↓ ↑ページトップへ
表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
貴族社会を奇策で殴る  作者: 水守 鳴
1章 じっくり仕込んで、デビュタントでぶっ潰しますわ ※本作は短編集ではありません。第一話から物語が続いていく長編小説ですので、第一話から順番にお楽しみください。
3/133

ep.3 私は史上7人目の色使いだった

◇◇◇

 気付けば、私は十四歳になっていた。デビュタントまではあと六年だ。


 公爵家と侯爵家の化け猫貴族とは、順調に仲を深めていた。特に、公爵夫人は私を可愛がってくれた。


 しかし、私の不安は募るばかりだった。


――ああ! 本当に大丈夫かな? 名門貴族が味方してくれたら表立って嫌なことは言われなくても、陰では色々言われるんじゃないかな? 私だけの強い武器が欲しい! 


 何かが足りない。そんな気がしていた。

 

◇◇◇

 その日、私は大伯父と夕食を共にしていた。


 デザートを味わっているときだった。ふと、燭台のろうそくに目が引き寄せられた。


 オレンジ色の炎は柔らかな光で、盛りつけられたフルーツ皿を照らしている。


 私は、シャンデリアの光より、炎の光が好きだった。そんな私のために、大伯父は屋敷の各所に様々な形の燭台を配置してくれた。


――綺麗な光だな。やっぱり、炎の光って素敵だわ。


 私は炎に見惚れながら、ゼリーをスプーンで一口すくって口に運んだ。


――このゼリーみたいに、虹色の炎があったら、どんなに美しいだろう。


そう思ったときだった。


 風も吹いてないのに、突然、燭台の炎がゆらりと揺らいだ。そして、オレンジ色の炎が突如として虹色に変色したのだ。


 虹色の炎はプリズムのようなきらめきを放っていた。


「ええ!? なんで!」

 私は手にもっていたスプーンを落としてしまった。


 大伯父も同様だった。手に持っていたスプーンを落とすと、虹色の炎を凝視して固まった。


 数秒間の沈黙の後、大伯父は炎から視線を外し、じっと私を見つめた。

「これは、お前がやったのか? リト?」


 私は、こくりと頷いた。すると、大伯父の声が震えた。


「なんてことだ……! これは……色炎の魔法だ! リトにこんな才能があったとは! 史上七人目の色使いの誕生だ!」


「あの……。大伯父様。色炎の魔法と、色使いってなんですか?」


歓喜の笑みを浮かべる大伯父に、私はまったくついていけていなかった。

大伯父はすぐに表情を引き締めた。


「色炎の魔法というのは、炎の色を自由自在に変えられる魔法だ」

「……それは、そんなに凄いんですか?」


「ああ。超上級魔術だ。過去に使えた者は、魔界全体で六人しかいないからな」


「ええ!? 色を変えるだけなのに?」

「この魔法の凄いところは、色が美しく変わるだけじゃない。変色した色ごとに、効果があるんだ。文献によると、虹色の炎を枕元に飾って眠ると、楽しくて幸せな夢を見られるらしい」


「……ということは、この燭台を飾れば、楽しく安眠?」


「そういうことだ。他には、黄金の炎だと疲労回復。紫紺の炎は病などの苦痛の緩和だったか。色使い個人ごとに、何色に変色させられるかは変わってくる」


「では、私の変色は虹色なんですか?」

そう聞くと、大伯父の瞳が輝いた。

「いや。それはまだ分からない」

「どういうことですの?」


「歴代最強の色使いだった魔族は、グリフィンの国のアレン=カイコーだ。彼は四種類の変色が可能だった」


「四種類!?」


「そうだ! アレンの変色は、金、黒、緑、ピンクだ。リトも、何種類か変色できるかもしれない。もちろん、一種類しか変色できないこともあるが」

「ほんとですか?」


――ということは、虹色以外もできるかも!


「色炎は、その珍しい美しさと効能から、権力者たちに重宝されてきた。過去に使えたのは六人だけだ。今すぐ確かめよう!」


◇◇◇

 私と大伯父は、食堂から別室に移り、実験を始めた。


 まずは、大量に蝋燭を用意した。そして、大伯父が蝋燭にマッチで着火する。


 大伯父が用意してくれた色見本を見ながら、私はその炎を変色させようと試みた。


 最初は、虹色になって欲しいと願った。


――虹色になってほしい! あのプリズムみたいな輝きを見たい!


 私が願うと、炎は虹色に変色した。


「やりました! 成功です!」

 私がはしゃぐと、大伯父も嬉しそうに笑った。


 紅、青、橙、――色見本に並ぶ色を、私は片っ端から試していった。


――ピンク色に変色してほしい!

――紫色が見てみたい!


 しかし、色は変わらなかった。落ち込む私を大伯父は優しく励ましてくれた。


「そんなに肩を落とすな。歴代の色使いは、六人中三人は一種類のみ変色が可能だった。アレンは四種類だが、残りの二人は二種類と三種類だ。一色変化させられるだけで凄いよ」


 何度も繰り返し、残る色は黄金色と銀色になった。


――お願い! 黄金色に変わって!


 私が願っても、黄金色には変色しなかった。あとはもう、銀色だけだ。


――どうかお願い! 銀色になって! 


 私は強く願った。

 すると、蝋燭の炎がふわりと揺らいだ。


 私と大伯父は、息を呑んだ。すると、炎が銀色に変色したのだ。銀色の炎は、白い一等星のような輝きを放った。


「やったわ! 最後の最後で、銀色になりました!」


「よく頑張ったな」

 大伯父は、そう言って私の頭を撫でてくれた。


「大伯父様、銀色の炎の効能はなんですか?」


「銀色はリラックス効果だ。長時間見つめると、緊張を緩和したり、安らかな気持ちにしてくれるらしい。何より、その輝きの美しさから、竜王が愛したことで有名だよ」


「へえ! 安眠効果の虹色の炎と、相性が良さそうですわ」

「そうだな」


「ところで、歴代最強のアレンはどんな色使いだったんですか?」

「アレンはな、貧しい生まれだった。だがめげなかった。色使いとして覚醒すると、グリフィンの王城に自分を売り込んだ」


「まあ……。ガッツがありますわ」


「ああ。アレンの色炎はすぐにグリフィンの魔王様に気に入られた。アレンの炎は、王城の晩餐会とパーティーを美しく彩った。特に有名なのは、黄金の炎だ。会場中をゴールドに染め上げた」


「黄金のパーティー会場だなんてわくわくするわ!」

「彼は最終的に、王城パーティーの責任者の地位にまで上り詰めた」


「凄いわ……。ところで、色使いにはどうしたらなれるんでしょう? 私みたいに、ある日突然能力が目覚めるんですか?」


「実はよく分かってないんだ。記録によるとだな。炎を見ているときに、突然能力が開花したらしい。しかも、全員がそのパターンだ。色炎の魔法には謎が多い」


「奇妙な魔法ですわね」


「ああ。一説によると、炎を愛する者が何かを強く願ったときに、色使いとして覚醒するらしい」

 私ははっとした。


――もしかして、虹色に変わってほしいって願ったから覚醒したのかな? ……ううん。あれは何気なく思っただけだった。……まさか、前から思ってた、私だけの武器が欲しいって願いに、炎が応えてくれた? 


 色炎は特別な魔法だ。上手く使えば、混血だと指をさしてくる者たちを圧倒できるかもしれない。


 大伯父も似たようなことを考えたのだろう。急に、顔つきががらりと変わった。有能な侯爵らしい目つきだった。


「リト。私と一緒に、この力をどう使うかじっくり考えないか?」

「ええ。ちょうど私、素晴らしいアイデアを思いつきました。まだこの力は内緒にしてくださいね」


私はにやりと笑った。


――この力を上手く使って、私もアレンのように這い上がってやりますわ。


 心の中で誓ったときだ。ふと疑問が湧き上がってきた。


――この銀色の炎に別の蝋燭の先端をつけたら、着火するよね。そしたら、沢山の銀色の炎がつくれるんじゃないかな? この部屋を、沢山の銀色の炎の蝋燭で照らしてみたいな。


 やってみたくなった私は、手元に置いてあった未使用の蝋燭を、銀色の炎に近づけた。


「あれ?……なんで?」


 蝋燭の先端を銀色の炎の中に入れても、蝋燭に着火されることはなかった。先端は焼けることもなく、綺麗なままだ。


「何やってるんだ? リト?」

大伯父が、少し屈んで私の手元を覗き込んだ。


「別の蝋燭に着火しようと思ったんです。銀色の炎の蝋燭が何本もあったら綺麗でしょう? でも、なぜか着火しないんです……」


「ああ。色炎はな、普通の火炎魔法と違って、直接着火させるのは無理だ」

「ええ? どういうことですの?」


「色炎はな、中に紙を入れようが、木の枝を入れようとなぜか燃えないんだよ」

「ええー!? この炎は温かいのに?」


「ああ。燃えてはいる。この銀色の炎も、蝋燭が溶けたら消える。ただし、着火はできない。色炎を別の物に着火させるには、炎玉が必要だ」


「炎玉って、なんですか?」


「ゴルフボールくらいの大きさの火の玉だ。その中に蝋燭の先端とかを入れれば、初めて着火するよ。炎玉があれば、最大五十本の蝋燭に着火できる」

「不便な面もあるんですね。でも、炎玉って、どうやってつくるんです?」


「私にも分からない。だがな、知り合いに優秀な研究者がいる。専門は炎と光の魔法だ。彼を屋敷に呼ぼう。色々試してみようじゃないか」





評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。