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魔法戦記  作者: チョコ


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7/11

7 脱出の兆し

島を出た先にあったのは違法に子供を売る建物

その一瞬は島の4年間を超えるほどの絶望だった

  

「飯だ」


島の時よりも質素な食事に、リアンはただ唖然とした

「おかわりなんて…あるわけないか」


そう言い聞かせながら、魚の切り身と少しのご飯を噛み締め、味の薄いスープを飲んだ

少し経ち、腹の満たされなさでリアンは立ち上がった

 

 

外に出る際は外出許可が必要で、しかも一日一回までと決まっていた

そのルールのもと、リアンは外出許可を得るために扉を開けて連行人に声をかける

「お腹がすいたので、外で何か食べに行ってもいいですか…?」


「いいけどちょっと待っとけ、ちなみに近くの広場の朝市は美味いもんいっぱいあるからオススメだ」


「そ、そうなんですね。ならそこに行こうと思います」


「言った通りにそこに行くんだぞ…変な真似は考えるなよ」

 

「はい…」

少し経ち、許可が出るとリアンは貰った札を握りしめて外に出る



外の空気を感じると、思わず深呼吸をする

少しでもこの空気を味わっていたい、その思いでゆっくりと歩く


すると

「痛い…」

下半身に痛みが走り、その場に座り込む


 (どうしよう…戻りたいな)


ゆっくりと振り返って戻ろうとしたその瞬間、建物の影に左半身だけを出した怪しい男が立っていた



(言った通りに朝市に行くんだぞ…変な真似は考えるなよ)


リアンはその言葉を思い出した

つけられているとすぐに気づき、早歩きで広場に向かっていく


 

 

ビースヘブル第6広場にて朝市が始まる


リアンはとある店の前に立つ

「お肉が食べたい。でも…お金が足りない」

 

うらめしそうに焼けた肉の匂いを嗅いでいると、店主が声を上げた 

「買わないなら他所行ってちょうだい。あんたみたいな小汚い子がいたら客が寄ってこないでしょ。これだからここの広場は…」 


リアンは慌てたようにその店から離れる 

持っているお金で買えるものだけを探しに行った

「なんか…買える物、売ってないかな…?」

 

歩いていると、甘い生地の匂いが鼻に漂ってくる

振り向いて見えた看板、そこには、手持ちの札1枚でお釣りが来る値段が書かれていた


妥協してリアンはその店に決めることにした

「アップルパイ下さい」

 

「浮かない顔だな、朝にアップルパイだけだなんて、腹いっぱいになるかい小僧」 


「ならないけど、これしかお金…貰えなかったから」


「あんたの親は厳しいんだな。でも朝だしな、少なくても耐えられるか」


「くれたのは親じゃないです」 

 

「親じゃない…な、なるほどな……それはすまない。おまけで1個サービスしてやるから、元気…出してくれよ」


「見られてると思うから、それはやめたほうが良いかも」


「そ、そうか…なら少し多めに切ってやるから。食べて」


「ありがとうございます」

サービスされたアップルパイを手に取ると、リアンは笑顔のまま頬張った


店主はその顔を見て少し安心した。だが、少ししたらまたこの子は苦痛を味わうことになる。そう思うと複雑な気持ちで心が押し潰されそうになった


アップルパイを食べ終えた時、店主はふと声をかけた 

「また、来てね」 


深く頷いてリアンはその場から去った

 


そうして、寄り道もせず元の建物に戻る

受付には連行人が待っていた

「問題起こさず帰ってきたか、逃げない選択、いい判断だ」 


「もし逃げようとした場合、僕は一体…」


連行人は持っていた紙切れを見せる

「リスト見てみ、1人だけある日から価格が安くなってるだろ、お前もこうなるところだったんだよ」


「そうなんですね…」


「減るもんじゃないしな…まぁ今日も1人くらい相手するだろう。早く準備しとけ」 


 

安売りされたら何人もの客の相手をしなければならない。それだけは避けなければならない

しかし相手をしなければお金をもらえない。その矛盾の中でリアンは頭を抱える


売れなければ強制的に安売りされるだろう。ならば正規の価格でくる常連をつけた方がいい

それとも金を盗むか



そう長く考えているうちに、受付に新たな客が現れる


「どの子にしますか〜セール新入りなんでもあります」


「ここにいる子は全員女の子なんですかね?」


「基本そうですけど、最近男の子も増えましてね。"リアン"なんて子とか…」


「その子で」


「即決ですね…ありがとうございます。じゃあ呼びかけに行きますので、お待ち下さい」



 タッタッタッ…

「おいリアン、準備しろ」

 

そうして、連行人は顔色を変えて客に向けて言う

「こちらの部屋ですどうぞ」


連行人の呼びかけの後、客が近づいてくる。ゆっくり扉を開けて姿を現す

出てきたのは小綺麗なおじさんだった


お金はたくさん持っていそう。でもバレたら自分はどうなってしまうのか…

覚悟が決まらないままリアンは立ち尽くしていた。それでもそのおじさんは近づいてくる


 

 

すると、おじさんは怖がるリアンを見て言い放つ

「リアンという名前、あれは本当の名前ですか?」


「はい…そうですけど、それがどうしました…?」

  

「良かった…私が怖く見えるかい?」

 

おじさんはそう言うと手を差し伸べた

「私の名前はブルク、リアン君、さぁここを出よう」


(出る…?)

従うべきかリアンには分からなかった。脱出なんてバレたら何をされるか分からないから。そもそも誰かも知らない男

しかし、絶望の中ブルクの姿は輝いて見えた


助かりたい一心でブルクのその手を掴む


「君の覚悟を私は忘れないよ」

手を引っ張ってリアンを扉の前に待たせる


「少し待っててね」

不思議そうに立つリアンを尻目に部屋の扉を開ける

受付に戻って連行人に声をかける

 

「始める前に、お手洗いに行こうと思いまして…場所の案内お願いしてもいいですか?」


「ではついてきて下さい」


「それはありがとうございます」

 

「しかし、身なりの通り紳士ですねあなたは、中には子供にかける客とかいましてね…掃除が面倒くさくて大変なんですよ」


「そうなんですね…でも私は紳士ではないですよ」


「まぁ、こんなところ来るくらいですもんね。着きました。ここがお手洗いですよ」


「いいえ…」

消え入りそうな声で言う。すると


 ガシッ…!!

おじさんはその男の頭を掴んだ。そして便器に腕を伸ばし

 バシャッ!!

その顔を埋めさせる


「あがっ…あがっ…!!」

突然のことに手足をジタバタと動かす


そして、おじさんはその男の後頭部めがけて拳を振り下ろした

 バンッ…!! 


その瞬間、強い打撃により男は気絶する


「早めに済ませましょうか…」

 

  

リアンは息を詰めてただ立っていた

緊張と高揚感で息苦しくなり始める

 

 キィィィ……

扉が開くと出てきたのはブルクだった

「準備は整った。じゃあ行こうか」

 

「でもどうやって脱出するの…?しかもバレたらどうすれば…」


「脱出経路はさっき作った。馬車の手配は出来ている」


「でもやっぱり……」

 

「そんなこと言っても君に自由は一生来ない。さぁ行くぞ!」

 

リアンは頷いてブルクの気持ちに応えた




 

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