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貴族社会を奇策で殴る  作者: 水守 鳴
13章 毒鳥功労祭、毒殺事件
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ep.66 公爵と恋バナガールズトーク

◇◇◇ 

「俺の感情を察してくれないか?」


 チェーザマリー公爵に囁かれ、私は目を見開いた。そして、口角を吊り上げた。


――ふうん。そういうことだったのか。


 ユリジェンヌ侯爵令嬢とチェーザマリー公爵が恋仲だという噂は聞いていた。だが、実態は違うらしい。


――あいつはさぞ喜ぶだろうな。リトがチェーザマリー公爵と結婚してくれたら……。とかなんとか言ってたもんな。


 あいつは大姪を結婚させたがっている。私に会う度に、「リトに称号を持たせたい」とわめいている。


――よかったじゃないか。結婚したら、ファル称号獲得だ。


 ワルシャワとユリジェンヌ。文句のつけようのない組み合わせだな。


 私は微笑みながら、涙の館に向かった。


◇◇◇ 

 毒鳥功労祭まで、私は部屋でのんびり過ごしていた。


 食事はほぼ毎回、マリア公爵と一緒にとっていた。

私たちは食堂に行く時間がほとんど同じだったのだ。


「国立公園にはもう行った? 珍しい魔獣や魔鳥が沢山いるわよ」 


 マリア公爵にそう言われたので、毒鳥功労祭の前日には観光に行った。


 外出申請を出すと、騎士が一人、護衛として同伴してくれた。


 こうして、国立公園で観光も楽しんだ後、明日に備えて早めの夕食をとっていたときだ。


「ご一緒してもよろしいかしら?」


 サラダを頬張っていると、背後から澄んだ美しい声が聞こえてきた。


 私は振り返り、慌てて立ち上がった。


 そこには、ライムグリーンの巻き髪とレモンイエローの瞳を持つ美女が立っていた。


「はじめまして! リト=ユリジェンヌと申します!」


 彼女は垂れ目がちな目を細めた。

「はじめまして。私の名前はペネロペ=デ=シュシュランよ」


――セイレーンの国の序列二位公爵だわ!


「あなた、初参加でしょう? 私も毒鳥功労祭の参加は初めてなのよ」

「私も?」


「普段はセイレーンの国序列一位のアリーテ公爵が来るんだけどね。彼女、今は体調不良なのよ。だから、私に白羽の矢が立ったの。私、公爵になってまだ三年目なのよ。功労祭、わくわくしちゃうわ!」

 

◇◇◇ 

「まあ! 色使いに覚醒したときって、突然だったのね! ゼリーを食べていたときだなんて、面白いわ」


「ふふっ。そうなんですよ」


 私とペネロペ公爵は食事をしながら、話に花を咲かせていた。


――ペネロペ公爵って、優しいし話しやすいかも。


「ところで、シュク=デ=メガヨー公爵にはもうお会いした?」


――シュク公爵は確か、ゴーストの国の序列一位の公爵よね。


「いいえ。まだです」

「そう。まだ着いてないのね。執事に聞いたんだけどね、貴賓はシュク公爵以外、もう全員到着したんですって」


「そうなんですか?」

「ええ。残念だわ。マリア公爵とユリジェンヌ侯爵令嬢とシュク公爵と私で夕食を食べたかったんだけど……。外国代表の女性メンバーは私たち四人だけじゃない?」


「ええ。男性陣は涙の館で七人ですよね。賑やかですね」


「まあ。三人しか違わないけどね。羨ましいわ。人数が多ければ多いほど、交流の機会は増えるし。別に、男女で滞在場所分けなくてよくない? そしたら十一人で賑やかよ」


「確かに? でも、女性だけだとなんとなく安心感ありますよね」


 そう言うと、私はオレンジジュースに口をつけた。

「そう? ところで、チェーザマリー公爵と恋仲って本当? 涙の館は遠いし、残念ね」


 私はむせそうになり、慌ててグラスを置いた。


「その噂、まだ収まってないんですか?」

「まだ収まってない?」


「はい! 完全に誤解です! 私たち、そんなんじゃありません!」


 ペネロペ公爵は驚いた顔をした。


「そうなの!? あらあら。二人でデートや乗馬をして、すすきパーティーでは三曲全部踊る約束をして、タシュビッツでは泊まりでパートナーとして参加されたって聞いたわ。それで……友人?」


「はい! そうです!」

「まーあ。そうなの……」


――えっと……。一応納得してもらえた……のかな!?


「ところで、ユリジェンヌ侯爵令嬢はどんな方がタイプなの?」

「タイプ!?」


 私が少し赤くなると、ペネロペ公爵は楽しそうに笑った。


「そうよ。女性だけだし、恋バナしましょ」


「恋バナ……。えっと、優しくて頼りになるかっこいい男性かな? ペネロペ公爵は?」


「そりゃあもちろん、イケメンで有能な男よ。好みは茶髪と黒目ね。ユリジェンヌ侯爵令嬢は?」


「えっと……。金髪碧眼の男性がタイプです。色彩が綺麗なので」


「あら? 色素薄い系が好きなの?」


「いや、色の組み合わせが好きというか……。金と青って綺麗じゃないですか?」


「そうね。そういえば、チェーザマリー公爵はブルーの瞳よ。瞳だけなら好みじゃない? 彼、顔はまあまあね。平凡な顔だし」


――ちょっとー! さらっと失礼じゃないですか!?


 私は動揺を顔に出さずに、おっとりと笑った。


「……ペネロペ公爵は、気になる方はいないんですか? 茶髪と黒目の男性で」


「いるわ」

「え!? 今、いるんですか!?」


 ペネロペ公爵は指を組むと、瞳をきらきらと輝かせた。


「アリウス公爵家の、エリン卿よ。アリーテ公爵の弟よ。税理士で、優秀で、イケメンで、しかも茶髪に黒目なのよ! 今、狙ってるわ!」

「狙ってる!?」


「そうよ! 彼は卿とはいえ、序列一位の公爵家直系で、現当主の弟よ! イケメンだし、女からモテるわ。良い男は争奪戦よ! うかうかしてると取られるわ!」


「でも、あなたは美貌の公爵じゃないですか。求婚したら、エリン卿はあっさり承諾されるのでは?」


「エリン卿はね、艶聞が絶えない男よ。簡単にゲットできないわ!」

「……浮気性なんですか?」


「そうよ。でも、言い換えれば経験豊富でしょ? 結婚したら浮気しないなら、それでいいわ」

「いいんですか!?」


――私なら、一途な男性がいいな……。


「別にいいわ。私は公爵よ。気に入らなければ、卿なんて離婚よ。浮気した夫が悪いじゃない?」


――ペネロペ公爵、強い!


「なるほど……。浮気は駄目ですよね……」

「ユリジェンヌ侯爵令嬢は? 気になる男いないの?」


「今はいません……」

「ふーん。可愛いし、あなたなら男が放っておかないわよ。選び放題よ」


「選……び放題!? でも、爵位持ち男性とかはモテますよ。それこそ、競争率が高いのでは?」


「何言ってるの!? 女ならライバルは蹴散らしなさい!」


――ええー! ペネロペ公爵、最初とイメージが違いすぎる……!


「私は公爵の仕事の補佐をして欲しいから卿と結婚したいけどね。あなたは当然、爵位持ち狙いでしょ?」


「え? いや、結婚するなら卿がいいかな……」

「えー! なんで? 爵位持ちの妻か、卿の妻かで、待遇は変わるわよ!?」 


――跡継ぎを産みたくないからとは言いづらいな……。それっぽいこと言って誤魔化そう。


「えっと……。卿の方が楽そうだなって。それに私、寂しがり屋なので、パートナーとできるだけ一緒に思い出をつくりたいんです。ほら、爵位持ち男性は忙しいでしょう?」


「まあまあ。ユリジェンヌ侯爵令嬢と卿が結婚!? 卿からしたら、超良縁よ!? 私が卿なら結婚したいわよ!」


 その後、ペネロペ公爵とのお喋りは大いに盛り上がり、私が部屋に戻ったのは二十一時だった。


 私たちは三時間もお喋りをしていたのだ。


◇◇◇ 

 毒鳥功労祭当日になった。


 私は朝から入浴して、全身に香油を塗ってもらうと、身支度を整え始めた。


 髪は頭頂部から編みおろしに結ってもらった。髪飾りは黒色のビッグリボン、イヤリングは黒真珠、ネックレスは虹色真珠だ。


 ドレスは、裾がふんわり広がった黒色のコルセットドレスにした。


――毒鳥功労祭は皆、おしゃれしてくるらしいし……。気合い入れなきゃ!


 最後に、ガラスのハイヒールを履いてから、全身鏡で自分をチェックした。


――うん! 黒でまとめてよかったかも! ゴージャスなネックレスに目がいくわね!


 ネックレスは、五粒の虹色真珠の周りを縁どるように、装飾に白瑪瑙と銀をふんだんにあしらった逸品だ。


「ユリジェンヌ侯爵令嬢! お綺麗です! 女神みたいです!」


 身支度を手伝ってくれたアトリは、私よりもテンションが上がっていた。


――よし、準備万端! 会場に出発だわ! 


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