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貴族社会を奇策で殴る  作者: 水守 鳴
13章 毒鳥功労祭、毒殺事件
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ep.68 毒鳥公爵夫妻に君を紹介してあげる

 司会者が言い終わるなり、盆を持った給仕たちが入室してきた。


――凄い! 豪華なごちそう!


 大きな盆の上には、大小合わせて皿が八皿あった。

 どの食材も美しく盛り付けられ、秋らしい黄色と赤色の食材で統一されている。


「鯛と秋刀魚の煮付け、おいしいですわね。ササラ公爵とチェーザマリーはどの料理が好きですか?」


「僕は黃さくらんぼの漬物かな。甘くて美味しいよ。ちょっとしょっぱいのもいいね。チェーザマリー公爵は?」


「俺が好きなのは、この豆グラタンだな。スパイスが効いてる。しかも、気づいたか? 豆の種類が一粒一粒違う」 


「ええ!? そうなんですか!」


 私はササラ公爵とチェーザマリーと楽しくお喋りしながら、存分に料理を楽しんだ。


 途中、なんとなく気になってファウバブト公爵を見た。


 彼は左隣に座るマリア宰相と楽しそうに話をしていた。


 全員が食べ終わり、盆が下げられると、司会者が声を張り上げた。


「では今から、立食パーティーを始めさせて頂きます。皆さま、お立ちください。会場を整えますので、少々お待ちください。」


 司会者が一礼すると、扉を開けて執事たちが入ってきた。


 彼らは手際よく、舞台や机、私たちが座っていた椅子などを片付け始めた。


 あっという間に、会場は様変わりした。


 会場の中央には机が設置され、ジュースとワインのグラスが並べられた。先程満腹になったせいだろう。料理は並べられていない。


「皆さま、どうぞご自由にご歓談ください」


 司会者がそう言うなり、全員が談笑を始めた。


 毒鳥一族や王家の方々などは大勢の貴族に囲まれている。


――どーしよ! 誰と話そう!


 戸惑っていると、隣に立っていたチェーザマリーが私に優しく微笑んだ。


「リト。まずは王家の方々に挨拶に行かないか?  俺が紹介してあげるよ」


「まあ! ありがとうございます! 頼りになりますわ!」


 私が笑顔になったときだった。


「まずは毒鳥一族と話しに行こうよ。今日は毒鳥功労祭なんだからさ。主役と話さなきゃ。それに、王家の方々は毒鳥一族以上に貴族から囲まれてる。後で挨拶に行けばいいよ」


 背後から声が聞こえて、私は振り返った。そこには、ファウバブト公爵が立っていた。


――びっくりしたー! ファウバブト公爵ってば、いつも背後から登場するわね!


「私がユリジェンヌ侯爵令嬢をアルバート=ファル=ハディッシュ公爵に紹介してあげるよ。彼とは師弟関係でね」


「師弟……?」


「そうだよ。昔、幼いアルバートに頼みこまれて魔術をいくつも教えてあげたんだ。チェーザマリー公爵と私と君の三人で、ハディッシュ公爵家の方々に挨拶に行こうよ」


「それは良い。ぜひそうしよう」

 チェーザマリーは即座に賛成した。


――どーしよー! ファウバブト公爵のことはあんまり好きじゃないけど……。提案は魅力的だわ! 乗った方が良さそうだわ。


「ありがとうございます。お願いします」


 私が頭を下げると、ファウバブト公爵は満足そうに笑った。


「私、エル=ファル=ハディッシュ公爵夫人とは友人よ。私もご一緒していい?」


 突然の声に、私は振り向いた。そこには、ペネロペ公爵が立っていた。


「ペネロペ公爵!? びっくりしましたー!」


「驚かせてごめんなさいね。私が公爵夫人にあなたを紹介してあげるわよ」


――公爵夫人に!?


「それは良い。四人で行きましょう」

「そうだな。リト、良かったじゃないか。ファウバブト公爵とペネロペ公爵がいれば心強いぞ」


 ファウバブト公爵とチェーザマリーは笑顔で賛成した。


 私は勢いよく頷いた。


――ペネロペ公爵もいてくれたら、最強すぎるわ!


◇◇◇ 

「あっ! ファウバブト先生! お久しぶりです!」


 ハディッシュ家の方々は十名の貴族たちに囲まれていた。


 しかし、私たちが近くまで行くと、アルバート公爵がファウバブト公爵に気づき、彼の方から私たちに歩み寄ってきてくれた。


 アルバート公爵に続いて、二人の女性もこちらに来た。おそらく、公爵夫人だろう。


「やあ。アルバート。昔はあんなに小さかったのに。公爵になるなんて感慨深いね」


「小さいって。もう四十年前のことですよ! 僕は大人です!」


 アルバート公爵が胸を張ると、ファウバブト公爵は可笑しそうに笑った。


「そうか。知っての通り、こちらはチェーザマリー公爵とペネロペ公爵だけどね。今日はぜひ、こちらのレディを紹介したいんだ」


 ファウバブト公爵は私を優雅に手で示した。


「こちらはユリジェンヌ侯爵令嬢。育ての親はユリジェンヌ侯爵。祖母はマリアンヌ男爵夫人。今話題の史上七人目の色使いさ」


「はじめまして。リト=ユリジェンヌと申します。

ハディッシュ家の方々にお会いできて光栄です」


 私が礼をすると、アルバート公爵は瞳を輝かせた。


「ああ! 君が色使いか! ユリジェンヌ侯爵の大姪だろ。ユリジェンヌ侯爵の話は、先生からよく聞いてたよ」


「そうなんですね! 本日はこのような祭典にお呼び頂き、光栄です」


 私が笑顔を向けると、アルバート公爵の左隣に立っていた夫人が口を開いた。


「まあ。美しいお嬢さんね。ユリジェンヌ侯爵もマリアンヌ男爵夫人も、さぞや鼻が高いでしょう」

「ありがとうございます」


 私がお礼を言うと、ペネロペ公爵が夫人に微笑んで言った。


「ユリジェンヌ侯爵令嬢とはね、昨日のディナーで仲良くなったのよ。ガールズトークで盛り上がっちゃった」


「まあ。なんの話をしたの?」


「それは内緒よ。ここには男性たちがいるもの。後で私たちレディだけで話しましょ」


「楽しそうね。ぜひお喋りしたいわ」


「ユリジェンヌ侯爵令嬢は品があって、優しい令嬢よ。三時間も長話しちゃったわ」


「確かに、品があるわ」


 夫人とペネロペ公爵は親しそうに笑い合った。そして、夫人が私に微笑んだ。


「私はエル=ファル=ハディッシュよ。アルバートの妻なの。こっちは私の妹。アルバートのもう一人の妻よ」


 エル公爵夫人はアルバート公爵の右隣に立つ女性を手で指し示した。


「はじめまして。エンダ=ファル=ハデュッシュと申します。ユリジェンヌ侯爵令嬢とペネロペ公爵、チェーザマリー公爵、ファウバブト公爵に挨拶できて光栄です」

 エンダ夫人は丁寧に礼をした。


――エル夫人とエンダ夫人、姉妹なんだ……。全然似てないわ!


 エル夫人は桜色の髪と瞳を持つ、可愛らしい雰囲気の美女だ。エンダ夫人は金髪碧眼ですらりとしていて、落ちついた雰囲気を身に纏う美女だった。


 アルバート公爵は、黒髪に茶色い瞳を持つ美男だった。


――ファウバブト公爵とペネロペ公爵がいて良かった! 第一印象はばっちりね!


 私が心の中でほっと息を吐くと、アルバート公爵が瞳を輝かせて私に聞いた。


「ユリジェンヌ侯爵令嬢は凄いね! 色炎を操れるんだろ! 見せてくれないか?」

「えっと……。今ですか? ここで?」


 私が戸惑うと、チェーザマリーが壁を指差して言った。


「この会場の壁には、百本の燭台が設置されてる。まるで、リトのために準備されてるみたいじゃないか?」


 私がはっとすると、アルバート公爵は楽しそうに笑った。


「実は、色使いがいらっしゃると聞いて、僕が魔王様に事前に頼んだんだ。会場には燭台を百本用意して欲しいとね。僕がユリジェンヌ侯爵令嬢に、色炎を見せて欲しいと頼むから、と」


「えー! なんでそんな回りくどいことを!? 事前に言ってくだされば、舞のときとかに色炎を披露しましたわよ?」


「だって、色炎は高額じゃないか。王家にこんなにもてなされてるのに、魔王様に『色炎も欲しいです』なんて頼めないよ。でも、僕が自分から頼むなら自由だろ? いくらでも払うから、見せてくれないか?」


「そんな……。今日は功労祭ですもの。私から色炎を贈らせて頂きますわ」


「ほんと!? 嬉しいよ!」


 アルバート公爵は満面の笑みを浮かべると、声を張り上げた。


「今から、色使いに色炎を生み出してもらいます! アルバート=ファル=ハデュッシュがユリジェンヌ侯爵令嬢に頼みました!」


――なんで宣言してるの!?


 会場がどよめき、全ての貴族と王族が私たちを見た。


 私が硬直していると、アルバート公爵は軽く私の肩を叩いた。 


「いきなり会場に色炎が宿ったら、皆びっくりするだろ? だから今、呼びかけたんだ。それに、毒鳥功労祭では、毒鳥一族は自由な振る舞いが許されてるんだ。これくらい大丈夫だよ。さあ、見せてくれ」


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