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貴族社会を奇策で殴る  作者: 水守 鳴
12章 国一番のロマンチック・ドラマチックカップル
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ep.59 嫉妬の芽

◇◇◇ 

 私たちは、花人魚の国の隣国、怪鳥の国に一カ月滞在することになった。


 怪鳥の国は、自然が多くて肥沃な大地だ。美しい景色も沢山ある。


 魔鳥の中では、怪鳥だけが人型になることができる。


 怪鳥たちは普段は人の姿で暮らしていて、魔族語を喋り、文明を持っているのだ。


 しかし、必要があれば怪鳥の姿に変化する。彼らは特別な魔術で魔獣や魔鳥を従えることができる。魔獣と魔鳥たちの長のような存在なのだ。


――怪鳥の国って、どんなところなのかな?


 私はドキドキしながら怪鳥の国へ向かった。


 花人魚の国の王都関所から、怪鳥の国までは魔道で約十五時間だ。


 朝早くに出発した私たちは、馬車に揺られて魔道を走り、途中下車して昼食と夕食をとった。


 滞在先に着いたときには深夜になっていた。


 私たちの滞在先は、怪鳥の国のラスマン領だ。


◇◇◇ 

 ラスマン領は、序列一位公爵のイザベラ=デ=ラスマンが治める広大な土地であり、怪鳥の国の一大観光地だ。


 リドル公爵とイザベラ公爵が旧知の仲なので、旅行中、私たちはご厚意でラスマン邸に滞在することになった。


「ようこそいらっしゃいました! リドル公爵、モモン前公爵夫人、ソウ前公爵、ケイミル公爵令嬢! ゆっくり寛いでくださいね!」


 イザベラ公爵は私たちを大歓迎してくれた。


 彼女は漆黒の髪と水色の瞳を持つ美女だった。


 イザベラ公爵は、自ら屋敷の案内をしてくれた。


「ラスマン公爵邸には、広いプールがありますよ。いつでも人魚姿に変化して泳げますから、自由に使ってください」


 中庭に出ると、そこには本当に、広いプールがあった。


「俺は泳ぐのが嫌いな人魚なんだ。知ってるだろ? プールは母上と父上とケイミルだけで楽しんでくれ」


 リドル公爵が苦笑すると、イザベラ公爵とモモン夫人とソウ様は可笑しそうに笑った。


――え……。リドル公爵、人魚なのに泳ぐの嫌いなの? 


 来て早々に、私は彼の意外な一面を知った。

 

◇◇◇ 

 私たちはラスマン領の美しい景色を見て回った。


 郷土料理に舌鼓を打ち、博物館やプールも楽しんだ。


 晩餐は、イザベラ公爵と一緒にとることが多かった。


 ラスマン領は王都のすぐ隣にあり、イザベラ公爵は王城に出勤する際は自邸から通勤していた。仕事は毎日十八時に終わることが多いので、二十一時に五人で食卓を囲んだ。


 イザベラ公爵とリドル公爵は、どちらも財務部所属だった。だから、食事の時間は二人で経済の話をしていることが多かった。


――リドル公爵って、仕事の話をするときはこんな顔するんだ……。かっこいい!


 初めて見る仕事人の顔に、尊敬の念を抱いた。


 やがて、三週間が経過した頃、イザベラ公爵が私たちに提案した。


「王城で、怪鳥の王女様がパーティーを開くんだ。一緒に行かないか?」


 私たちは賛成した。そして、私とリドル公爵とイザベラ公爵の三人でパーティーに参加することになった。


 イザベラ公爵は私のために、青いドレスを贈ってくれた。私が参加すると思って、事前に用意してくれたらしい。


「ケイミル公爵令嬢の瞳の色と同じだ。きっと似合うよ」


 そう言って、青い鳥のイヤリングまで贈ってくれた。


「ありがとうございます!」


――イザベラ公爵って、優しいのね。でも、なんで私だけに贈るんだろう?


 不思議に思っていると、イザベラ公爵は少しにやにやしながらリドル公爵を小突いた。


「王女様のパーティーで意中の相手に告白した貴族はな、毎回成功してるらしい。最近、王女様は縁結びの力があるっていう伝説が生まれてるんだ。お前、そろそろ相手を見つけて結婚したらどうだ?」


「俺はまだ結婚する気はないよ。イザベラこそ結婚したらどうだ?」


「は? 私は面食いなんだ。私より美形の男じゃないと嫌だな」


 楽しそうに喋っている二人を見て、なぜか私は胸がもやもやした。


――イザベラ公爵とリドル公爵って、仲良いんだな。なんか、嫌かも……。あれ? なんでかな?


 私は心の中で首を傾げた。


――イザベラ公爵、未婚なんだ……。もし、リドル公爵とイザベラ公爵が結婚したら、お似合いなんじゃないかな……。序列一位の公爵同士だもん……。話も合うみたいだし……。


「どうした? ケイミル公爵令嬢? 顔が暗いぞ」


 私ははっとした。イザベラ公爵とリドル公爵が心配そうに私を見ていた。


「えっと……。王女様のパーティーなので、緊張してるみたいです」


 私が無理やり微笑むと、イザベラ公爵は優しく微笑んだ。


「そうか。安心するといい。私が有力者の怪鳥貴族と王女様に君を紹介してあげよう」


「ほんとですか!? ありがとうございます!」


――イザベラ公爵って、なんて親切なの……。魅力的な女性だな……。モテそうだな……。リドル公爵は女嫌いなのに、イザベラ公爵とは仲良いんだ……。


 私は、もやもやした。自分より魅力的な女性に嫉妬してるみたいで、嫌になった。


 これ以上考えたくなくて、私は自分の気持ちに蓋をした。

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