」


 大伯父様は笑い出した。


「ハハハッ。調査の透明性はどこに行った?」


「普段はきっちり調査しますけどね。私の親友の大姪を貶めるとは笑止千万。権力は使うためにあるんですよ」


――ファウバブト公爵、黒いわ。でも……。


「ありがとうございます」


 私が笑顔になると、ファウバブト公爵は安心させるように頷いてくれた。直後、思い出したかのように顎に手を当てた。


「私の兄の一人が、セイレーンの国の侯爵家に婿入りしてます。兄は侯爵夫になって、ペネロペ=デ=シュシュラン公爵と同じ、王城交易課で働いてますよ」


「ペネロペ公爵と!?」


「ユリジェンヌ侯爵令嬢は、ペネロペ公爵の命の恩人でしたね。兄からペネロペ公爵に、事情を説明してもらいましょう。きっと、二人で力になってくれますよ」


 そこまで言い終わると、ファウバブト公爵は黒い笑みを浮かべた。


「毒鳥一族のハディッシュ家は、婦毒の変でユリジェンヌ侯爵令嬢に恩があります。前当主のアルバート=ファル=ハディッシュは醜態をさらしたが……。今回は働いてもらおうか。私の教え子だからな」


「あの……。アルバート様はすでにラムダ公爵に爵位を譲られてますわよ」


「アルバートは前当主として、就任したばかりのラムダ公爵の補佐をしています。まだ影響力は絶大さ。協力させるから、安心してください」


――頼もしすぎる……。ファウバブト公爵、最強すぎる……。敵に回したら終わりだわ。なんか、怖くなってきた。


 鳥肌が立ったときだ。黙って真剣に聞いていたチェーザマリーが、ソファに座る私の足元に跪いて優しい声で言った。


「リト、俺と結婚しないか?」


「は? ええ? なんでー!?」

 私の大声が部屋に響き渡った。ファウバブト公爵と大伯父様は目を大きく見開いた。


「俺と結婚すれば、お前はリト=ファル=ワルシャワ公爵夫人だ。ワルシャワは序列一位の公爵家だ。ワルシャワ公爵夫人を侮辱したなら、ワルシャワ家とヴァンパイアの国が化け狐魔王に抗議できる」


「……どういうことですか?」


「ヴァンパイアの魔王様は不死身で王妃を持たない。つまり、序列一位のワルシャワ公爵夫人はヴァンパイアの国のファーストレディさ。


それを妾呼ばわり。失礼にも程がある。


俺がヴァンパイアの魔王様とヴァンパイア公爵家に働きかけて、国家から正式に抗議文を送らせてもらうよ。ワルシャワ家からは当然、謝罪を要求だ」


「ええ!? えー!」


「生母王妃なんて、所詮は側室だ。リトには、ファーストレディが似合うよ。俺が証明する。全力で抗議する」


 彼の真剣な眼差しに、私は頬が赤くなった。

 すると、大伯父様が興奮した声で言った。


「それは良い! ぜひそうしなさい! チェーザマリー公爵なら婿に申し分ないよ」


――なにこれ!? チェーザマリーと私が結婚!? えー!? なんでなんで!?


「えっと……えっとぉ」


 私があわあわすると、ファウバブト公爵が楽しそうに笑った。


「ユリジェンヌ侯爵令嬢は混乱されてるようですよ。愛の告白の続きは明日されては? 今晩は入浴でもして、ゆっくりお過ごしください。私たちはこれから作戦会議をするのでね」


 私はこくこくと頷いた。


「それじゃあ、リト。お休み」

 チェーザマリーは立ち上がると、優しく微笑んだ。


 私は赤くなって俯いてしまった。


「リト! 無理して結婚しなくてもいいけどな。チェーザマリー公爵を振るなら、チェーザマリー公爵より良い男を連れてきなさい! いるならだが」


「ユリジェンヌ侯爵。行くよ」


 興奮収まらぬ様子の大伯父様を、ファウバブト公爵が引っ張って行った。


 チェーザマリーは笑い声を上げていた。


――チェーザマリーより良い男? 序列一位公爵で、もうすぐ宰相復帰予定で、優しくて頼りになって、髪と瞳の色が美しい彼より良い男……? 


いませんわよ! 誰!? 


対抗馬がいるとしたら、シェルバ公爵とかドラゴン皇太子とか? いやでも、"チェーザマリーより良い男です''って相手を連れてきたら、チェーザマリーに失礼ですわよ! 


 私は心の中で突っ込んだ。


 顔を上げると、部屋にはもう、誰もいなかった。


◇◇◇ 

 ベッドで目を覚ますと、茶髪の侍女が朝食を運んできた。


「おはようございます。ユリジェンヌ侯爵令嬢。オローズ公爵夫人から、今日は滞在の宮で朝食を召し上がるようにと言伝を承っています。食の宮では落ち着かないだろうと」


「そうなの? ありがとう」


――気を遣ってくれたのかな? 食の宮に行けば、チェーザマリーとも会うし……。ちょっと気まずいよね。何話していいか分かんないし……。


「お盆はこちらに置いておきますね」

 侍女は微笑むと、近くのテーブルに盆を置いた。


「今日の朝食の献立は、稲荷寿司、魔草粥と根菜の漬物、銅鶏の卵スープ、魔牛肉と揚ごぼうのサラダ、鮎の唐揚げ、ハーブチーズ、桜の油揚げ、杏仁豆腐、桂花ゼリーでございます。お茶は蘭茶をご用意しました」


「ありがとう」


 お礼を言ったときだ。扉を開けて赤髪の侍女が入室してきた。


「失礼いたします。洗顔用の金木犀湯をお持ちしました」


「ありがとう」


「お食事が終わりましたら、お召し替えとお化粧と髪結いをさせて頂きます。オローズ公爵夫人より、『まずは食べて元気を出してちょうだい』とのことです」


――オローズ公爵夫人、優しいわ……。


 食べ終わり、歯を磨き終わると、赤髪の侍女が着替えを持ってきた。


「本日は、こちらの浅葱色のワンピースはいかがでしょうか? 肌触りが良くて、裾の椿の刺繍が美しいですよ」


――浅葱色か……。どうしよう? これからチェーザマリーと話しにいくんだよね……。


「えっと。今日は可愛い服が着たいな。ピンクのワンピースとかがいいかも。あっ。髪には小さいリボンがつけたい。靴下はレースの白がいいな」


「承知しました」


 侍女は一礼すると洋服箪笥の引き出しを開けてワンピースをしまった。そして、ピンクのワンピースや靴下を取り出した。


「こちらはいかがでしょうか? 珊瑚色のワンピースです。襟と袖には矢絣文様。リボンも矢絣文様でお揃いです。靴下は保温性に優れたレース素材でできております」


「可愛いわ! それにする!」


 着替えを手伝ってもらうと、私はドレッサーの前に座った。


「本日は、髪型はいかがされますか?」


――チェーザマリーの前でしたことない髪型ってなんだろう?


「今日は編み込みのハーフアップがいいな」


「かしこまりました。他にアクセサリーはつけますか?」


――タンザナイトのイヤリング、つけようかな? でも、プロポーズの返事をしに行くのにつけるのは、ちょっと恥ずかしいな。


「ううん。いらない」


「さようですか。お化粧はどのような感じにしますか?」


「可愛い感じがいい。ピンクのアイシャドウと、ラメをちょっと使って欲しい。ベースはブラウンね」

「承知しました」


 髪結いと化粧が終わると、私は念入りに鏡で自分の姿をチェックした。


――よし! 大丈夫!


「あの、チェーザマリーがどこにいるか知ってる?」


「公爵でしたら、蒼薔薇の庭を散策なさっているそうです。ご案内いたします」



評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。