8 故郷へ
リアンを助け出すために突如として現れたブルク、謎に包まれている彼をリアンは信用しきっているがその選択はあっているのな?!
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店前に立派な馬車が止まっている
ブルクは馬車にリアンを乗らせてから、飛ぶように馬に乗る
「行くぞ」
合図と共に馬が颯爽と走り出す
リアンは馬車の窓から遠ざかる広場を見つめた。言いようのない不安が胸を締めつけるが、「これが正解だ」と自分に言い聞かせる
長い道のりを経て、ビースヘブル国境検問所に到着する門番に止められ、ブルクは馬車のスピードを落とした
「身分が分かる物をお願いします」
ブルクは平然を装いながら身分書を提示する
「はい、確認しました。では次は馬車の中見ますね」
門番が馬車の扉を開くと、そこには暗がりの中に積まれた木箱があった
「箱の中身は見てもいいですか?」
「もちろんどうぞ」
門番は木箱を1つずつ開封し始めるが、乾き物と衣服しか入っていなかった
「運び屋ではないのですか?」
「ただの旅好きですよ。ここから長旅になりますからね。食事、それから馬の分も、そして野宿を想定した着替えも用意しました」
「なるほど、見た感じ大丈夫そうですね。それでは長旅頑張って下さい」
難なく検問をやり過ごしたブルクは、少し歩いた先、平原の中で馬車を止めた。
「もう出てもいいぞ、リアン」
そう、検問に差しかかる直前ブルクは事前に言っていたのだ
「検問に差しかかるまでに馬車の中にある隠し扉に入っておいて」
それは身分を示せる物がないリアンをビースヘブルから脱出するための唯一の方法だったのだ
「暗かった?大丈夫?」
「暗くて、狭かった…まるであの時みたいに、連れ去られるんじゃないかって」
「それでも検問を通るまで頑張った。リアン君は成長しているよ
暗いのが嫌なら馬の上に乗ってみようか。おいで」
ブルクはリアンを持ち上げ、馬の背に乗せると、自身もその後ろに跨った
「何をされたとか言う必要は全くない。今までの疲れをここで休めておきなさい」
リアンは小さく頷いた
2、3時間がかかり森に差し掛かった時、ブルクは手綱を引いた
「少し降りて休もう」
森の中、馬車から色々と荷物を取り出す
ひらけた場所で木をくべて、火を起こし、その上に鍋を置く。さまざまな具材を切って放り、ぐつぐつと柔らかくなるまで煮た
「いい頃合いかな」
スプーンで少しすくって味見をすると、ブルクは器にすくい分け、リアンに手渡した
「こうやって鍋を囲んで食べるのはいいだろ」
リアンは鍋の具を皿に取り、勢いよく食べ始めた
久しぶりの熱い物にむせ返してしまう
「急ぎすぎだよリアン、もっとゆっくり食べないと鍋は」
「久しぶりだから感覚が分からなかった…でもおいしい」
「それは良かった。野菜ばかりだけど、味付けがちゃんとしていれば文句なしの一品だからね
ところでリアン君は何歳になったの?」
「15歳かな…?」
「やっぱりか…」
ブルクは何か合点がいったように頷く
「どうしておじさんは僕を助けてくれたんですか…?」
「君の住んでいた村"モリケルト"に私も住んでいたからね。私はビースヘブルの悪行を知っている。君の誘拐情報を聞いてその仕業だろうと思っていたが、やはりそうだったとはな」
「悪行って?僕が誘拐されたのはビースヘブルのせいなの?」
「あぁ、知っているだろ辺境振興策って、あれ以降子供の行方不明事件は増えた。しかもビースヘブル側は短期間で捜索を打ち切る事態だ
子供はやがて、売られるためにとある島に行く」
リアンは確信めいた表情で思い出した
「島…僕が4年間も閉じ込められたあの島…その国のせいなんだ…」
「あぁそうだ。まずあんな場所にビースヘブルが干渉する必要など普通に考えてありえない。だからこそ何か企んでいると考えるのが妥当だ」
「じゃあどうすればいいの…?」
「ビースヘブルの国王"グレイブ"の殺害だ。しかしそれが難しいことは分かっている。だからモリケルトの奪還、まずはそこからだ」
「人を殺すってこと?」
「自由のためには仕方ないことだ」
「…確かに、あの島にいた人達はみんな苦しそうな顔をしてた。何で自分がこんな思いしなきゃいけないのかって、それでも生きるために必死に食らいついてた」
「君みたいな若い子の手を血で染めるわけにはいかない。それでも戦うというのなら……私は手助けしたい」
リアンは鍋の具を飲み込んで言った
「僕みたいな人間が力になれるか分からないけど、みんなを救い出したい」
「君はなんていい子供なんだ…必ずその願い叶えよう!
ほらもっと食べて食べて」
鍋を食べ終えた頃
日が落ちる前には森を抜けようと腰を上げたその時だった。木々に止まっていた鳥が一斉に飛び立つ
急な静けさを怪しむブルク
すぐにリアンの手を掴んで馬の背中に乗せる
「もう追手が来たのかもしれない。逃げるぞ」
方位磁針を傾け、今までの進路から外れた方向へと馬を動かせる
次の瞬間、遠くで地響きのような音が鳴る。7騎の騎馬が密集して走り抜けていく
「あの甲冑はビースヘブルの物だ。やはり追われている」
少し様子を見た後に、進路を
「あの国の馬は馬力が違う。そのまま南方面に向かっていたら鉢合わせていただろう」
「この場合、僕達はどうすればいいの…?」
「連中はこの先のモリケルトに向かっているはずだから、またあの方法で検問を乗り切るがいけそうか?」
「もちろん」
覚悟の決まったリアンの顔を見て、ブルクは馬を走らせた
1時間程度でモリケルトの検問が見えてくる
ブルクはリアンに隠れるように呼びかけると、堂々と門番に近づく
モリケルトの門番が馬車を見かけると、すぐさま声をかけに行く
「検問だ。馬車をこちらに寄せろ」
(リアン、頼んだぞ…)
馬車の少しの違いを見抜き、門番は目を光らす
「身分を示せる物を見せてください」
ブルクは自身の身分書を見せた
「ビースヘブル…出身なんですか?」
「はい、あの広大な土地から抜け出して、ほかの地に足を運んでみたいと思い旅をしています」
「そうですか、じゃあ馬車の検査に入ります」
(さっきから馬車をチラチラと怪しい目で見てくる…確かに改造はしたが変化は微々たる差に過ぎないはず…しかし怪しまれるポイントは何もなかったが…)
すると、奥からどこかで聞いたことのある声がした
「あれ?朝検問であった方ですよね
こっちでやっとくから大丈夫」
朝ビースヘブルで検問を行った門番がそこにいた
今いる門番の代わりにその門番が検問を行う
「旅の休憩ですか?」
「まさにそのとおりです。こんなに見透かされるなんて
ところで、何故あなたがここにいるんですか?」
「それが殺人事件の犯人を追ってまして、城内と城外を探す役に手分けして探しているところなんです」
「どんな経緯か気になりますね…無差別となると心配になりますが」
「詳しくは言えませんが、心配する必要はありませんよ」
「なら良かった…では馬車の確認お願いします」
「朝したのでその必要はありませんよ。それよりも、犯人を見つければ報酬が出るし、そっちを優先したいんでね」
「確かにそうですね。では邪魔にならないように早く行きますね」
「はい、またどこかで」
馬車を走らせながら、ブルクは心の中で吐き捨てた。
(異様に怪しまれたのはそういうわけがあったからか
だがあんた達は何も見透かせていない。私こそがその犯人なのさ)




