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貴族社会を奇策で殴る  作者: 水守 鳴
5章 悪魔の公爵家の唯一の後継者はバーテンダー
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ep.23 王女と公爵による、王座奪取クーデター

◇◇◇

 悪魔の国では、魔王様の血縁が次期魔王になる。つまり、遠縁でも魔王になれるのだ。


 ただし、王位継承には条件がある。外見が銀髪金眼銅爪であり、古代魔法が使えることだ。この外見でないと、なぜか古代魔法が使えないのだ。


 古代魔法とは、大昔に使われた超強力、凶悪な魔法のことだ。


◇◇◇

 悪魔の王族ヌレンナ王家は多産の家系だ。魔王様が死ぬと銀髪金眼銅爪の子どもたち同士で殺し合いという名の継承バトル勃発する。


 ちなみに、子どもの親である王配と、その実家がその子を後援することは、継承バトルのルールで禁止されていた。


 当時、魔王様は元気でまだまだ健在だと誰もが思っていた。


 魔王様には銀髪金眼銅爪の子どもが五人、そうではない外見の子どもが三人いた。


 銀髪金眼銅爪の子どもの中に、シェヘラザードという名の王女がいた。


 シェヘラザードは美しいが、顔が少女のように童顔で、魔王様と母親に全く似ていなかった。


「銀髪金眼銅爪だが、俺の子じゃない」

魔王様はそう言い、シェヘラザードを冷遇した。 


 だから、誰も思ってなかったのだ。彼女が魔王になるなんて。


 シェヘラザードは、ある日突然、父親である魔王様を殺害した。他の子ども八人も殺害してしまった。彼女はそうして、血塗られた玉座を手に入れたのだ。このときシェヘラザードはわずか二十歳だった。


◇◇◇

「大変です! シェヘラザード王女がクーデターを起こしました! 今、王城の大広間に全ての貴族が招集されました!」

「なんだって!?」


「しかも、ザクロ公爵までクーデターに加わりました。シェヘラザード王女とザクロ公爵は、二人で共謀して、魔王様と魔王様の実子を殺害したのです」


――なんてことだ。魔王様の実子以外で銀髪金眼銅爪はザクロ公爵だけだ。自分も魔王になる資格があるのに、なんでクーデターなんかに協力したんだ! ザクロは魔王になる気がないのか!?


 部下から報告を受け、私は驚愕した。

 私は大広間に駆けつけた。


◇◇◇

 大広間につくと、玉座に続く階に執事長が立っていた。執事長は落ち着き払った声で私に言った。


「全員が集まったら、シェヘラザード王女様とザクロ公爵が参ります。それまでお待ち下さい」


 大広間に、貴族はまだ五十人しか来てなかった。その中の一人、スカーポリー侯爵が青い顔で私に話しかけてきた。

「大変なことになったな。今、貴族たちが急いで駆けつけてきてるらしい」


「本当に……。スカーポリー侯爵はザクロ公爵と同じで魔王様の書記官だろう? 何かご存知か?」

 スカーポリー侯爵は首を振った。

「いや、クーデターは寝耳に水だ」


――この青ざめた顔は、本当に知らなかったようだな……。


 やがて、貴族全員が大広間に揃うと、執事長が声を張り上げた。

「新魔王様と、ザクロ公爵の入場です!」


――まじかよ……。執事長は、シェヘラザード王女を魔王として認めるってことか……。じゃなきゃ新魔王様だなんて言わない……。


 侍従たちが扉を開けると、シェヘラザード王女とザクロ公爵が大広間に踏み入った。


 会場が一気にどよめいた。


――なんて美しいんだ……。


 ザクロ公爵はシェヘラザード王女の手をとり、エスコートしながら入室した。


 銀髪金眼銅爪の二人が並ぶ姿は、この世のものとは思えないほどに異彩を放っていた。特に、シェヘラザード王女の美しさは息を呑むほどだ。


 私はこんなときなのに、見惚れてしまいそうになった。


 シェヘラザード王女とザクロ公爵は、会場のざわめきをものともせず、冷たい微笑を浮かべたまま、玉座に向かった。


 そして、シェヘラザード王女は玉座に優雅に腰掛けた。

 ザクロ公爵は、玉座の右隣に立った。


 シェヘラザード王女は貴族たちを見渡すと、美しくよく通る声で宣言した。

「これより、わらわが魔王だ」


 貴族たちがどよめいた。すると、三人の男が大きな声で口々に言った。

「父親殺しは、ルール違反ではありませんか?」

「ルールには、魔王様を殺してはいけないとは記載がありませんが……。こんなことは前代未聞です!」

「さすがにこれはいけないのではありませんか?」


 シェヘラザードは面白そうに口角を吊り上げた。

「ほう。お前たち三人は、私を新魔王として認めないのだな?」


 三人の男性たちが口を開く前に、シェヘラザードはザクロ公爵に命じた。

「ザクロ。わらわの肖像画を用意しろ」

「かしこまりました」


 ザクロ公爵は頷くと、指を鳴らした。直後、ザクロ公爵の左腕の中に、シェヘラザード王女の肖像画が突如として出現した。


 会場中がざわついた。

「あれは、瞬間物体移動魔法!?」

「古代魔法の中でも超高難易度だ!」

「あんな魔法を使えるのに……。ザクロ公爵はシェヘラザード王女を支持して王位争いをしないのか?」

「ところで、なんで肖像画?」


 会場中がどよめく中、シェヘラザード王女は命じた。


「発言した三人はわらわの前まで来い」


 男性三人は、緊張した面持ちで階を登った。


 男性三人が玉座の前に並ぶと、ザクロ公爵はシェヘラザード王女の足元に肖像画を置いた。


 シェヘラザード王女は冷たく笑うと、三人に命じた。

「この肖像画を踏め」


 男性三人は狼狽えて、一歩下がった。

 すると、シェヘラザード王女が三人に聞いた。


「どうした、なぜ踏めないのだ? お前たちはルール違反だと言って、貴族たちの前で、口で私の面子を潰した。なのに、足では私の顔を踏めないのか? 口と行動が一致していないぞ?」


――なんて女だ……。こんなの踏めるわけない……。だが、踏まなかったらシェヘラザード王女を尊重するようなものだ……。


 三人の男性が黙ると、シェヘラザード王女はさらに聞いた。

「この国の国民は、なぜ今日まで悪魔の国の国民でいられたと思う?」

 男性の一人が答えた。

「それは当然、悪魔だからでしょう」



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