第93話
「2011年11月29日
飛鳥と私と真由美。
中学一年のときにできあがった仲良しグループ。
そのまま中学二年、中学三年、そして高校になっても続くと思っていた。だけどその私の幻想は、本当に些細な一つの事件によって簡単に砕け散った。あの日以来、私が何度飛鳥に話しかけようとしても、私の言葉は飛鳥には届かなかった。飛鳥は話しかける私を徹底的に無視した。話しかければ話しかけるほど、私は自分の孤独を強く感じた。しばらくして、私は飛鳥に話しかけることをやめた。飛鳥に話しかけるということにどこかで疲れてしまったのかもしれない。
そして気づけば、教室の中で「友だち」を失ってしまった私は、かつて真由美がいた位置に立っていた。教室の隅に一人座り、楽しそうにおしゃべりをしているクラスのみんなを恨めしい目で見ていた。絶対にああはなりたくはないと恐れていた存在に、いつの間にか私はなっていた。
私は飛鳥と仲直りすることを諦め、クラスの別の子と「友だち」になろうとした。だけど私が話しかけようとしても、彼女たちは私のことを避けているようだった。私が話しかけても、「ごめん、ちょっと行かなきゃ」と私の前から立ち去り、しまいには、私が近づくと彼女たちは黙り込み、無言で私の前から立ち去るようになった。私には、なぜ自分が避けられるのか分からなかった。もしかしたら飛鳥が、「由貴は、人のノートを失くしてもそれを認めず、真由美のせいにしようとしたんだよ」と彼女たちに言いふらしているのかもしれないとも思ったが、さすがにそこまではしないだろうと心のどこかでは信じていた。そこまでの悪は存在しないはず、と信じたかっただけだったのかもしれない。
彼女たちに話しかけることにも疲れた私は、彼女たちに話しかけることもやめてしまった。
気づけば私の周りには、耳が痛くなるほどの静寂と、心が引き裂かれそうになるほどの孤独だけがあった。
授業の合間の休憩時間、教室の中では生徒たちが思い思いにおしゃべりしたり、笑い合ったりしている。だけどその声は、私が座る教室の隅の席には決して届かなかった。教室の中がどんなに騒がしくても、私の周りの一メートル半径の世界は、静寂に包まれていた。その世界では、言葉を発する人は私を含めて一人もいなかった。昼休みの時間、クラスの生徒は一つの机に集まって友だち同士でお弁当を食べたり、お弁当を持たない生徒は友だち同士で連れ立って食堂に向かう。だけど、私はいつも一人、教室の隅で母が作ってくれた弁当を食べていた。私ともう交わることもなくなった私の周りの楽しそうな生徒たちの光景は、世界を対比で表現するかのように私の中の孤独を深く浮き彫りにしていった。
不思議なもので、人間はそのような状態にも慣れていくものらしい。そのような日々が一ヶ月、二ヶ月と続くうちに、私はクラスの中で「友だち」を作ることにも、飛鳥と仲直りすることも考えなくなった。ただ、黙って静寂と孤独の世界を耐え忍ぶことを選ぶようになった。その静寂と孤独が私にとって、そしてこの2年3組にとって当たり前のことになると、その静寂と孤独が苦しくはなくなった。それが自然のものだと私は受け止めるようになり、静寂と孤独の中でただひたすら時間が過ぎていくのを待つようになった。誰も私に関わろうとはしない。そして私も誰にも関わろうとしない。どこかで均衡したその不思議な世界で、私は生きていた。
だけどそれで世界が続いていくわけではなかった。
それは、嵐が来る前の束の間の静けさに過ぎなったのだと、私は思い知らされることになる。」




