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貴族社会を奇策で殴る  作者: 水守 鳴
12章 国一番のロマンチック・ドラマチックカップル
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ep.58 家族と新しい人生をつくりたい!

◇◇◇ 

 私とリドル公爵とモモン夫人とソウ様は、食堂に移動した。


 四人で談笑しながらディナーを楽しんでいると、ソウ様が真剣な顔で切り出した。


「もう病は治ったし……。ケイミルはフェアリーの国に帰るのかい? なんだか寂しいね……。いつ帰るつもりだい?」


――私、帰りたくないな……。モモン夫人とソウ様とリドル公爵と一緒にいたいな。


 療養中、両親は毎年一回、私を訪ねて来てくれていた。でも、私の中ではもう、モモン夫人とソウ様が両親同然になっていた。リドル公爵に至っては、兄だ。


 私は素直に自分の気持ちを伝えることにした。


「私、帰りたくないです……。その……。モモン夫人とソウ様が、私の両親同然です。だって、約十年間、実の両親より一緒にいましたから……。リドル公爵はお兄さまみたいです。私、お別れは寂しいです」


 モモン夫人とソウ様とリドル公爵は、私の言葉にとても喜んでくれた。


 そして、ソウ様が言った。

「なら、花人魚の国に住んだらどうだ? 私にとっても、ケイミルは娘同然だ。帰国したら寂しいね。ケイミルはセンスがあるし、王城装飾課で働いたらどうだろう?」


「私が……花人魚の国に住む? 王城装飾課で働く?」


「そうだ。外国人が王城で働くときは特別な許可がいるがね。私が推薦状を書いてあげよう。そしたら、王城装飾課で働けるよ」


「嬉しいです! そうしたいです!」


「王都には、ウララ家の傘下のホテルがある。そこの部屋に住んで、王城に出勤したらどうだろう? 本当は王都のウララ邸に住ませてあげたいが、リドルが住んでるからな。未婚の男女同士が同棲したら、色々言われるだろうし」


――確かに……。  


「ありがとうございます! 私、このご恩は忘れません!」


 私は頭を下げた。心からの感謝だった。


 顔を上げると、モモン夫人が口を開いた。


「私とソウが、花人魚の国の社交界になじめるように協力してあげるわ。花人魚の国にはデビュタントなんてめんどくさい習慣もないし。今からでも社交し放題よ!」


「そうだ。花人魚の国ではパーティーに参加するときは、男女パートナーでの参加が必須だ。私がパートナーになってあげよう。花人魚の有力貴族たちを紹介してあげるよ」


「ええ!? ソウ様が私のパートナー!? いいんですか?」


「ああ。この国では、パートナーは未婚者でも、既婚者でもいいからね。」


――元序列一位公爵がパートナーになってくれたら、最強のバックだわ……。


「まずは半年間、社交して人脈を作ってはどうかな? その後で、王城に勤務するといい。知り合いがいれば、王城勤務のときに色々助けてもらえるよ」


「分かりました。そうします」


 頷いた瞬間、ふと疑問が湧き上がってきた。


――リドル公爵のパートナーって、誰なのかな?


「あの……。リドル公爵の普段のパートナーは誰なんですか?」


 リドル公爵はワイングラスを置くと答えた。


「母上だよ。俺は既婚者とケイミル以外の女は嫌いだからね。パートナーは作ってない。普段はパーティーにもあまり参加しない。必要なときは、母上を連れていくよ。母上が無理なときは、遠縁の悪魔の公爵夫人にわざわざ来てもらってる」


「ええ!? そうなんですか!?」


 私が驚くと、モモン夫人とソウ様はため息をついた。


「リドルにはそろそろ結婚して欲しいんだけどね……。孫の顔が見てみたい」

「ええ。素敵な結婚相手がいないかしら」


 リドル公爵は二人の呟きを軽くスルーして、私に微笑んだ。


「ケイミル。健康になったら旅行に行く約束をしてたよね。社交活動が終わったら、四人で旅行に行こう。王城勤務はそれからでいいんじゃないかな?」


「ほんと!? 嬉しい! ありがとうございます!」 

 

 モモン夫人とソウ様もこれには大賛成した。



◇◇◇ 

 部屋に戻ると、モモンは興奮した声で言った。


「あなた! リドルとケイミルはお似合いよ! 私、二人に結婚して欲しいわ!」


「ああ。私も前からそう思ってるよ。ケイミルが嫁入りしてくれたらどんなにいいか。大人っぽくて綺麗なケイミルを見て、リドルも少しはケイミルを意識したんじゃないか?」


 モモンは瞳をきらりと光らせた。

「これは女の勘ですけどね! リドルはケイミルにようやく恋したみたいね! だって、今日のケイミルはとびきり綺麗だったもの!」


「は? リドルが恋? あの女嫌いが?」


 モモンは私の肩をバシッと叩いた。


「もう! 鈍いわね! 毎週文通して可愛がってた娘が大人になったのよ! リドルってば、はっとしてたじゃない!」


「そうなのか……? いや、君が言うならそうなのかもしれない。リドルが恋か。感慨深いね」


「あなた! ケイミルのパートナーになって、花人魚の社交界にケイミルをなじませるのよ! 将来の公爵夫人ですからね! 国際婚だし、花人魚の国を好きになってもらわなきゃ! 私も全力で応援するわよ!」


「ああ。それに、単純にケイミルの人脈作りを手伝いたいな」


「もう! ケイミルはフェアリーの国序列三位の公爵令嬢なのよ! しかも美人でセンスがあるのよ! 王城装飾課で働くなら、季節行事課に並ぶ花形役職よ! 絶対にモテるわ! 他の男に取られないようにしてちょうだい! 変な虫がつかないように、パートナーとして見張ってよね!」


「ああ。中級伯爵以下の男が言い寄ってきたら、追い払ってやろう」


「ちょっと! 公爵家と侯爵家と名門伯爵家の男たちもライバルよ! 警戒してよね! リドルの結婚相手はケイミルしかいないわ」


「分かったよ。ところで、君はあれだけ息子の結婚相手選びに厳しかったのに、ケイミルは激推しじゃないか」


「当たり前でしょ! あの子は娘同然よ! それに、公爵令嬢だわ。序列は我が家とは二つ離れてますけどね。公爵家同士、家柄は文句無しよ。私、侯爵令嬢以下は息子の結婚相手として認めないわよ! 格下だもの!」


「やれやれ。公爵家の数は、各国五家と決まっている。化け猫の国は例外的に二家だけどね。公爵令嬢の数がどれだけ少ないと思ってるんだ? リドルが結婚しない理由は君にもある気がするよ」


「ありません! 侯爵家以下なんて釣り合わないもの。ウララは序列一位よ。国花最高峰の家柄よ! 仮に侯爵令嬢なんかが嫁いできたら、いじめ倒すわ」


「はあ……。もうケイミルしか結婚相手いなくないか? ケイミルなら姑いじめにあわないからね」


「当たり前でしょ!」

 妻はにっこりと笑った。


――やれやれ。女というのは恐ろしい。花人魚の女社会の頂点に君臨していたモモンはもっと恐ろしいな。


 だが、私はにやりと笑った。


 モモンがケイミルのバックについてくれれば、ケイミルの将来は安泰だからだ。


◇◇◇ 

 二月になり、私は王都のホテルへ引っ越した。社交活動をするためだ。


 ソウ様とモモン夫人も、私の社交を手伝うために、王都のウララ邸へ移った。


「いつでもウララ邸へ遊びにいらっしゃい」


 モモン夫人はそう言って、頻繁に私を屋敷に呼んでくれた。ウララ邸とホテルはかなり近いのだ。 


 夕食は、毎日のようにウララ邸で食べていた。食べ終わると、ソウ様かリドル公爵がホテルまで送ってくれた。


 ソウ様はまずは、王都を観光案内してくれた。 


 ずっと室内で暮らしていた私にとって、外は別世界みたいだった。本の中で読み、憧れていた世界が目の前にあった。


 王都観光が終わると、ソウ様は私を様々なパーティーや集まりに連れ出してくれた。そして、花人魚の有力貴族を紹介してくれて、人脈作りを手伝ってくれた。


 前公爵であるソウ様が私を大事にしているので、貴族たちは全員、私に親切にしてくれて積極的に話しかけてきた。


 モモン夫人も私の人脈形成に一役買ってくれた。レディたちの読書の会や演奏会に私を連れていき、紹介してくれたのだ。


 私は室内暮らしをしていたので、読書が大好きだった。さらに、琴の腕は一級。


 私は読書会と演奏会で花形になった。


 モモン夫人の紹介と自分の実力で、私はすぐに花人魚の女社会に溶け込んだ。


 レディたちは、前公爵夫人が私を可愛がっているというだけで、私を大歓迎してくれた。


――私一人なら、ここまで親切にされなかっただろうな。やっぱり、誰と親しくするかは大事なんだわ。私が男爵令嬢で、バックが男爵夫人とかなら、誰も懇切丁寧に接してくれなかっただろうな。


 私はソウ様とモモン夫人に感謝した。そして、序列の素晴らしさを実感した。この頃に、序列意識が強烈に植え付けられた。


 そうやって過ごしている内に、八月になった。

 私たちは予定通り、旅行に行くことになったのだ。

 



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