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魔法戦記  作者: チョコ


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2/11

2 約束

リアンとリンシルが仲を深め、一緒に遊ぶのは、かけがえのない日だった。新しく友達を作るのがこんなに楽しいだなんて

しかし次の日、リンシルが上級生達に連れられている光景を目撃してしまう



日の届かないような学舎裏

リンシルは、輩に押され柵に身体を打ち付ける

  

「辺境育ちの坊ちゃんが何ガンつけてんだよ」

リンシルを囲う3人の輩。大柄の男1人と、長細い男が2人

 

「そ、そんなこと…してません」


「黙れ、俺はむしゃくしゃしてるんだよ」 


意気揚々に隣の輩が言った

「"グリド"さんは今機嫌が悪いんだよ。ついてないなぁお前」


リーダーと思われる男の名前はグリド

学舎の壁に追い詰められるリンシル、何をされるか分からないこの状況は生きた心地がしな


不気味なグリドの笑い声が響くと、リンシルの顔面に拳が飛んでくる


 バンッ!

 

(なん…で…)

何が起こったのか理解出来ず、その場にうずくまるリンシル

殴られた場所を押さえながら、その目に涙が溢れ出す


すると、そこにリアンが現れる

「俺の友達をいじめようだなんて、ふざけんな!!」

  

「あぁ…?こいつの仲間か?また弱そうな奴が来たよ」

グリドは仲間に目配せをし、嘲る

「いつでも俺はお前を殺せる。なんせ俺はお前らとは"違う"からな」


「俺らと違うからってやることがいじめ?上級生だろうけど、ダサいんだよ」


「その意気だけは受け取ってやる」


リアンは呼吸を整えて拳を強く握る

だが、リンシルを助けたい一心で無謀に飛び出したものの、3人を前に焦りが募る

ふと足元を見ると、そこに木の枝が落ちていた。すぐさま拾い上げ、グリドに向ける



「ぷっ、なんだよあれ」

2人の輩はクスクスとリアンを笑った

怯まずに前に出るグリド


その瞬間、リアンは叫んだ

「リンシル行け!僕のことはいいから」



焦りからかリンシルは過呼吸に襲われる。リアンの声を聞いて無我夢中で走り去っていく



「おい、逃げるな…!」


追いかけようとする輩の肩を、グリドは掴んで止める

「いい、こいつを構ってやろう」


「そうっすね、わざわざ自分から来たわけだし」

 

「まじか(次は俺が標的になった…でもそのおかげでリンシルは逃げられた。だから後は自分も逃げられれば…)」

リアンが後ろを向いた途端


「逃さねぇよ」

グリドはリアンの襟首を強く握る


一瞬で詰められた間合い、リアンはまるで心臓を掴まれたような緊迫感な襲われる


「無駄な正義感で俺らに挑もうとしたのが間違いだったな。あいつを助けるだけ助けて、逃げられ、可哀想な奴だ」


「やめろ…!」 

揺さぶられ、リアンのカバンから教科書がなだれ落ちていく 

それを見た輩2人はその教科書を下劣な笑みを浮かべながら踏みつけ始めた


「俺は…リンシルを助けたことを…後悔はしていないから…」


「これはまだ始まったばっかだ、これからだんだんと後悔していくことになるんだよ」

グリドは拳を握り構えた。そしてリアンに向けて放とうとする

 

その時だった… 

リアンのカバンから落ちる教科書と一緒に転がり落ちるお守りを見て、グリドの拳が止まる

「それは…」

グリドの表情が変わっていき、気がつくとリアンを投げ飛ばしていた


「グリドさん…!どうしました?!」


(今だ…)

お守りと持てるだけの教科書を取ってリアンは反対の方へ走り出した


「おい…!待て!」

輩2人は逃げるリアンを追う

しかし、グリドは不審な目をしながらリアンの姿を目で追うだけだった


「グリドさん、行かないんすか?」


「別にいい、後でやる」





「はあぁ…はあぁ…はあぁ…なんとか逃げ切れた」

「でも…まさかほんとにお守りが助けてくれるなんて…」

リアンは脱いだ靴を靴箱に入れず、カバンに入れる


すると、そこにリンシルが待っていた

「ごめんね…リアン君」


「危ないから待ってる必要なんか無いのに。でもリンシルこそ、こんな酷い跡よく耐えたよ」


「僕、何もしてないのになんでこんな目に遭わなきゃいけないの…」


「頭がおかしいからだよ。人を平気で痛めつけるような奴らだし…でもこれからは仲間みんなで学舎に行こう。そっちの方が安全だろ」


「うん、そうだね」

 

そうして歩きながら教室へ向かった

どこも授業が始まっていて、賑やかでないのが少し変な気持ちになる


「すいません遅れました…!」

2人揃って教室に入った


先生が目を光らせながら言う

「今日から授業開始なんですよ、大人になるという自覚を持ってください」 


「違うんです。上級生のやつがリンシルのことを殴ってたから助けてたんです。ほら、リンシルの顔を見てください」


「上級生……あぁそうですか、それなら仕方ない。歴史の授業だから早く席に座ってください」


「はい……(先生はいっつも助けてくれない、だから信じられないんだよ)」

複雑な表情で席に着く 


 

ビースヘブルの歴史の授業

もやもやした気持ちが頭をよぎり、何一つ授業の内容が入ってこなかった

(どうしよう…次の授業、教科書無いな)

(休み時間、取りに行こうかな…でも、外にまた出くわすかもしれないしな…)


先生の声が遠くで響く。

『ビースヘブルがもたらした影響。特に"辺境振興策による慈善活動"は……』

  

(慈善活動"、あぁこの村のことか。でもそのせいでグリドみたいな金持ち達が住み着き始めたからな…慈善ってなんだろ)

 

リアンはウトウトし始める

授業が終わったタイミングでリアンの目が覚める

「あれ、終わってた……リンシル次の授業…」

 

後ろを振り返ってリンシルと話そうとすると、そこにリンシルはいなかった

「あれ?どこ行ったんだろ」

 

「随分と寝ていましたね、リアン君」

ラミルが近づいてきて言った


「うん、実は今日大変で…」


「それなら知っていますよ。リンシル君はそのせいで早退するらしいですからね」

 

 

教室に戻ってくるリンシル、席に近づくとカバンを取って言った

「リアン君、やっぱり殴られた個所が痛むから早退することにした。今日はありがとね」


「救護室の人はなんかグリドについて言ってた?」


「いや、特に言ってなかった。ちゃんと殴られたって言ったんだけどね」


「許せない…でも明日、絶対みんなで学舎に行こうな。約束だぞ」


「うん!約束だ」

リンシルは痛みの中でも、健気に笑顔を作ってリアン達に手を振った

そして、グリドに気を付けながら学舎を後にした



全ての授業が終わり、リアンは帰りの支度を始めると、そこにジュノがやってくる

「リアン君今日は一緒に公園まで行こ」


「ごめん、今日はあんまり遊ぶ気分じゃなくて」


「あぁ、グリドの件ね…でも遊んで気分変えない?」

 

「とにかく今日は難しいかも、殴られた跡もしっかり残ってたのに先生達は全くそのことについて怒ろうとしなかったのがどうにも許せなくて」


「じゃあ、私は約束しちゃったから途中まで一緒に行こう」


「うん、そうだね。早く支度終わらせるから待ってて」


他の友人たちとも合流し、重い足取りで学舎を出る

やがて、いつもの公園の分岐点に辿り着いた

 

「じゃあね!」

元気に手を振りながら公園へと走っていくジュノを見送り、リアンは1人、反対側の家路へと歩き出す



 

「どうすればあんなこと無くせるんだろう。どうしても自分の力じゃ無理だよな…」

トボトボと歩くリアン


その背後を歩く黒い影、夕日が不気味に照らす


そうして影は背後から飛びかかった

「可哀想な子供よ」


「うぐっ…!」

何者かに口を塞がれるリアン、抵抗しようにも解けないその腕の力強さは明らかに大人の力

(意識…が……)


 

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