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貴族社会を奇策で殴る  作者: 水守 鳴
13章 毒鳥功労祭、毒殺事件
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ep.67 君との関係に、突っ込みが止まらない

◇◇◇ 

 広い会場には、大きな円形の舞台が用意されていた。その舞台を囲うように、コの字型の机が配置されている。


「ユリジェンヌ侯爵令嬢。どうぞこちらへ」


 私は上級女官に伴われて、自分の席に案内された。そして、そこに座る魔族の顔を見た瞬間、ぱっと笑顔になった。


「チェーザマリー! ササラ公爵! おはようございます!」


 私の右隣の席はチェーザマリー、左隣はササラ公爵だったのだ。


「ユリジェンヌ侯爵令嬢! 久しぶり!」

「おはようリト。今日は大人っぽい格好だな。似合ってるね」


 二人は私に明るい笑顔を向けてくれた。


「ササラ公爵! お久しぶりです! タシュビッツでは案内して頂きありがとうございます」

「いいよ。いいよ。僕も楽しかったし。あっ。それ、虹色真珠じゃん。早速つけたんだ」


「はい! 気に入ったので」

「そっか。クレイ侯爵もノワール卿も喜びそうだね」


 ササラ公爵は楽しそうに笑った。私はチェーザマリーにも声をかけた。


「似合ってます? 大人っぽいですか?」

「ああ。似合ってるよ」


 チェーザマリーが優しく微笑んだので、私は少しだけ頬を膨らませた。


「もう未成年扱いはさせませんからね!」

「おいおい。バー・ゴスメーデで未成年だと勘違いしたこと、まだ根に持ってんのか?」


「はい。そうです」

「許してくれ。今日は大人っぽいよ。三十歳くらいに見える」


「ちょっともう! 十歳しか違わないんですけど!」


 チェーザマリーとササラ公爵は声を上げて楽しそうに笑った。


「リボンが可愛いね。編みおろしもゴージャスで似合ってる。ユリジェンヌ侯爵が見たら称賛の嵐じゃない?」

 背後からの突然の声に、私は振り返った。そこには、ファウバブト公爵が立っていた。


「ファウバブト公爵! おはようございます」


「おはよう。ユリジェンヌ侯爵令嬢。残念だな。君の隣はササラ公爵か。私はササラ公爵の隣だよ」


 ファウバブト公爵は、ササラ公爵に優雅に一礼した。

「お隣失礼」


「ファウバブト公爵の隣なんて光栄です。僕がユリジェンヌ侯爵令嬢の隣なのは勘弁してください。席次は怪鳥の王女様が決めたらしいので」


「ユリジェンヌ侯爵令嬢の隣だったら嬉しいけどね。私もササラ公爵の隣で嬉しいよ。今日は楽しもうじゃないか」


 ササラ公爵とファウバブト公爵が微笑み合うと、近くに控えていた従者がファウバブト公爵の席の椅子を引いた。


 ファウバブト公爵が座ると、女官が私の席の椅子を引いてくれた。私はササラ公爵とチェーザマリーの間に座った。


――チェーザマリーの隣は私だけか。


 チェーザマリーの席は机の一番端だ。つまり、右隣は存在しない。


「あの……外国の貴賓は端の席なんですか?」


 私がチェーザマリーに聞くと、チェーザマリーは不思議そうな顔をした。


「ああ。貴賓は毎回端の席だ。ちなみに、怪鳥の公爵たちも端の席だよ。中央の辺は王族と怪鳥一族が座る。中央に近い位置は伯爵と侯爵が座る。だが、どういう基準で席次を決めてるのかは公開されてない」


「そうなんですね……」


◇◇◇ 

「おはよう。ユリジェンヌ侯爵令嬢。残念だな。君の隣はササラ公爵か。私はササラ公爵の隣だよ」


――おい! チェーザマリーもユリジェンヌ侯爵令嬢の隣だろ。僕が隣なのは突っ込むのに、チェーザマリーが彼女の隣なのはいいんかい!


 僕は心の中で即座に突っ込んだ。


――ファウバブト公爵は、ユリジェンヌワルシャワカップルを推してんのか? ストレートに探ってみるか。


 ファウバブト公爵が席につくと、僕は小声で聞いた。


「ユリジェンヌ侯爵令嬢とチェーザマリー公爵、付き合ってるそうじゃないですか? お似合いだと思いません?」


 ファウバブト公爵はにやりと笑った。


「ああ。あの噂か。ただの噂なんじゃないか? 心の中は分からないからね」


――は?


「ササラ公爵は二人が結婚すると思ってるのか?」

「さあ……。どうでしょう?」


「ほお。噂を信じてないのか? 君は二人とタシュビッツを観光したって聞いたよ。どう思った?」


――恋人になりかけに見えます……。なんて言わないでおくか。ひとまず友人らしいし。ユリジェンヌ侯爵令嬢は噂が嫌みたいだしな。


「噂はデマなんじゃないですか? 僕には二人が友人に見えますよ」


「へえ。ササラ公爵は何か知っているみたいだな」


――は? 怖い怖い。なんで分かった? 洞察眼、エグいって。


「まあ、成り行きを見守ろうじゃないか」

「そうですね」


――成り行きを見守る……。つまり、ファウバブト公爵にとっては二人の関係進展が前提!?


 楽しそうに微笑んでいるファウバブト公爵を見て思った。


――あなたの方が、何か知ってるのでは?


◇◇◇ 

 やがて続々と参加者が集まり、着席した。 


「怪鳥王家の方々のご入場です!」

 司会者が声を張り上げると、怪鳥の魔王と王妃、王太子と王女が会場に足を踏み入れた。


「魔王様と王妃様、王太子様と王女様に挨拶いたします。ナルリンネ王家の方々にお目にかかれて光栄でございます」


 私たちは立ち上がると、声を揃えて一斉に礼をした。


「本日はお集まりくださり、ありがとうございます。どうぞお座りください」  


 王妃に言われ、私たちは席についた。王家の方々も席についた。


――あれが怪鳥王家の方々なのね……。滲み出る魔力が半端じゃないわ……。


 魔王夫妻はピンクの髪と赤い瞳を持つ美男美女だ。


 魔王と王妃はいとこ同士らしい。切れ長の目元も、顔立ちも、双子のように瓜二つだ。


 王太子と王女も同様だった。 


――王太子が男性で、王女が女性で良かったー! 同性だったら、似過ぎてて間違えそうだわ……。うっかり間違って名前を呼んだりしたら大変だし……。


 そんなことを考えていると、司会者が再び声を張り上げた。


「ハル伯爵家、ハディッシュ公爵家、ハナメ公爵家の方々のご入場です。毒鳥一族の皆さまがお揃いになられました!」


――来た! 毒鳥一族!


 私は、頭に叩きこんだ毒鳥一族の知識を頭の中でおさらいした。


 毒鳥を操ることができる怪鳥は三家門のみ。


 毒鳥一族は、ハル伯爵家、ハディッシュ公爵家、ハナメ公爵家の男性と女性で構成される。


 彼らは魔族の中でも特に子どもができづらいため、一夫多妻制と一妻多夫制が許可されている。


 怪鳥の国は一夫一妻制だが、貴重な血統を失わないように、国が特別許可を出したのだ。


 怪鳥一族は必ず、最低二人以上の妻か夫を持つ。


 毒鳥を操ることができるのは三家の血筋のみだが、嫁入りした女性と婿入りした男性も国から特別な待遇を受けることができる。


 毒鳥一族は、王城上納金の減額などで普段から優遇され、国から手厚く保護されているのだ。


 扉が開くと、十七人の男女が姿を現した。


――彼らが毒鳥一族なんだ!


「本日は私たちのためにお集まり頂き、ありがとうございます。代表のアルバート=ファル=ハディッシュが心からお礼を申し上げます。どうぞ最後までお楽しみください」


 一人の男性が一歩前に出て優雅に一礼すると、他の十六名も礼をした。


 私たちは拍手を送った。


 毒鳥一族が席に着こうとすると、王女が椅子を三つ引いた。

「どうぞ。ご当主三名からまずはお座りください」


――ええ!? 王女様が自ら椅子を引くの!?


 伯爵と公爵二名は笑顔で王女様に礼を言って着席した。三人が席に着くと、魔王が声を張り上げた。


「では、毒鳥功労祭を始めよう!」

 

◇◇◇ 

――なんて綺麗な舞……。


 舞台の上で舞う踊り手の一挙手一投足に、私は見惚れていた。


 功労祭が始まると、まずは楽師たちが演奏を始めた。そして、文官たちにより、毒鳥一族のためだけに詠まれた感謝の詩が朗読された。


 それが終わり、舞踊が始まったのだ。


 踊り手たちの荘厳華麗な衣装や、静かでありながら迫力のある動きに、私は食い入るように見入っていた。


 夢中になっていて、私は気づかなかった。目を輝かせる私を、チェーザマリーが時折楽しそうに見ていることに。


 そんなチェーザマリーをササラ公爵とファウバブト公爵がさりげなく観察していたことに。


 舞が終わると、会場は盛大な拍手に包まれた。


 拍手が収まると、司会者が声を張り上げた。


「今から、王家の方々により、美食が下賜されます。魔界中の珍味を集めた逸品です。どうぞお楽しみください」


 

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