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貴族社会を奇策で殴る  作者: 水守 鳴
11章 国一番の富豪×宝石料理×公爵家
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ep.47 新たな出会いは女侯爵

◇◇◇ 

「すすきパーティー、楽しかったですわね!」

「ああ。スイーツも美味かったし。シェルバの舞もリトの色炎も最高だったよ」

「嬉しいですわ!」


 私とチェーザマリーは、今日はバー・ゴスメーデで二人でカクテルを飲んでいた。


 開店直後に二人で来たので、客は他に誰もいなかった。


 すすきパーティーからはすでに三日が経っていた。


 私たちがカウンターに座ってお喋りしていたときだ。


――リリリン。

 ベルが鳴り、一人の男性が入店してきた。


 オレンジの髪とピンク色の瞳の美男――シェルバ公爵だった。


「やっほー! マスター! ユリジェンヌ侯爵令嬢! チェーザマリー! こんばんは!」


「いらっしゃいませ」

 マスターが微笑むと、シェルバ公爵は私とチェーザマリーを見て目をきらきらさせた!


「二人とも! すすきパーティー以来じゃん! 俺さ、当日は魔族たちに囲まれてさー! 二人と話したかったのに無理だったよ。近くまで行ったら、二人で仲良さそうにマカロン食べてたし?」


「シェルバ公爵。こんばんは。私もお話ししたかったですわ。それより、舞が素晴らしかったですわ。ねぇ、チェーザマリー?」


「ああ。シェルバは魔界一の舞手だよ」


 シェルバ公爵は嬉しそうに笑った。


「ありがとう。あっ! ユリジェンヌ侯爵令嬢。隣座っていい?」

「もちろんですわ」


 シェルバ公爵は私の左隣に腰掛けると、マスターに声をかけた。

「マスター! トマトジュースちょうだい!」


「かしこまりました」

 マスターは柔らかく笑うと、グラスに氷を入れ始めた。


「ところでさ、ユリジェンヌ侯爵令嬢とチェーザマリーが恋人って、まじ?」


「は?」


 シェルバ公爵に興味津々で聞かれ、私とチェーザマリーの声がぴたりと重なった。


「なんですの? それ? 私とチェーザマリーはそんなんじゃありませんわ」


 シェルバ公爵は驚いた顔をした。

「え? そうなの? 今、社交界でめっちゃ噂になってるよ」


――噂?


 私はチェーザマリーを見上げた。 


 チェーザマリーは余裕のある笑みを浮かべると言った。

「なんとなく予想がつくな」


――予想?


 私はシェルバ公爵を見た。


 シェルバ公爵はうきうきした声で言った。


「二人でチョコレート店と香水店に行って、ディナーして、乗馬もしてランチもしたんだって? それ、デートじゃない? チェーザマリーってば。この店で、最初は首都案内するって言ってたのに。デートに発展したって聞いたよ?」


「え? えー! シェルバ公爵はなんでそんなに詳しく知ってるんですの?」


「だって二人とも。パーティーで魔族たちに色々聞かれて正直に答えたんでしょ? どこに出かけたとか。そりゃ、広がるよ。社交界だもん」


「ええ!? 噂の内容はどんな感じなんですの?」


「ん? チェーザマリーがユリジェンヌ侯爵令嬢に親切に首都を案内した。すぐにデートに発展した。二人はすでに恋人同士。チェーザマリーが宰相復帰前に結婚するのではないかって感じ」


「はあー!?」


 私が大声を上げると、チェーザマリーは可笑しそうに笑った。


「俺たちは友人だよ。噂は否定しといてくれ。社交界は噂話大好きだからな。好きに言わせとけ」


――ええー!?


 私が口をぱくぱくしていると、マスターがシェルバ公爵にトマトジュースの入ったグラスを差し出した。


「お待たせしました」

「マスターありがとう」


 シェルバ公爵がトマトジュースを飲むと、マスターは腰に両手を当てて、鋭い目でチェーザマリーを見た。


「まったく。するなら真剣交際にしてくださいよ」


――マスター! 突っ込むとこ、そこなの!?


「アルフィス。俺たちはショッピングしてご飯を食べただけだ。手も繋いでないんだぞ? 社交界の噂なんていちいち気にしてたら、生活できないよ」


 そう言うと、チェーザマリーは私に笑顔で聞いた。

「どうする? さっき、明日乗馬する約束をしたばかりだが。噂を気にして止めるか?」


「止めませんわ! この前も競争で負けましたからね。私が勝つまでやりますわよ!」


「ハハハッ。ファイターだな。ついでに、またランチに行くか」


「ありがとうございます! 乗馬クラブの近くのカフェ・パラナは本当においしいですわ! 私、パラナの苺ケーキが大好きです!」


「やっぱり、運動の後の甘味は最高だな」


「ええ。チェーザマリーお勧めの飲食店は今のとこ外れなしですわ!」


 私たちが盛り上がってると、シェルバ公爵とマスターがため息をついた。


「一応、俺がチェーザマリーとユリジェンヌ侯爵令嬢は友人って噂を広めてみるけど……。これは誤解されるわ……。ねえ、マスター?」


「はい。しかし、チェーザマリーの案内でユリジェンヌ侯爵令嬢が人間界を謳歌してるのも事実。しばらく様子見ですね」


 シェルバ公爵は天井を仰いだ。

「もー。三曲一緒に踊るなんて言うから誤解されるんだよ? せめて一曲にしとけよ」


 シェルバ公爵が突っ込むと、チェーザマリーの表情ががらりと変わった。

「それには事情があるんだ。アルフィスも協力して欲しい」


 チェーザマリーが真剣な顔つきで言うと、シェルバ公爵とマスターの目つきが急に鋭くなった。

 完全に、有能な権力者の顔つきだ。


「なに? どうしたの?」

「わざわざ三曲踊った理由が? チェーザマリー。詳しく話してください」


◇◇◇ 

「というわけで……。ムーンはリトを囲い込もうとしてるみたいだ。色使いとして利用する気満々だろう。アクアマリン卿には注意だな」


 チェーザマリーがそう言うと、マスターは真剣な表情で言った。


「なるほど。やはり第二王女は野心がありそうですね。ひとまず、彼女がバーに来る日は、来店を避けましょう」


「え? どうやって?」


 私が聞くと、マスターは微笑んだ。


「第二王女と第三王子とエメラルド公爵とディスシーン卿は、必ず予約してから来店します。私が事前に日時を教えるので、予約日の来店はお控えください」


「マスター! ありがとうございます!」


「本来はお客さんのプライベートは教えませんが。ユリジェンヌ侯爵令嬢がドラゴンの泥沼に巻き込まれたら大変ですから」


――マスター! 頼りになるわ!


 シェルバ公爵は、考え込むように顎に手を当てた。

「俺も前から思ってたけど。やっぱり第二王女は野心がありそうだね。皇太子の提案に乗って正解だったわ」


「提案?」


 私が首を傾げると、シェルバ公爵はクスリと笑った。


「うん。すすきパーティーで豊穣の舞をしないかって提案。俺の実績になるし、皇太子と距離縮められるでしょ? 皇太子と仲良くするのは大事だよ。彼は強運とずば抜けた才覚の持ち主だからね」


「確かに……。竜王の太陽と自然の太陽をかけたのは素晴らしかったですわ」


「ああ。誰と仲良くするかは政治メッセージにもなるからね。超、大事だよ」


 シェルバ公爵がそう言ったときだ。


――リリリン。


 扉が開き、紫色の髪と蜂蜜色の瞳を持つ女性が入店した。


「いらっしゃいませ」


 マスターが微笑むと、女性は冷たい微笑を浮かべた。


「マスター。久しぶりね」


――誰だろう?


 私がそう思ったときだ。シェルバ公爵とチェーザマリーが立ち上がって彼女に一礼した。


「ご機嫌よう。クレイ侯爵。今日もお美しいですね」

「こんばんは。お久しぶりですね」


 私も慌てて立ち上がると礼をした。

「はじめまして。リト=ユリジェンヌと申します」


 私が顔を上げると、女性は丁寧に一礼を返してくれた。


――うわあ! なんて綺麗な礼なのかしら。


 その隙のない所作に、私は思わず見惚れた。


 クレイ侯爵は長身ですらりとした美女だった。


 ウェーブがかかった艶のある紫の髪は胸元まで伸びている。尖った爪は銀色だ。それらが、彼女の冷ややかな雰囲気を引き立てているように見えた。


「こんばんは。シェルバ公爵。チェーザマリー公爵。ユリジェンヌ侯爵令嬢。私は侯爵のクレイ=デ=タシュビッツと申します。以後お見知りおきを」


――ええ!? タシュビッツ!?

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